「早出出勤をした場合に残業代をもらえるか」について、弁護士が解説いたします。
ざっくりポイント
  • 早出出勤も残業代の対象になる
  • 早出出勤で残業代を得るには要件を満たす必要がある
  • 残業代を請求するには、会社の指示や労働時間についての証拠が重要

目次

【Cross Talk 】早出出勤でも残業代をもらえるの?

職場が忙しくて早出出勤をすることが多いのですが、早出出勤でも残業代をもらえるのでしょうか?

早出出勤によって法定労働時間を超える労働をした場合は、残業代の対象になります。ただし、会社の指示に基づいて残業をしたなど、所定の要件を満たす必要があります。

早出出勤も残業代の対象になる場合があるんですね。残業代を請求する際のポイントがあれば、それも教えてください!

「早出出勤が残業代の対象になるのか」や、残業代を請求する場合のポイントを解説。

始業時刻よりも早く出勤して働くことを早出出勤といいますが、早出出勤でも残業代を請求できる場合があります。

ただし、早出出勤で残業代を請求するには、会社の指示に基づいて早出出勤をしたなどの、所定の要件を満たさなければなりません。

そこで今回は、早出出勤の残業代について解説いたします。

早出出勤でも残業代はもらえるのか

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 早出出勤も残業代の対象になる
  • 早出出勤で残業代を得るには要件を満たす必要がある

早出出勤でも残業代をもらえるのでしょうか?

早出出勤によって法定外時間外労働をした場合は、残業代を請求することができます。ただし、残業代を請求するには会社の指示があったなどの要件を満たすことが必要です。

残業とは

いわゆる残業とは時間外労働のことですが、時間外労働には、法定内時間外労働と法定外時間外労働があります。

法定内時間外労働

法定内時間外労働(法定内残業)とは、所定労働時間を超えるものの、労働基準法が定める法定労働時間を超えない範囲での残業のことです。

所定労働時間とは、会社などの使用者が就業規則などで定める労働時間のことです。

例えば、会社が就業規則で午前9時から午後5時まで(1時間の休憩を挟む)を労働時間と定めている場合、所定労働時間は1日7時間です。

上記の所定労働時間において、1時間の休憩を挟んで午前9時から午後6時まで合計8時間働いた場合は、所定労働時間を超える1時間が、法定内時間外労働に該当します。

法定外時間外労働

法定外時間外労働(法定外残業)とは、法定労働時間を超える残業のことです。

法定労働時間とは、労働基準法が定める労働時間のルールであり、1日8時間かつ1週40時間となっている為、1日8時間かつ1週40時間を超える労働をした場合は、法定外時間外労働に該当します。

例えば、1時間の休憩を挟んで午前9時から午後10時まで合計12時間働いた場合は、法定労働時間である1日8時間を超える4時間が、法定外時間外労働にあたります。

また、上記の労働時間で1週間のうち5日間働いた場合、1週60時間労働したことになるので、法定労働時間である1週40時間を超える20時間については、法定労働時間に該当します。

早出出勤でも残業をすれば残業代請求ができる

早出出勤とは一般に、所定の始業時間よりも前に出勤して労働することです。

例えば、始業時刻が午前9時で終業時刻が午後6時(休憩1時間を含む)の会社において、午前7時に出勤し午後6時まで働いた場合は、2時間分が早出出勤にあたります。

終業時刻を超えて労働をすることを一般に残業といいますが、早出出勤であっても、要件を満たす場合は残業に該当するので、残業代を請求することができます。

注意点として、早出出勤によって残業代が発生するのは、あくまで定時の勤務時間を超えて労働した場合です。

例えば、始業時刻よりも2時間早く出勤したとしても、終業時刻の2時間前に退社したのであれば、通常の勤務時間の範囲で労働しただけなので、残業には該当しません。

早出出勤で残業代請求をするための要件

早出出勤をした場合に残業代を請求するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

雇用契約であること

早出出勤によって残業代を請求するには、原則として雇用契約であることが必要です。

残業代を請求する根拠となる法律として労働契約法がありますが、労働契約法が適用されるには、同法における「労働者」に該当しなければなりません。

同法の労働者に該当するには、原則として雇用契約によって雇用されている必要があります。

請負契約や業務委託契約によって働いている場合は、原則として同法の労働者には該当しません。

請負や業務委託の場合は、一般に使用者の指揮監督下にないことや、報酬が仕事の完成に基づくもので労働の対価ではないことなどから、労働者に該当しないのが一般的だからです。

