- 残業代は法律上給与の支払い
- 正当な支払をしているのに受け取りを拒否すると遅延損害金(遅延利息)を以後請求できなくなる
- 一部の支払しか提示してこない場合には弁護士に相談するほうがよい
【Cross Talk】頭に来たので残業代は謝るまで受け取らない!受け取り拒否をしたいのですが。
私は会社を退職したのですが、退職した会社は残業代を支払っていませんでした。
そのことで社長に内容証明を送ったら「うるさい奴だな1万円を口座に入れといてあげるからもう関わらないでくれ」といったような人を馬鹿にした態度だったので、謝罪をするまでは受け取りをしないようにしようと思っています。
残業代の受け取りって拒否することはできるのでしょうか。
ひどい対応ですね。正当な支払であれば拒否をするとその後の利息にかかわったりするのですが、支払と評価することができないようなものについては受け取りを拒否しても問題ないですよ。
そうなんですね!その後の請求についても相談に乗ってもらえますか?
残業代は法的には給与債権に対する弁済です。正当な支払については受け取りを拒否すると受領遅滞という状態になります。
ただし、支払いがごく一部であるような場合や、一部の支払いで債権債務なしとする書面にサインしてほしいと言われた場合には受け取りを拒んでも問題ありません。このような会社は残業代未払いの常習とも考えられるので、早めに弁護士に相談することが必要でしょう。
未払いの残業代について使用者の法的義務と残業代の受け取り拒否について確認しよう
- 残業代は給与である
- 受け取り拒否をすることができる場合
残業代の受け取りを拒否した場合、法律上はどういう状態になるんでしょうか?
きちんとした金銭の提供があれば受領遅滞という状態になって債務不履行ではなくなります。
残業代について使用者にはどのような義務が課されているか、その義務を果たしたときに受け取り拒否をするとどうなるのかについて確認をしましょう。
残業代の未払いは給与の未払いである
残業代とは、法的には残業に対する賃金の支払であって、要は給与です。
したがって、残業代を支払っていないという場合には給与を支払っていないということになります。
このような状態を債務不履行といい、債務不履行になっているような場合には遅延損害金として利息をつけて支払わせることができます。
一部の支払いを提示された場合はその他の条件を確認する
一部の支払のみに応じるような場合にはどうすれば良いでしょうか。
一部の支払については、どのような支払なのかによって対応を変えるべきです。
残業代として請求してきた部分について、全部の支払には異議をとなえるが、一部の支払については合意するため、支払に応じるというような場合が考えられます。
この場合、支払を受けるときに、事前に書類の取り交わしをすることがほとんどです。
この書類の中身についてはきちんと確認をしたほうが良いでしょう。
仮に、一部の支払を受け取る時に、書類に「以後の債権債務関係についてはないことを確認する」など、残余の請求について清算するような文言がある場合、サインをしてしまうとその後の請求ができなくなることがありますので注意が必要です。
上記のように、サインと引き換えに金銭を受け取ることができるようなものなのであれば、受け取りを拒否しても構いません。
きちんとした支払いをしている場合受け取り拒否をするとどうなるか
未払い残業代の支払がされていないような場合には、会社は債務不履行の状態にあります。
そのため、残業代を支払う場合でも、未払いの残業代のみならず、遅延損害金として法定利息の支払もしなければ債務の履行とはいえなくなります。
仮に、会社が全ての金銭の支払をきちんと打診してきてにもかかわらず、本件の相談者のような事情があり、受け取らなかった場合にはどうなるのでしょうか。
この場合、受領遅滞という状態になります。受領遅滞になると、債務者としてはきちんと支払うべき義務を果たしているので、債務不履行責任を負わなくなります。残業代の請求については、遅延損害金としての利息の受け取りがその後できなくなります。
違法な一部支払いのみ提示してくる場合には弁護士に依頼する
- 違法な一部支払いのみをするような会社は残業代未払いの常連
- 残業代問題を弁護士に依頼するメリット
一部の支払いで手を打とうとする会社ってやはり残業代を支払わない常習でしょうか。
その可能性は高いですね。きちんとした請求をするのであれば弁護士に依頼をしたほうが良いでしょう。
違法に一部の支払いのみで済ませようとするような会社に対して残業代を請求するのであれば、弁護士に依頼すべきといえます。
残業代請求を弁護士に依頼すべき理由
残業代は、これまで述べたように法的には給与の支払です。
その支払を一部だけで済ませようとする会社はそもそも順法精神があるとは到底いえません。むしろ、残業代を請求するなんてどうかしている、などといった考え方が根底にある可能性があります。
このような会社に対して個人で請求をする場合は、法的な知識が必要なのはもちろん、会社とタフな交渉が必要となります。時には、当事者で感情的な対立が生じてしまい、交渉が難航する場合があります。
弁護士に依頼をすると、残業代請求に関して法律知識でサポートしてもらえることはもちろんですが、それ以上にハードな交渉を依頼することができ、また、当事者間の感情的な対立の緩衝材となってくれることが期待できます。
弁護士に相談・依頼するか迷うならば少なくとも証拠の収集だけでも行っておく
とはいえ、人生の一大事をすぐに決めることもできず迷ってしまうことはあるかと思います。
その時は少なくとも証拠の収集だけでも行うようにしましょう。実は残業代の請求をするにあたっては、残業をしたことの証拠がどのくらい存在するかが勝敗の決め手になります。
残業代請求が可能か、可能だとしてどのくらいの残業代になるのか、最終的には裁判をして裁判所に判断してもらうことになります。裁判所に判断してもらうためには、原告である労働者側が証拠を提出しなければなりません。タイムカード・外部とのメールの送受信記録・業務日報など、退職した後では手に入らないものもあり、そうなると残業代がどのくらいなのか、そもそも残業代が発生しているのか、ということについて争えなくなる可能性があります。迷っている期間、少なくとも証拠の収集だけでも行うことが良いでしょう。
弁護士に相談をするタイミングはなるべく早いほうがいい
残業代請求において、弁護士に相談するタイミングは早ければ早い方が良いと言えます。
既に述べましたが、残業代請求をするにあたっては、証拠の収集が鍵といえます。辞める前からきちんと証拠を収集しているような場合、その証拠をそのまま相手に突き付ければ、訴訟をしなくても勝てるケースもあります。他方で、相手に証拠を出すように開示請求しなければならないような状態になると、残業代があることを認めてもらえるかどうか、といった状態になることがあります。
在職中からどのように証拠を収集するかアドバイスを受けていると、退職後有利に残業代請求を進めることが可能になります。思い立ったときには、なるべく早めに相談をしておくと良いでしょう。
まとめ
このページでは、残業代の受け取り拒否についてお伝えしてきました。
残業代は給与ですので、会社側には支払いの義務が生じます。したがって、受け取りを拒否すると債務不履行を主張できなくなる場合があるので注意が必要です。残業代を請求する場合、法的な知識が必要なのはもちろん、会社とのタフな交渉も必要となりますので、弁護士に相談することをお勧めします。