- 振替休日と代休は法律的には異なる。
- 割増賃金の計算方法は勤務するのが法定休日の場合と法定外休日の場合で異なる。
- 1週間の労働時間が40時間を超えるときは時間外労働にあたるので要注意。
【Cross Talk】労働者に休日出勤をさせるときに注意すべきポイントとは?
私が経営している会社では、業務の都合上、どうしても従業員に休日出勤をしてもらわなければいけないことがあります。
そのこと自体は就業規則に規定がありますし、入社時にきっちり説明をしているので問題はないと思いますが、他に注意すべき点があるのでしょうか?
労働者を休日に出勤させる場合には、給与の計算において労働基準法で定められた割増賃金の計算方法が問題となることが多いです。
労働基準法に割増賃金の規定があるのは知っていましたが、休日出勤をさせるときにどのような点に注意が必要なのか詳しく教えていただけますでしょうか。
労働者を休日に勤務させて代わりに別の勤務日に休みを取らせる場合、割増賃金をどのように計算するかが問題となります。
割増賃金を正しく計算するためには、振替休日と代休の違いや、労働基準法の法定休日・法定外休日といった概念についてよく理解しておくことが必要です。
「振替休日」と「代休」の違いについて解説
- 振替休日と代休は似ている言葉だが法律的には異なる。
- 振替休日を取らせるにはあらかじめ就業規則に規定しておくか、労働者の個別の同意が必要。
私の会社では、休日に出勤してもらったときには別の勤務日に代わりに休みをとってもらうようにしています。
働いた分の休みを取ってもらっているので問題はないと思っていましたが、どのような点に注意が必要なのですか?
割増賃金の計算方法は振替休日の場合と代休の場合で異なりますが、この2つを正しく区別できていますでしょうか?
振替休日と代休ですか?どちらも同じ意味だと思っていましたが、何がどのように違うのでしょうか?
では、まず振替休日について解説しましょう。
振替休日の概要
振替休日とは、労働予定日の前日までに振替日を指定して休日と労働日を入れ替えることをいいます。例えば、業務上の理由で本来は労働日ではない日曜日に従業員に勤務してもらいたい場合、事前に指示をして日曜日に出勤させる代わりに月曜日に休みを取ってもらうのが振替休日です。
振替休日はあらかじめ所定の休日を勤務日と入れ替えるものですので、出勤した日は「勤務日に出勤した」という扱いになり、休んだ日は「休日に休んだ」という扱いになります。後に詳しく説明するように、この点が賃金の計算においてポイントになります。
振替休日を取らせるには労働者の同意が必要ですので、あらかじめ就業規則に規定しておくか、個別に同意を取らなければいけません。
代休の概要
一方で代休とは、同じく休みをとることなのですが、休日出勤をした後に勤務予定だった日を休日にすることです。
休日出勤を行なった後から、代わりに出勤予定だった日に休みをとりますので、当日は休日出勤として扱うことになります。
振替休日と代休の大きな違い
振替休日は「労働予定日の前日までに」振替日を指定して休日と労働日を入れ替えるというところがポイントで、労働したあとに休む日を指定した場合は振替休日ではなく「代休」となります。
振替休日と代休の大きな違いは、振替休日の場合は「休日労働による割増賃金」が不要だが、代休の場合は必要となりうるという点です。
割増賃金とは、使用者が労働者に時間外労働(残業)・休日労働・深夜労働を行わせた場合に支払わなければならない賃金のことをいいます。
振替休日の場合は労働日と休日がそっくり入れ替わることになりますので、もともと休日だった日は休日ではなく労働日の扱いとなり、割増賃金の支払い義務は原則として発生しません(もっとも、後述するように他の週への振替によりその週の労働時間が40時間を超える場合には割増賃金の対象になります)。
他方、いったん休日労働をしてしまった後に本来出勤日だった日を休みにした場合は休日労働となり、かつ休日労働した日が法定休日である場合には割増賃金の支払い義務が発生します。
つまり割増賃金の支払い義務が生じるかどうかは、①事前に振替休日を設定したか、事後に設定したか、②出勤した日が法定休日か、法定外休日によって決まることになります。
