- 証拠を集めて交渉する
- 労働基準監督署から会社に指導勧告してもらう
- 円滑に交渉を進めるには弁護士に依頼を
【Cross Talk 】残業代を請求したいけど時間も費用も掛かる裁判はしたくない
私の勤めている会社では残業代が支給されません。残業代を請求したいのですが、裁判をすると時間も費用もかかってしまうのではないか不安です。裁判をせずに残業代を請求するにはどうすればいいですか?
裁判をせずに残業代を請求するには、会社と交渉する、内容証明郵便を送付する、労働基準監督署に相談して会社に勧告してもらう、といった方法が考えられます。残業代についての証拠がそろっていれば、裁判をしなくても会社が残業代の支払いに応じる確率が高くなりますよ。
裁判をしなくても請求できるんですね。詳しく教えてください!
残業代を請求したいけど裁判に時間や費用をかけたくないとか、当分今の会社で働き続けるつもりだから会社を訴えるのは気が引けるというような場合、どうすればいいでしょうか?
裁判をしないで残業代を請求する方法や、裁判に持ち込まないポイントを確認しましょう。
会社に残業代の支払いを求める手段
- 自分で交渉するか内容証明郵便を送る
- 自分では難しいなら労働基準監督署に相談することも
会社に残業代を請求する方法にはどんなものがあるのですか?
まず考えられるのが、自分で会社と交渉する、あるいは内容証明郵便を送るという方法です。自分でやっても効果がない場合には、労働基準監督署に指導勧告してもらうことが考えられます。
それでも会社が残業代を支払わないときは、最終手段として裁判所の労働審判や訴訟を利用することになります。
残業代の支払いを求めて交渉をする
残業代を請求する手段のもっとも基本的なものは、残業代の支払いを求めて会社と交渉することです。
交渉がうまくいけば時間と費用をかけずに残業代を支払ってもらえる可能性があります。
内容証明を送付する
残業代を支払わないような会社は早く辞めて転職したいという場合、退職後に内容証明郵便を送付して残業代を請求することも考えられます。
この方法も、郵便料金(枚数や配達証明をつけるかによりますが、おおむね1000~2000円程度)を除いて費用がかからないというメリットがあります。
労働基準監督署への通報で間接的に支払いを促す
残業代を支払わないような会社が、従業員(元従業員)からの請求に誠実に対応するとは限りません。
会社と交渉したり内容証明郵便を送付したりしても、会社がまともにとりあわないこともありえるのです。
そのような場合の対策として、労働基準監督署に相談するという方法が考えられます。
労働基準監督署は、企業が労働基準法などの法令に違反していないか調査をする権限があります。
そして、調査の結果、法令に違反していたり、法令には違反していないが改善の必要があったりする場合には、企業に対し指導や勧告をすることができます。
そこで、労働基準監督署に残業代が支払われていないことを通報し、労働基準監督署の調査や指導勧告を通じて、会社に対し間接的に残業代の支払いを促すことができるのです。
労働基準監督署という公的機関への相談ですから、この方法にも費用がかからないというメリットがあります。
最終手段の労働審判か裁判
労働基準監督署は、法令違反の疑い、つまり残業代の未払いについて、ある程度の証拠がなければ動いてくれません。
また、労働基準監督署が動いてくれたとしても、残業代が支払われるとは限りません。
というのも、労働基準監督署の指導や勧告には、強制力がないからです。
ここでいう強制力がないとは、会社が指導や勧告に従わない場合に、会社の財産を差しおさえるなどして強制的に残業代を支払わせることはできないということです。
ですから、労働基準監督署が動いてくれない場合や、会社が指導や勧告を受けたにもかかわらずそれに従わない場合などは、裁判所の労働審判や訴訟といった手続をとる必要があるのです。
これらの手続には強制力があることがメリットですが、「残業代の支払いを求めて交渉をする」「内容証明を送付する」「労働基準監督署への通報で間接的に支払いを促す」の方法と比べるとどうしても時間も費用もかかってしまいますので、最終手段といえるでしょう。
裁判に持ち込まないポイント
- 残業代を請求する前に証拠を集めておく
- 冷静な話し合いをするには弁護士に依頼を
残業代を請求する方法はわかりました。やはり裁判はしたくないので、なんとか裁判をしないで残業代を請求するにはどうすればいいですか?
残業代に関する証拠が豊富であるほど有利に交渉を進めることができるので、事前に証拠を集めることが重要です。自分で交渉するとどうしても感情的になりやすく、話し合いが進展しないおそれがあるので、弁護士に交渉を依頼することを検討してもいいでしょう。
裁判をするかどうかを判断するコツ
裁判に持ち込まないポイントの前に、裁判をするしかない場合を確認しましょう。
たとえば、会社が残業代の支払いを拒み、絶対に争うという構えを見せている場合、交渉等での解決は期待できないので、裁判をするしかありません。
また、会社が悪質なので付加金を請求したいという場合も、裁判をするしかありません。
付加金とは、裁判所が、労働者の請求により、労働基準法で定められた賃金等(残業代も含まれます)を支払わなかった使用者に対し、その未払い額を上限として追加の支払いを命じることができるというものです。
労働者の請求により裁判所が命じるものですから、裁判をしなければ付加金を得ることはできないのです。
残業代未払いの証拠が豊富にあれば交渉に持ち込みやすい
裁判をするしかない場合を除き、裁判に持ち込まないようにするには、残業代の未払いに関する証拠を十分に集めておくことが重要です。
残業代未払いの証拠が豊富にある場合、会社は残業代の支払いを拒んだとしても、裁判に持ち込まれて敗訴する確率が高いということになります。また、裁判で会社が悪質と判断された場合、付加金を命じられるおそれもあります。そうなると、会社にとっても、裁判に持ち込ませず、残業代の支払いに応じた方が合理的ということになります。
そのため、残業代未払いの証拠が豊富であればあるほど、交渉に持ち込みやすいということになるのです。
残業代未払いの証拠は、大きく分けて時間単価を計算するための証拠(労働契約書、就業規則など)と、実労働時間を特定するための証拠(タイムカード、労働時間管理ソフト、入退館記録など)があります。
退職後は入手が難しくなるものもありますから、事前に証拠を確保しておくようにしましょう。
感情的にならないためにも弁護士をつかう
証拠を集めて交渉するとしても、当事者同士で交渉するとどうしても感情的になりがちです。
感情的になってしまうと、合理的な判断ができなくなり、本来は交渉で解決できる事案でも、交渉が進展しなくなることが往々にしてあります。
そのような事態を避けるには、交渉の専門家である弁護士に依頼し、冷静に交渉を進めてもらうのが得策です。
弁護士費用はかかってしまいますが、自分で交渉したが感情的になってしまって交渉が決裂し、裁判をするしかなくなってから弁護士に依頼をする方が、弁護士費用は高くなってしまいます。
早めに弁護士にご相談や依頼をし、交渉で解決する方が結果的に費用を安く抑えられる可能性があるということをご理解ください。
まとめ
裁判をせずに残業代を請求する方法について解説しました。
残業代の未払いに関する確かな証拠があれば、交渉などで裁判をせずに解決できる確率が上がります。
まずは労働問題に詳しい弁護士にご相談し、どのような証拠が必要か、その証拠を入手するにはどうすればいいかについて、助言をうけることをおすすめいたします。