- 試用期間は本採用するかどうかを検討するための期間
- 労働時間には変わりないので残業代支給の対象になる
- 「みなし残業だから残業代は出ない」という主張できない
【Cross Talk】試用期間に残業代請求できる!?
私はある会社で先々月から勤務していて、働き初めてからわかったのですが、タイムカードを切ってから仕事のため残っている人がたくさんいて、私もまだ試用期間中ですが「入って間もない人のために特別にやる」という名目で座学が終電まであってサービス残業になってしまっています。試用期間には残業は出ないものでしょうか。
試用期間であっても残業代を請求することは問題ありません。
残業代請求は法律上,時間外労働に対して支払われる給与となっています。
本採用までの仮の採用である試用期間においては残業代の支給はない固定残業代(みなし残業)のみ支給するといった措置をとる会社もあるのですが、試用期間とはいえ労務の提供であることには変わりなく、残業が発生したならばきちんと残業代の支払いをする必要があります。
会社からは試用期間である・固定残業代(みなし残業)を支払っている・教えているだけだ・といった反論の可能性がありますので対応も知っておきましょう。
試用期間ってそもそもなに?
- 試用期間とは労働者を本採用するために試験的に雇用する期間
- 試用期間も雇用契約であるが解雇予告の制度や最低賃金などに変更がある
そもそも試用期間には雇用契約は結んでいるのですか?
はい、試用期間についても雇用契約が結ばれています。試用期間の基礎について知りましょう。
そもそも試用期間とはどのようなものなのでしょうか。
試用期間とは?
試用期間について明確に規定しているものはありませんが、雇用契約にあたって本採用をするため試験的に雇用契約を結ぶ期間であるとされています。
雇用契約は契約の中でも単に物を売り買いする一度きりの関係ではなく、雇用期間が続いている間は労務を提供し、これに対して会社は給料を支払い続けることになります。
法律上,解雇は厳格に制限されていますので、従業員の適正を判断するための期間が必要であるということになります。
その期間がこの試用期間で、試用期間終了後に本採用をするか、もし適正がないのであれば本採用をしないということになります。
一般的には3ヶ月~6ヶ月程度で終了することになりますが、長くても1年程度とされています。
試用期間と本採用の違いは?
ではその試用期間と本採用の間では何が違うのでしょうか。
いくつか違いがあるのですが、一つは試用期間開始から14日以内の解雇の場合には、労働基準法第20条に規定されている解雇予告の規定は適用されません(労働基準法第21条本文)。
試用期間開始から14日を超える場合には通常の解雇と同様に解雇予告が必要になります(労働基準法第21条ただし書)。
また、都道府県労働局長の許可を得た場合には、最低賃金を下回ることも可能となっています(最低賃金法7条)。
このような違いはありますが、雇用契約であることは変わりませんので労働基準法をはじめとした労働法規に関する規定の適用はありますし、社会保険・労働保険の加入なども行われます。
試用期間の延長ってできるの?
すこし本題から外れますが、試用期間は延長ができるのでしょうか。
たとえば、試用期間を3ヶ月で設定していたものの、当初想定していたスキルに到達できなかったような場合もあるでしょう。
このような場合に、会社としてももう少し適正を見極めたいという場合もあるでしょうし、働く側もどうしてもここで頑張りたいという場合もあります、
そのため、全く認めないというのも合理的ではないことから、一定の事情によって認めても良いといえます。
そして、
・試用期間の延長に合理的な理由がある
・試用期間を延長することがあることが就業規則に記載されている
などといった事情があれば、試用期間も延長できるとされています。
通常の研修期間において技能を習得することができなかったような場合には、試用期間を延長されるようなこともあると考えておきましょう。
試用期間中に残業ってできるの?残業したら残業代請求できるの?
- 試用期間中にも残業はある
- 残業をしたら残業代をもらえるのは試用期間であっても変わらない
試用期間というものの概要はわかりましたが、とはいえ仕事を覚えている最中なのに残業を命じることはできるのでしょうか?できるとしても残業代の支払いまでしてもらえるのですか?
残業を命じることは問題ないですし、残業をした場合には残業代の支払いをしてもらうことが可能です。
それでは、試用期間中の残業について検討しましょう。
試用期間中も残業を命じることはできる
まず、試用期間中であっても残業を命じること自体は出来ます。
試用期間であっても残業をさせる必要性がある場合,法律に従っているのであれば可能です。
36協定を締結している会社では、法律の規定する時間の残業・早出などの時間外労働を指示することができます。
試用期間中の残業には残業代を支払う必要があり例外はない
そして、残業を行った場合にはこれに対する給与を支払わらなければなりません。
残業代について試用期間であることを理由に不支給とする規定は存在しません。
したがって,試用期間であったとしても、残業させたからには必ず残業代の支払いをしなければなりません。
試用期間中にみなし残業(固定残業制)だから残業代は出ないといわれたら?
- みなし残業だからといって時間外労働分を支払わなくて良いというわけではない
- このような主張をする会社を相手にする際には弁護士に相談した方が良い
実は前に退職した人が辞める際に残業代を払って欲しいと会社に伝えたそうなのですが、会社からはみなし残業にしてあるので残業代は支給済みとして支払ってもらえなかったそうなのですが…。
みなし残業制度をとっていても、実際の労働時間がみなし残業時間を超える場合には、その超える部分の残業代請求をすることができます。
試用期間の残業代請求について「みなし残業」として残業代は支払い済みであるとして、残業代請求に応じない会社があります。
みなし残業(固定残業制)とは、基本給とは別に残業代をまとめて支払っておくものであり、残業時間の計算が面倒である会社にとっては、残業代の支給を一律にでき、残業時間の計算を省略できるといったメリットがあり、労働者側もみなし残業の範囲を超えない労働しかしていないような場合には多く残業代を受け取ることができるというメリットがあります。
そのため多くの企業で採用されています。
例えば「月20時間の残業を含む」という場合には、8時間しか残業をしていなければ残りの12時間分は残業をしていなくても残業代をもらうことができます。
しかし、このような形態だからといって70時間残業をした人に対して50時間分の残業代の支払いをしなくて良いとするものではありません。
みなし残業で支給される時間分以上の残業をして,超過部分の残業代が支払われていない場合には、残業代を請求することができます。
みなし残業だからといって残業代の支給に応じない会社の場合には、超過分の残業代の交渉をすると証拠を隠す・計算をごまかすなどの対応をしてくる可能性があります。
そのため、弁護士に相談をしながら残業代請求を進めていくのが妥当といえます。
まとめ
このページでは試用期間における残業代請求についてお伝えしてきました。
多くの会社で利用される試用期間ですが、雇用契約として残業代の支払いは通常通り行わなければなりません。
残業代の支払いをしてもらうためには弁護士に相談するのが良いでしょう。