雇用契約でない場合は、いわゆる偽装請負のように実質的に労働者に該当すると見なされるような例外的な場合を除いて、原則として残業代は請求できません。

会社からの指示があることなどが必要

早出出勤で残業代を請求するには、早出出勤について会社からの指示や業務上必要であったことが必要です。

会社の指示に基づいて労働している場合は、会社の指揮命令下にあるといえるので、一般に労働時間に該当します。

しかし、会社の指示等がなく単に自発的に出勤している場合は、指揮命令下にあるとはいえないので、一般に労働時間に該当しません。

たとえば、通勤時の混雑を回避するために、労働者が会社の指示なしで自発的に1時間早く出勤しているような場合は、労働時間には該当しないのです。

早出出勤をした場合の割増率

早出出勤が残業に該当する場合、賃金の割増率(いわゆる残業代)は、通常の残業の場合と同様です。

たとえば、法定労働時間を超える労働をした場合の割増率が25%の場合は、早出出勤の割増率も原則として25%です。

なお、賃金の割増が発生するのは、早出出勤によって法定労働時間を超えて労働した場合です。

早出出勤をしたとしても、法定労働時間を超えない場合には、原則として割増されない通常の賃金のみが支払われます。

たとえば、所定労働時間が7時間の会社において、早出出勤として1時間早く働いたとしましょう。

合計の労働時間は8時間であり、法定労働時間である8時間を超えていないので、賃金の割増の対象にはなりません。

早出出勤で残業代請求をする場合のポイント

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代を請求するには、会社の指示や労働時間についての証拠が重要
  • 残業代を請求する方法として、会社に直接請求する方法や、裁判所の手続きを利用する方法がある

早出出勤で残業代を請求する場合のポイントを教えてください。

早出出勤で残業代を請求するには、会社の指示があったことや、労働時間を証明するための証拠をそろえることが重要です。

明示ないし黙字の指示を推認させる証拠を集める

早出出勤で残業代を請求するには、会社による明示ないし黙字の指示があったことを推認させる証拠が重要です。

早出出勤が残業に該当するには、会社による指示に基づく必要があるからです。

会社の指示を推認させる一般的な証拠としては、早出出勤を指示するメールや、早出出勤について記載された業務日報などがあります。

労働時間に関する証拠を集める

早出出勤の残業代を請求するには、労働時間に関する証拠を集めることが重要です。

残業代を請求するには、法定労働時間を超える労働をしたことを証明する必要があるからです。

労働時間に関する一般的な証拠としては、以下のものがあります。

・雇用契約書
・就業規則
・タイムカード
・出勤簿
・業務日誌
・給与明細

証拠によって何時間働いたかを証明できれば、会社に残業代を請求する根拠になります。

残業代請求をする方法

早出出勤の残業代を請求する主な方法は、裁判外で会社に直接請求する方法と、裁判所の手続きによって請求する方法があります。

会社による指示や労働時間を証明する証拠をそろえたら、早出出勤の残業代を会社に直接請求しましょう。

会社が請求に応じて残業代を支払えば、残業代を請求するために裁判所の手続きなどを利用する必要がなくなるため、手間や費用を省くことにつながります。

会社が請求に応じない場合は、労働審判や労働訴訟など裁判所の手続きの利用を検討しましょう。

会社に直接請求する場合でも、労働問題に詳しい弁護士に相談して交渉を依頼すれば、残業代のスムーズな回収が期待できます。

裁判所の手続きを利用する場合は、法的な主張や適切な証拠収集などが重要となるので、弁護士に相談する必要性はより高くなります。

まとめ

早出出勤によって法定労働時間を超える労働をした場合は、いわゆる残業代として割増賃金の対象になります。
早出出勤で残業代を請求するには、会社の指示に基づいて労働したなどの、所定の要件を満たさなければなりません。
会社に残業代を請求するには、会社に直接請求する方法や、労働審判などの裁判所の手続きを利用する方法があります。
会社が残業代の支払いに応じない場合や、労働審判や訴訟などで請求する場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。