残業代を支払わない使用者がよくつく嘘を知っておこう
ざっくりポイント
  • 残業代を支払わない使用者がよくつく嘘
  • 残業代を支払わない使用者がつく嘘への対応策
  • 残業代請求を弁護士に依頼するほうが良い理由

目次

【Cross Talk】残業代を払わなくて良いと主張する使用者はどのような嘘をつくのか知りたい

私の働いている会社では残業代が出なくて困っています。退職をしようと思うので、退職後に残業代請求をしようと思っているのですが、いろんな嘘をついて反論してきそうです。

会社・使用者がつきそうな嘘とその対応方法について知っておきましょう。

使用者がよくつく嘘はワンパターン?代表的な言い訳ベスト5と対応方法について知ろう

残業代を支払わない会社のパターンとして、自社の制度は残業代の支払をしなくてもいい制度になっているかのような嘘をつきます。確かに、一定の場合には残業代を支払わなくても良いケースは存在しますが、ほとんどのケースでは当てはまらないことが多いのです。よく使用される嘘とそのような嘘をつかれたときの対応方法について知っておきましょう。

残業代を支払わない会社が嘘をつく5つのパターンと対策

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代を支払わない会社がつく嘘のパターン
  • そのような嘘をつかれた場合の対策

会社はどのような嘘をついて残業代を支払わないのでしょうか?

よくあるケースをみてみましょう。

残業代の支払をしない会社のやり方として、自社の制度では残業代は支払わなくて良い、あるいは支払ったことになっていると嘘をつくことがあります。どのような嘘をつくことが多いのかをみてみましょう。

みなし残業代を支払っている

「みなし残業代」として、既に残業代を支払っているというものです。
みなし残業とは、給料に一定時間分の残業代を含んで支払う制度のことをいい、「固定残業代制度」とも言われます。例えば、月20時間分の残業代を含む金額として、給料を支給しているようなケースです。

このような制度をとっている場合、実際に20時間以上の残業をしなければ別途残業代は発生しませんが、20時間を超えて残業をしているような場合であっても、「みなし残業代を支払っているから払わなくてよい」と主張されることがあります。
このみなし残業によって規定された時間を超える残業をした場合に、残業代を支払わなくて良いとする法律はないため、このような主張は認められません。このような会社においては、残業代の支払をする意識がないため、残業時間の把握がルーズになっていることが考えられます。

たとえば、タイムカードで残業を把握することができない、タイムカードを切ってから労働をすることを要求されるなどのケースも多く、残業時間が何時間になるか把握できないことが珍しくありません。
勤務時間に関する証拠を提出することができないと、裁判を起こしても請求が認められない可能性もあるので、日報・パソコンのログやメールのやりとりに関する記録など、残業をしていた証拠をしっかり確保するようにしましょう。

フレックスタイムにしている

フレックスタイムとは、始業・終業の時間を自由に定めることができる労働時間に関する制度です。
ですが、この制度は、何時から働き始めても良く、何時に終業して帰宅をしても良いとするのみで、残業が発生したときに残業代を支払わなくてもよいとするものではありません。

そのため、週40時間(特例措置の対象になる事業者は44時間)を超える残業をした場合には残業代を支払わなければなりません。こちらも、何時間残業したかを把握することが難しくなっていることが多いので、残業をした証拠をしっかり残すようにしましょう。

残業の指示を出していない

残業の指示を出していないので残業代を支払わらなくても良い、という嘘をつく使用者もよく見かけます。
確かに、残業をすると割増賃金が発生するため、徒に仕事を続けて残業代を稼ぐことは、妥当ではありません。また、当然ですが残業をしていないにもかかわらず残業をしたと主張すること(カラ残業)も認められません。
そのため、残業をするにあたっては、会社の指示であること(=労働時間に当たること)が必要です。ただし、この指示は「残業をして◯◯を仕上げてください」という明示的なものでなく、黙示的なものであっても認定されることがあります。

定時では終わらない量の仕事を指示したような場合にはこれが認められますし、判例の中には、自発的にしている残業を会社が黙認しているような場合に残業の指示があったと認めたものもあります(大林ファシリティーズ事件:最判平成19年10月19日)。このような場合には、残業をしなければ時間内に仕事が終わらなかったといえるような事情について、客観的な証拠を集めることが必要だといえます。

