教員がどの程度残業をしているか、残業代を請求できるかなどを解説いたします
ざっくりポイント
  • 教員は仕事量の多さや部活動の指導などで、残業時間が多くなりがち
  • 公立の教員は調整制度が法定されているので、残業代を請求できない
  • 私立の教員は残業代を請求できるが、適正に支払われているかは別問題

目次

【Cross Talk 】教員の残業は多い? 残業代は請求できる?

学校の教員として働いているのですが、仕事が忙しくて残業しなければなりません。教員は残業が当たり前と言われたりもしますが、働いた分の残業代はきちんと請求できるのでしょうか?

教員は仕事量が多いことに加えて、部活動の指導もあるので残業時間は多くなりがちです。残業代を請求できるかは、勤務先が公立か私立かによって異なります。

教員は残業が多くなりがちなんですね。残業代を請求できるかについて、詳しく教えてください!

教員の平均的な残業時間や、残業代を請求できるかを解説

教員は学級の運営や部活動など、こなさなければならない業務の量が多くなりがちです。
教員は残業するのは当たり前だと言われるかもしれませんが、残業代がきちんと支払われているかは誰もが関心のあるところでしょう。
そこで今回は、教員がどれくらい残業をするのか、残業時間の目安や、残業代を請求できるかについて解説いたします。

教員の残業時間はどのくらいか?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 教員の平日の残業時間は、1日あたり平均2時間45分
  • 学校別にみると中学校の残業時間が特に多い(1日あたり平均3.55時間)

学校の教員は、生徒の面倒を見たり部活で指導をしたりなど、忙しいイメージがあります。実際にどのくらい残業しているのでしょうか?

統計に基づく目安ですが、教員の残業時間は1日あたりで平均2時間45分程度です。学校別で見ると、中学校の残業が特に多い傾向があります。

教員の勤務時間とは?

公立学校の教員の場合、勤務時間は一般に週38時間45分と規定されています。

週38時間45分とは、国家公務員の勤務時間として規定されているルールです。
公立学校の教員は、多くの場合は地方公務員です。
地方公務員の勤務時間を定める各都道府県の条例などは、一般に国家公務員の勤務時間と同様のルールを規定しているために、同じ週38時間45分が適用されるのです。

平日勤務は一般に月曜日から金曜日までの計5日です。週38時間45分の勤務時間を5で割ると、教員は1日あたり7時間45分の勤務時間が原則ということになります。

次に、教員が実際にどの程度の時間勤務しているかを見てみましょう。
学校で働く教員の平均勤務時間は、1週間あたり52時間30分です(日本労働組合総連合会「教員の勤務時間に関するアンケート」)

週38時間45分を超過した分を残業時間とすると、教員の1週間あたりの残業時間は13時間45分です。次に、13時間45分を平日の日数5で割ると、平日1日あたりの残業時間は2時間45分となります。

次に、教員は部活などで土日にも勤務する場合があるので、土日にどの程度勤務しているかを見てみましょう。

教員の土日の勤務時間の平均は、以下の通りです。

勤務場所 土日の合計勤務時間
学校内 3.2時間
学校外(自宅を除く) 0.9時間
自宅 1.7時間

勤務場所としては学校がもっとも多く、平均で週に3時間以上、土日にも学校で勤務していることになります。

小学校教員の残業時間

小学校の教員の平均的な勤務状況は、以下の通りです。

校種 小学校
出勤時刻 8時15分
退勤時刻 16時45分
勤務時間 1日あたり7.75時間(7時間45分)
学校にいる時間 1日あたり10.52時間(週52.5時間)
残業時間(学校にいる時間−勤務時間) 1日あたり2.77時間
睡眠時間 5時間57分

中学校教員の残業時間

中学校の教員の平均的な勤務状況は、以下の通りです。

校種 学校
出勤時刻 8時15分
退勤時刻 16時45分
勤務時間 1日あたり7.75時間(7時間45分)
学校にいる時間 1日あたり11.3時間(週56.5時間)
残業時間(学校にいる時間−勤務時間) 1日あたり3.55時間
睡眠時間 5時間58分

