ネットトラブルにおける削除請求の5つの方法
インターネットを利用する上で、プライバシー侵害・名誉毀損・風評被害・侮辱・著作権侵害を内容とする投稿の被害に会うことがあります。
昨今ではSNSの利用が一般的で、これらの内容が容易に拡散されるため、速やかに削除してもらう必要があります。
そこでこのページでは、インターネットにされた投稿の削除を請求する5つの方法についてお伝えします。
目次
サイト管理者やドメイン管理者に直接削除依頼する方法
サイト管理者・ドメイン管理者に直接削除を依頼する方法が1つ目の方法です。
インターネット掲示板やSNSには、削除請求の依頼を受け付けるフォームや、メールでの削除請求を受け付けていることがあります。
これらを利用して削除請求を行います。
法的手続が不要であり簡易にできること、費用がかからないこと、対応が早ければ数日以内に削除をしてもらえることがあるというメリットがあります。
一方で、権利侵害があることを適切に伝えなければならないため、法律上の根拠を調べ、これに対応する証拠集めなどをきちんとしなければならないことはデメリットといえます。
また、当該サイト・SNSの削除に関するポリシーを丁寧に読み込む必要があり、これに沿った対応をしなければ全く相手にされないこともあるというデメリットもあります。
また、サイトによって対応がまちまちで、サイトによっては全く対応されずに連絡も来ないことがある、というデメリットがあります。
プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置を利用する
プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置を利用するのも一つの方法です。
プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)3条2項2号は、被害者がプロバイダーに対して送信防止処置依頼をした場合に、運営者に対してその送信防止措置依頼に同意するか照会し、7日以内に同意しない旨の通知がなかったときに、プロバイダーは責任を免れることを規定しています。
この制度を利用して、プロバイダーからSNSやサイト運営者に対して働きかけをしてもらい、削除をしてもらう方法があります。
法的に定められている手続ですが、裁判などに比べると手続が簡易にできるというメリットでしょう。
しかし、どのような権利侵害があるのかをしっかり主張する必要があること・またサイト運営者が応じない場合には効果がないというデメリットがあるのは、直接の削除要求をする場合と変わりません。
弁護士から削除依頼する方法
弁護士に代理してもらい、サイト・ドメイン管理者に直接削除を依頼するのが3つ目の方法です。
弁護士が代理をして行うことで、権利侵害の主張について適切に行ってもらえるとともに、サイト・ドメイン管理者が受ける圧力は強くなり、削除に応じてもらいやすくなるというメリットがあります。
一方で、弁護士から削除依頼が来ても応じない場合には応じませんし、弁護士費用がかかるというデメリットがあります。
なお、削除代行業務は、弁護士法72条における法律事務に該当するもので、弁護士以外の者が有償で請け負うと、弁護士法72条違反(いわゆる非弁行為)として、契約は無効になるとされています。
弁護士資格を有しない削除代行業者に対して依頼料の返還を要求した、東京地方裁判所平成29年2月20日判決で、削除代行業者への依頼を弁護士法72条に違反するものとして無効としました。
弁護士法72条に違反すると、削除代行業者は刑事罰に問われる可能性があるほか、削除の依頼は高度な法的知識が必要であり、安易にこれらの業者を使っても削除ができないことがあるので注意をしましょう。
法的手段による削除対応する方法
裁判を利用し、投稿の削除を求める仮処分の申立てをする・損害賠償を請求するという方法があります。
まず、サイト管理者に対して記事の削除を求めるために、仮処分を申し立てて、サイト管理者に投稿の削除を求めるのが一つの方法です。
もう一つは、サイト管理者にIPアドレスを開示してもらい、IPアドレスからプロバイダーを特定したうえで、プロバイダーに発信者情報を開示してもらって、削除・損害賠償を求める方法です。
これらの方法を採るメリットとしては、法的効力によって強制的に削除させることが可能となることが挙げられます。
また、仮処分はスムーズに進むことから、比較的短期間で削除してもらえるのもメリットです。
一方で、法的手続となるので、法的知識・手続に関する知識が不可欠になるとともに、仮処分ではない手続については慎重に行われるため、時間がかかることもあります。
弁護士に依頼すればスムーズに進みますが、どうしても費用がかかるのもデメリットでしょう。
被害届の提出・刑事告訴を行い刑事事件にする方法
悪質な書き込みが行われた場合、加害者に対して刑事事件となる場合があります。
次のような投稿は刑事事件となる可能性があります。
- 前科がある・自己破産をしたと投稿:名誉毀損罪
- 「殺す」「家に火を付ける」などの投稿:脅迫罪
刑事事件に問える可能性がある投稿に対しては、被害届を提出する、刑事告訴をするなどの働きかけを捜査機関に行うことができます。
刑事事件化することで、加害者が自主的に削除する、損害賠償をすることが期待できます。
被害届の提出・刑事告訴には費用がかからないというメリットがあります。
一方で、刑事事件となる行為を行っていることをきちんと警察に伝える必要があるというデメリットがあります。
また、被害届を受け取らない・刑事告訴を受理しないといったことも多く、被害届を受け取った・刑事告訴を受理したとしても、捜査は慎重に行われるため非常に時間がかかるというデメリットもあります。
なお、被害届とは、捜査機関に対して被害があった旨の申告をするにとどまり、処罰を求める意思表示を含む刑事告訴とは異なるのです。
具体的には刑事告訴を受けると捜査機関には捜査をする義務が生じるのですが、被害届はそのような義務は生じないという差に現れます。
そのため、被害届を受け付けてくれることはあっても、刑事告訴は何かと理由をつけて受理しない場合が非常に多いです。
まとめ
このページでは、インターネットにされた投稿の削除を請求する方法を中心にお伝えしました。
スマートフォンが普及し、容易にネガティブな内容の投稿がSNSを利用して拡散されることが増えた近年、速やかな削除は個人を守る上でも企業を守る上でも欠かせません。
被害にあった場合には一刻も早く弁護士に相談することをお勧めします。