手当に含めている

たとえば、一定の役職にある人には手当を支給しているので、残業代の支払をする必要はない、と主張するようなこともあります。
役職との関連でいうと、使用者と一体の存在とされる「管理監督者」に当たるような場合には、残業代の支払は必要ではありません。しかし、「管理監督者」に当たるといえるような人は、実際には取締役・監査役などの限られた地位にある人のみで、名前の上では管理職のような役職でも、職務内容や責任・権限、勤務態様、賃金等の待遇から、労働基準法との関係では「管理監督者」とはいえない人(いわゆる「名ばかり管理職」)は、残業代の請求をすることが可能です。

これは、たとえ役職手当のようなものをもらっていたとしても、変わるものではありません。このようなケースでは、管理監督者ではない、と主張・立証することが必要であるため、残業時間の把握のほかにも、業務の性質を把握して、使用者の指揮命令に服していることを主張できるようにしましょう。

裁量労働制である

裁量労働制は、労働契約で事前に働いたと「みなす」時間を決めておき、実際の勤務時間に関係なく給与を支払うものです。
事前に1日8時間と決めておいた場合には、実際に働いた時間が4時間でも12時間でも、同じ給料が支払われます。裁量労働制に関する法律規定が適用されると残業代の支払をしなくても良い場合もあるのですが、その対象となる業務についてはごく一部に限られています。

研究開発・デザイナー・テレビのプロデューサー又はディレクター・弁護士や公認会計士など士業の19の業務が専門業務型裁量労働制として定められています。
参考:厚生労働省動労基準局監督課「専門業務型裁量労働制」

また、企画業務型裁量労働制については企業の経営陣が対象になります。それ以外の職種の人に対して、裁量労働制のため残業代の支払をしなくて良いとの主張は、嘘ということになります。
このような場合には、自分の職種が裁量労働制の対象になる職種ではないことを証明することがあるので、どのような職務についているのかを証明できるような証拠を用意するようにしましょう。

嘘をつく会社は残業代を支払わない常習犯!?弁護士に依頼して請求すべき理由

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代を請求するための勝負のポイントは残業をした証拠
  • 法律問題と難しい交渉を任せられる弁護士に依頼することが早い解決の道になる

私の勤めている会社も「みなし残業」なので残業代を払わないと言っているようです。残業代請求をするにあたって気をつけるべき点はどのようなことになりますか?

残業代請求をするためには証拠の存在が不可欠です。どのような証拠で残業代の未払いを立証するのかなどを含め、残業代を払わないのが常態化している会社との交渉をスムーズに進めるという観点からも、早めに弁護士に相談・依頼をすることをお勧めします。

残業代を支払わないで嘘をついているような会社が相手の場合、早めに弁護士に相談・依頼するべきです。

証拠を抹消されたら請求ができなくなる

前述しましたが、残業代の支払義務について争いになった際に、最終的に支払義務を確定させるためには、裁判で勝たなければなりません。残業代請求の訴訟において証拠を提出しなければならないのは、原告(請求する側)です。勤務時間を証明するタイムカード・業務日報・業務のやりとりをしたメールなどは、退職をしてからでは取得することが困難です。残業代未払いが常習となっている会社では、このような証拠を抹消することも十分にありえるのです。
そのため、早めに弁護士をつけて、証拠を抹消しないように会社に伝えてもらったり、場合によっては保全手続を行う必要もあります。

当事者が感情的になり交渉がまとまらなくなる

残業代を払わない会社は、残業代の支払いを求めてくる労働者に良い印象を持っていません。
そのため、残業代の請求をすることによって、残業代の支払義務とは関係ない、当事者の人格についての攻撃などをしてくる可能性があります。「社会人失格」「わがまま」「恥知らず」など、このような言葉を並べられてしまうと、当事者の感情的な対立のほうがメインになってしまい、まとまる交渉もまとまらなくなります。弁護士が間に入ることで、いわば緩衝材のような役割をして、淡々と残業代請求・回収を行ってくれることになるので、スムーズに請求をすることができます。

未払い残業代に関する法律は複雑

残業代の支払義務に関する労働基準法などの法律の中身は非常に複雑です。
条文は読みづらく、専門用語も難解であることは珍しくありません。これらを読み解いて、請求できる金額がいくらになるのか確定しないまま相手に請求をすると、請求できるはずだった金額を逃してしまうリスクもあります。
法的な知識を一から調べるよりも、法律的な交渉において全面的にサポートしてくれる弁護士に依頼することは、有利かつスムーズに問題を解決するためには不可欠といえるでしょう。

まとめ

このページでは、残業代を支払わない使用者がどのような嘘をつくのか、どう対処をすればよいかについてお伝えしました。
みなし残業のように、会社との契約でよく見るような制度であっても、実は残業代を支払わなければならない場合もありますので、残業代請求をしたい場合は弁護士へ相談することが不可欠であるといえます。