高校教員の残業時間

高校(高等学校)の教員の平均的な勤務状況は、以下の通りです。

校種 学校
出勤時刻 8時15分
退勤時刻 16時45分
勤務時間 1日あたり7.75時間(7時間45分)
学校にいる時間 1日あたり9.88時間(週49.4時間)
残業時間(学校にいる時間−勤務時間) 1日あたり2.13時間
睡眠時間 6時間3分

学校別に残業時間を見ると、中学校がもっとも多く、1日あたりで3時間30分以上残業しています。小学校や高校でも、1日あたり2時間以上残業しています。
残業が多いと睡眠時間も減少しがちですが、教員の睡眠時間は平均で6時間前後です。

教員の残業が多くなる理由とは?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 授業の準備や学級の運営など抱える仕事量が多いので、残業が多くなりがち
  • 部活動の指導をするために、土日も出勤しなければならない場合がある

調査結果によると、教員は1日あたり2時間45分ほど残業していることがわかりました。なぜ教員は残業が多くなってしまうのでしょうか?

教員の残業時間が多くなってしまう理由としては、抱える仕事量が多い、部活動の指導がある、の2点がポイントです。

抱える仕事量に関する問題

教員の残業が多くなる理由の1つは、抱える仕事量が多いことです。
教員は児童生徒に勉強を教えるために、授業の準備をしなければなりません。労働時間内には他の仕事があるので、授業の準備は時間外にすることになります。

授業の準備以外にも、学級の運営、生徒の成績の管理、試験問題の作成や採点など、教員が抱える仕事は大量にあります。
仕事量が多く時間内に終わらせるのは難しいことから、残業が増えていきがちです。

部活動指導の問題

教員の残業が多くなりがちな理由の1つは、部活動の指導をしなければならないことです。
児童生徒の部活動としてサッカー部や合唱部などがあります。教員は部活動の顧問として、管理や監督をしなければなりません。

平日の部活動の指導だけでもかなりの業務ですが、試合や大会などで土日に働く場合も少なくありません。

教員の残業は請求できるのか?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 公立の教員は残業代を請求できないが、教職調整額として調整される
  • 私立の教員は労働者として残業代を請求できる

時間外労働をした分は、残業代としてきちんと支払ってもらいたいです。教員でも残業代を請求することはできますか?

公立の教員の場合、教職調整額として調整されるので残業代は請求できません。私立の教員の場合は、一般的な労働者と同様に残業代を請求することができます。

公立の教員の場合

公立学校の教員は残業代を請求することができません。残業代のかわりに「教職調整額」が支払われているからです。

教職調整額とは、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)と呼ばれる法律に規定されている制度です。

教職調整額のポイントは以下の2点です。

  • いわゆる残業代である、時間外勤務手当や休日手当は支給されない
  • 残業代が支払われないかわりに、給料月額の4%が支払われる

つまり、公立の教員はいくら残業をしても残業代は支給されないかわりに、給料の月額の4%が支払われるということです。
教職調整額によって一定の金額が保証されるものの、教員は学級の管理や部活動などによって、残業や休日出勤が多くなりがちです。

それにもかかわらず、残業代として計算すると月額4%を超える程度に残業した場合は、超えた分については実質的に支払われないことになります。

私立の教員の場合

私立学校の教員には教職調整額は適用されません。
サラリーマンなどの一般的な労働者と同様に、所定労働時間を超えた分については、残業代の支払いを請求することができます。

ただし、使用者(雇用されている学校など)がきちんと残業代を支払っているかは別問題です。教員は残業するのは当たり前だとして、残業代が適正に支払われていない場合もあります。

まとめ

教員は学級の運営や生徒の成績の管理などで、残業の量が多くなりがちです。また、部活動などで土日に出勤する機会も多くあります。
総じて教員の残業は多くなりがちですが、本来であれば、残業にはきちんとした対象が必要です。実際に、過去には、公立学校の教員が県を相手に残業代の支払いを求めるなどの訴訟も起こっています。
公立学校の教員の方は、残業代の請求が難しい場合もございますが、お悩みの教員の方(特に私立学校の教員の方)は、残業をするのは当たり前だと泣き寝入りをせずに、弁護士にご相談するなどして声をあげることが大切です。