- 残業代請求に着手するのは遅くなりがち
- 残業代請求を弁護士に相談する最適なタイミングは在職中
- 退職してから2年を超えると残業代請求自体ができなくなる
【Cross Talk】残業代請求、いったいどのタイミングで弁護士に相談をするのがいいの?
私の会社では毎月20時間分の「みなし残業」の支給はあるものの、残業自体は毎日深夜終電ギリギリまでに及んでいます。残業代請求をしようと思っていますが、まだ在職中で、どのタイミングで弁護士に相談すればいいかわかりません。
残業代請求は証拠の有無で結果が大きく変わってきます。退職後だと証拠の収集が著しく困難になるので、在職中からアドバイスを受けるのが適切といえます。
残業代請求の請求は心理的にしづらいものになっています。
そのため残業代を取り戻すために弁護士に相談してもそのタイミングでは遅すぎるという事もよくあります。
残業代請求を有利に導く最大の要因は未払い残業代を証明する証拠がどれだけあるかということになります。退職後に証拠を手に入れるのは非常に難しくなるため、残業代請求の相談を弁護士にするベストのタイミングは在職中といえます。
未払い残業代の請求を躊躇する理由
- 在職中に残業代請求をするといやがらせなどのおそれがあるので難しい
- 退職後にも会社への恩義があるなどで残業代請求はしづらいということも
残業代請求についてはしたいと思う一方で、なんだか気が引けるのも確かです。他の方はどうなのでしょうか?
残業代請求を躊躇する方は多いです。その理由について考えてみましょう。
残業代請求は本来払われるべき給与の一部が未払いなので請求をするものですが、実際には請求しないという方も大勢います。
請求を躊躇する理由としてはどのようなものがあるのでしょうか。
退職前に請求することを躊躇する理由は?
まず退職前に未払いの残業代を請求する人は非常に少数派です。
もともと残業代を支払わない会社は適法ではないことを知っていますので、このような請求をされて拒むことができないことは知っています。
そうなると、請求をしてくる人に対して態度を硬化させてくることは明らかで、嫌がらせ・パワハラ・いじめなどの対象になる可能性があるからです。
実際に残業代請求をする多くの方は、会社を退職した後に行うことになります。
退職後に請求することを躊躇する理由は?
しかし、会社を退職した後も残業代の請求をすることを躊躇する方もまた多いのです。
その理由としては、会社の同僚や上司などと退職後も良好な関係を続けており、恩義があるため残業代請求しづらい、といったものです。
近しい業界や、関連するような業界で転職をしたような場合には、転職後も従来の会社・関係者とのつながりがあることも多く、このような請求を躊躇する原因となっています。
証拠収集との関係で退職前に弁護士に相談するのがおすすめ
- 残業代請求を有利にすすめるためには証拠の存在が不可欠
- 証拠は在職中でないと集めるのが難しい場合が多い
私は残業代請求をいずれしようと思っているのですが、在職中は難しいと思っているので退職してから相談しようと思っています。弁護士に相談するにあたってのベストなタイミングはどのような時でしょう?
残業代請求は証拠の有無・量によって有利・不利が大きく変わります。証拠は在職中でないと集めるのが難しいといえます。ですので、在職中から相談をして証拠の収集についてのアドバイスを受けるべきといえます。
残業代請求をする最適なタイミングは退職前で、その理由は残業代請求をする手続の構造と関連します。
残業代請求について、請求に応じる義務があるかどうかを最終的に判断するのは裁判所で、民事裁判の提起に対して判決という形で判断をします。
残業代請求のような金銭の請求では、請求する権利があることを客観的に証明する必要があるので、金銭の請求を基礎づける根拠があることを証拠で示す必要があります。
もし証拠がなければ、請求された残業代はないものとして判決を下さなければならないのが民事訴訟の原則になります。
残業代請求においては、タイムカードや始業・終業メール等の送受信記録、その他の証拠を集めることになるのですが、退職後にはこうした資料の収集は非常に難しくなるといえます。
そのため、残業代請求をするためには、在職中から証拠を集める必要があります。
どのような証拠が有効か、どうやって集めるかなどを相談しておくと、以後の残業代請求が非常に有利に進むといえるので、この時点から弁護士に相談しておくのがベストといえるでしょう。
未払い残業代請求ができるのは原則2年分なので早めに弁護士へ相談を
- 残業代請求は法律上は給与債権の行使に位置付けられる
- 給与債権は行使できるとき(毎月の支給日)から2年で消滅時効にかかるので早めの相談を
退職後に請求をする場合にはいつまでに相談すべきですか?
月給制の場合、残業代請求権は毎月の給与ごとにその支給日から2年で消滅時効になります。なるべく早めに相談をすることをお勧めします。
すでに退職をしてしまった場合にはいつまでに弁護士に相談をすればよいのでしょうか。
未払い残業代請求における消滅時効とは
未払い残業代の請求は、法律上は労働契約に基づく給与債権の行使です。
給与債権は労働基準法115条によって2年で消滅時効にかかるとされています。
また、給与債権は毎月の給与の支給日に発生し、毎月の残業代もこれに含まれるため、毎月支給日から2年経つごとにその月分の残業代が順次消滅時効で取り戻せなくなっていきます。
消滅時効に関しては昨今大改正が行われたのですが、現状は2年の消滅時効にかかることで維持されています。
つまり退職から(厳密には最後の給与の支給日から)2年を経過すると、残業代請求をしたとしても会社側からはすべての残業代が時効と主張されることになり、残業代の取り戻しはできないといえます。
さらに、例えば、退職から1年11か月後に残業代を請求したとしても、消滅時効にかかっていないのは最後のひと月分だけであるため、ひと月分の残業代しか取り戻せないことになるなど、時間が経てば経つほど請求できる金額は減少していきます。
そのため、退職後に残業代請求を考えている場合は、一刻も早く相談をすることが肝要です。
時効を止めるための手段
この時効ですが債権者である労働者の側からストップをかける措置をとることもできます。
そのための方法は法律上いくつかあるのですが、実務的には配達証明付き内容証明郵便で残業代請求をする旨の書面を送り、その後協議・半年以内に裁判を提起する、といった方法が採られます。
早ければ早いほど時効にかかって請求できなくなる残業代も減るので、なるべく早く弁護士に相談をする必要があります。
まとめ
このページでは、未払い残業代の請求について、弁護士に相談するタイミングについてお伝えしてきました。
残業代請求の構造として、証拠の有無で大きく請求のやりやすさが異なってきます。
証拠は在職中でないと手に入らないものもあるので、弁護士への相談は在職中から行うようにしましょう。