休日出勤をした場合で、かつ法定休日である場合には割増賃金の支払いが必要ですが、振替休日と代休では労働した日を休日出勤として扱うかどうかが異なります。
例えば、土曜日に特別なイベントがあるので、土曜日に出勤をして、月曜日を休みにするとしましょう。
土曜日に出勤をして月曜日に休みをとる振替休日を取得していた場合、土曜日の出勤は休日ではないので割増賃金が発生しません。
一方で土曜日に出勤をして月曜日に代休をとった場合には、土曜日の出勤は休日出勤ということになります。
そのため、この土曜日は法定休日である場合には割増賃金が必要となります。
割増賃金の要否 |
|
振替休日 | 不要 |
代休 | (法定休日である場合)必要
(法定外休日である場合)不要 |
「振替休日」と「代休」の賃金計算方法の違い
- 振替休日のときには割増賃金が発生しない
- 代休のときには割増賃金が発生する可能性がある
- 通常の賃金と割増賃金の差額が発生する点で賃金の計算方法が異なる
振替休日をとったときと代休をとったときで賃金の計算方法にはどのような違いが発生するでしょうか。
割増賃金の計算に差が出てきます。
「振替休日」と「代休」の賃金計算方法
振替休日と代休で賃金の計算にどのような違いが出るか確認しましょう。
振替休日の場合には通常の勤務と同様に計算します。
一方で代休の場合には休日出勤として計算することになりますので、働いた日が法定休日である場合、割増賃金の支払いが必要です。
時給1、500円で8時間で働く場合には、
給与の計算 |
|
振替休日 | 1,500円✕8時間=12,000円 |
代休 | (1,500円✕割増率1.35倍=2,025)✕8時間=16,200円
※法定休日である場合 |
となります。
「振替休日」と「代休」の注意点
- 法定外休日とは労働基準法で定められている法定休日以外の休日をいう。
- 法定外休日に勤務させる場合、割増賃金は原則として不要。
- ただし時間外労働にあたる場合には25%の割増賃金を支払う必要がある。
法定外休日とは、労働基準法で定められている最低限の休日のことをいうのですね。では、法定外休日とは何なのでしょうか。
法定外休日とは、法定休日以外の休日をいいます。現在、多くの企業では週休2日制が採用されていますが、これは労働基準法の基準を上回る休日を与えていることになるのです。
では、法定外休日に労働者を勤務させるときにはどのような点に注意が必要なのですか?
法定外休日とは
「法定外休日」とは法定休日以外に会社が労働者に与える休日のことをいい、「所定休日」とも呼ばれます。
労働基準法では、使用者は原則として労働者を1日に8時間、1週間に40時間以上働かせてはいけないと定められています。労働者が1日8時間働くとすると、5日働いた時点で労働時間は40時間に達することから、使用者は労働者をこれ以上働かせることができません。
労働基準法では、会社は「週に1回」あるいは「4週に4日」の法定休日を与えればいいとされているにもかかわらず、多くの企業では1週間に2日の休日を設定しているのはこのためです。
法定外休日に勤務させた場合の割増賃金の扱いは次のようになります。
事前に休日を設定している場合
事前に休日を設定した場合は振替休日となりますので、出勤する法定外休日は労働日に変更されます。
したがって割増賃金は発生しないのが原則です。ただし、法定休日の場合と同様、振替休日が週をまたいで勤務した週の労働時間が40時間を超える場合には25%以上の割増賃金を支払わなければいけませんので注意が必要です。
事後に休日を設定している場合
事後に休日を設定する場合は代休に当たりますが、法定外休日の場合は法定休日と異なり割増賃金の支払い義務は原則として生じません。ただし、時間外労働の場合は出勤した日の基礎賃金相当額の賃金に加えて25%以上の割増賃金を支払う必要が生じます。
まとめ
振替休日とはあらかじめ所定の休日を他の勤務日と入れ替えることをいい、休日に出勤させる代わりに他の勤務日の勤務を免除する「代休」とは異なります。まずはこの2つを区別できるようにしておく必要があります。そして、賃金の算出方法は勤務する日が法定休日か法定外休日かによって異なります。
これらの区別と給与計算の仕組みをよく理解し、いざというときに慌てないように賃金を正しく計算できるようにしておきましょう。