- 残業代請求の訴訟で解決するメリット
- 残業代請求の訴訟をする前の準備
- 残業代請求の訴訟の進め方
【Cross Talk】残業代請求の裁判について知りたい
私は長年今の会社に勤務してきましたが、残業代の支払がなされていません。やはり働いた分のお金は支払ってもらいたいので裁判をしようと思うのですが、訴訟のことについて教えてもらえますか?
裁判もそうですが、裁判前にどのように動くかも重要になります。基本的な知識もおさらいしましょう。
残業代の支払いがない場合の解決方法として訴訟(裁判)があります。
訴訟をする場合、訴訟を有利に進めるためには、個々の訴訟の手続を詳しく知ることよりも、全体の流れをしっかり知っておく必要があります。特に残業代請求においては事前の準備の進め方によって結果が大きく変わる場合があります。このページでは残業代請求を訴訟で解決する場合の基礎知識について確認しましょう。
未払い残業代について裁判をするメリット
- 裁判で未払いの残業代を回収するメリット
そもそも未払い残業代を訴訟で解決するメリットを教えてもらえますか?
裁判所が残業代の存在・金額を法律に従ってきちんと判断してくれることです。また、法律上認められる残業代を満額回収できる可能性があります。
まず、未払い残業代を解決する手段として訴訟を利用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
裁判所が法律に従った解決をしてくれる
まず、交渉で解決をする・労働審判で解決をするような場合には、法律上どの程度の残業代が発生しているかを参考にはしますが、基本的には残業代がいくらになるかは当事者間の話し合いで決定することになります。
そのため、当事者が納得せず合意を拒むような場合には、問題は解決しません。
しかし、裁判では、当事者間の主張が平行線であったとしても、裁判所がどちらの言い分が正しいかを判決という形で示してくれ、未払い残業代の存在・金額を確定してくれます。これにより、当事者間の争いが解決するというメリットがあります。
遅延損害金や付加金を付けることも可能
遅延損害金とは金銭債権の請求の本来の支払い日に支払いができなかった場合にペナルティとして本来の債務の支払いに併せて支払うお金のことをいいます。
任意の交渉では遅延損害金については支払いを免除してください、というような交渉をされることが多いのですが、訴訟で勝訴した場合には、遅延損害金の支払いも命じてもらえます。
付加金とは、労働基準法第114条に規定されているもので、特定の金銭の支払をしていない場合に、最大で本来支払うべき金額と同一の額を支払わせるものです。
つまり、付加金の支払いを命じる判決がある場合には、最大で、相手が支払わなければならないとされた未払い残業代の倍の額の支払いを命じられることになりますが、付加金をつけるためには裁判所の命令が必要になり、この支払を強制できるのは訴訟をした場合のみです。
支払わない場合には強制執行が可能
会社が任意の交渉や労働審判での合意を拒絶した場合には支払いを受けることはできません。しかし、訴訟を起こして残業代を支払うことを命じる判決があっても会社が支払いに応じない場合には、会社の財産に対する強制執行をすることができます。
会社財産を差し押さえ、お金に換えて、そのお金の配当を受けることができるので、会社が支払いを拒み続けても支払いを強制できることになります。
未払い残業代について裁判前にすること
- 未払い残業代がある場合に裁判前にしておくべきこと
では早速未払い残業代についての裁判手続について教えてもらえますか?
その前に裁判の準備などについて確認しておきましょう。
残業代の裁判をする前に確認しておくべき事とはどのような事なのでしょうか。
未払い残業代についての証拠を集める
残業代請求の訴訟をする際には、残業時間がどれだけあったかを主張し、それを裏付ける証拠を提出することになります。もしこの証拠がなければ、主張した事実が実際に存在したと認定してもらうことができず、その結果、残業をしていなかった・未払いの残業代はないという認定がされ、訴訟をしても敗訴という結果になります。
ですので、訴訟の前に証拠をきちんと集める必要があります。
未払い残業代を請求する旨の内容証明郵便を送る
残業代は給与債権ですので2年で消滅時効にかかります(労働基準法第115条)。もし残業代の未払いが2年以上にわたっている場合には、時間がたてば経つほど時効にかかる部分が出てきます。
この場合、時効は配達証明付き内容証明郵便を送付することで中断をすることができます。
未払い残業代について弁護士に依頼する
この後訴訟をする場合でも、有利に進めるためには、法律・訴訟に関する知識が不可欠です。そのため、弁護士に依頼をすることも視野に入れましょう。
訴訟において失敗してから弁護士を利用すればいい、と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、すでにした裁判上の行為によって不利になっているものを後から覆すことができない場合もあります。弁護士に依頼するのは訴訟前にしましょう。
未払い残業代について会社と交渉する
突然訴訟を起こす事は禁じられているものではありませんが、相手としても気分の良いものではありません。
会社がどのような反論をするのかを確認する、会社の出方を伺うという意味でも一度は会社と交渉をすることも検討しましょう。会社がしてきた反論に対して何ら準備ができず、残業代が減額される又は敗訴するということを防ぐことができます。
未払い残業代について労働審判をするかの検討をする
交渉と併せて労働審判の利用によって解決を目指すことも検討しましょう。
未払い残業代についての裁判の進め方
- 訴訟の手続き進行の基礎的な事項
では早速未払い残業代についての裁判手続について教えてもらえますか?
その前に裁判の準備などについて確認しておきましょう。
訴訟の基本的な流れを知っておきましょう。
少額訴訟の場合
残業代が60万円未満の場合には少額訴訟の利用を検討しましょう。
少額訴訟とは、60万円までの金銭債権の請求について利用できる手続で、1回の期日で判決を出してもらえるという特徴があります。訴えを提起するためには訴状を作成し、証拠を添付し、印紙・郵券を揃えて提出することが必要です。
訴状に関しては裁判所のホームページからダウンロードをすることができます。この時に一緒に裁判の期日についての調整をすることがあります。
訴え提起が受理されると被告である会社に訴状が送達されます。この時に調整した期日に呼び出しを行いますが、被告側の都合が悪ければ再度調整することがあります。期日が決まれば期日までに被告は答弁書・証拠資料を提出します。
原告の側にも足りないものがあれば裁判所から連絡がきますので、随時提出を行います。期日では、書面で述べた主張について確認をした上で証拠を調べます。
主張・証拠については相手の意見を聞くなどしながら吟味をすることになります。期日の最後に判決が出て控訴されなければ終わりです。
通常訴訟の場合
通常訴訟においても第一回期日までは手続は変わりません。
通常、訴訟は数回にわたって行われるため、手続の終わりに次回期日(約1ヶ月後)を決定します。また判決に至るまでに当事者での和解を促すための期日が開催されます。
期日が複数回開かれ、主張・証拠が出尽くし、裁判所の審理が十分になれば審理が終了し、判決の言い渡し期日が設定されます。設定された期日に判決が言い渡されてその裁判所での審理が終わります。当然控訴・上告をすれば、上級審での審理が始まることになります。
まとめ
このページでは、未払いの残業代請求をするために訴訟を行うことについてお伝えしました。訴訟の手続としては、訴状・証拠を揃えて提出して、期日において主張するという流れを知っていただいた上で、特に証拠集めなどの事前準備が重要であることを確認しましょう。
不明点については弁護士に依頼するのが確実であるといえますので、まずは相談から初めてみましょう。