
目次
- 手続きの全体像(申立てから後見開始まで)
- 準備から後見人の仕事開始までの流れ
- 法定後見と任意後見で流れが異なる
- 法定後見の手続きの流れ
- 申立て後、家庭裁判所で行われること
- 申立人・候補者との面接
- 本人調査
- 親族への意向照会
- 医師の鑑定(必要に応じて)
- 手続きにかかる期間の目安
- 書類の収集・準備に1〜2か月
- 申立てから審判まではおおむね1〜2か月
- 急ぎで後見人が必要な場合
- 手続きにかかる費用
- 申立ての段階でかかる費用
- 選任後の後見人への報酬
- 誰が負担するのか
- 任意後見の場合の流れ
- 判断能力があるうちに公正証書で契約し、法務局に登記する
- 判断能力の低下後に任意後見監督人の選任を申し立てる
- 弁護士に依頼した場合の流れとメリット
- 相談から申立て・面接への同行まで
- 弁護士が後見人候補者になれる・第三者として関与できる
- 本人が亡くなった後の相続手続きまで対応できる
- よくある質問
- まとめ
手続きの全体像(申立てから後見開始まで)
準備から後見人の仕事開始までの流れ
成年後見の手続きは、細かく分けると9つのステップになりますが、大きくは4つの段階でとらえると分かりやすくなります。
・準備……医師の診断書を取り、戸籍や財産の資料を集めて申立書類を作る
・申立て……本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる
・審理……家庭裁判所が面接・本人調査・親族への意向照会を行い、必要に応じて鑑定をする
・審判と登記……後見開始の審判がされ、確定後に法務局へ登記されて後見人の仕事が始まる
全体では、準備を始めてから後見人の仕事が始まるまでに3か月前後を見込んでおくとよいでしょう。
時間がかかるのは、申立て後よりもむしろ準備の段階です。
法定後見と任意後見で流れが異なる
成年後見には、法定後見と任意後見の2つがあり、手続きの流れがまったく違います。
・法定後見……本人の判断能力がすでに低下した後に、家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらう
・任意後見……本人の判断能力があるうちに、自分で選んだ人と公正証書で契約しておく
このページで説明するステップは、法定後見のものです。
任意後見の流れについては、6章でお伝えします。
また、法定後見は判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3つに分かれます(民法第7条、第11条、第15条)。
法定後見の手続きの流れ
申立人・申立先の確認
後見開始の審判の申立てができる方、後見開始の審判の申立て先の確認を行います。
申立てができる方は以下となります。
(1)ご本人
(2)配偶者
(3)4親等内の親族
(4)未成年後見人、未成年後見監督人
(5)保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人(ご本人が既に被保佐人又は被補助人である場合)
(6)検察官
申立てをする家庭裁判所は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法第117条1項)。
身寄りがないなど申立てをする親族がいない場合には、市区町村長が申し立てることもできます。
診断書の取得
本人がどの程度の支援が必要か、医師へ診断書の作成を依頼します。
※判断能力が不十分な方を支援する制度は、民法上は「後見・保佐・補助」の三種類があります
診断書は精神科の医師でなければ書けないというものではなく、かかりつけの内科医などに依頼して差し支えありません。
家庭裁判所が用意している所定の書式がありますので、裁判所のホームページなどで入手して医師に渡します。
あわせて、本人の生活状況をまとめた「本人情報シート」をケアマネジャーなどの福祉関係者に作成してもらうと、医師が判断する際の材料になります。
この診断書の内容によって、後見・保佐・補助のどれで申し立てるかが決まります。
必要書類の収集
申立書に添付する書類として、以下のような書類が必要になります。
(1)診断書……医師に作成を依頼します
(2)戸籍謄本……本籍地の市区町村で取得します
(3)住民票……住所地の市区町村で取得します
(4)後見登記されていないことの証明書……法務局で取得します
(5)親族の関係図や意見書
(6)財産目録、収支予定表
「後見登記されていないことの証明書」は、すでに後見が開始していないことを確認するためのもので、東京法務局のほか各地の法務局の窓口や郵送で取得できます。
申立書類の作成
項目に沿って内容の記入をしていきます。
作成するのは申立書だけではありません。
家庭裁判所の書式に沿って、次のような書類も作成します。
・申立事情説明書(申立てに至った経緯や本人の状況)
・親族関係図
・財産目録(預貯金・不動産・負債など)
・収支予定表(年金収入や施設費用など)
・後見人等候補者事情説明書(候補者を立てる場合)
財産目録と収支予定表は、後見が始まった後の管理の出発点にもなりますので、資料と突き合わせて正確に作ることが大切です。
本人確認資料の収集
本人の状況を確認するため、次のような資料を集めます。
(1)ご本人の健康状態の確認ができる資料(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、介護保険被保険者証など)
(2)ご本人の収入が記載されている資料(年金額決定通知書、確定申告書、給料明細など)
(3)支出の分かる資料(家賃光熱費、医療費など)
(4)不動産についての資料
(5)預貯金、投資信託、株式等資料
(6)負債がある際の確認資料(請求書、返済明細書など)
(7)相続財産目録(被後見人が他者の相続人となっていて、遺産分割未了の場合に必要)
家庭裁判所へ申立て
申立書、必要資料の準備ができ次第、家庭裁判所へ申立てを行います。
申立ての際には、申立手数料などの費用を納めます(詳しくは5章でお伝えします)。
ここで注意していただきたいのが、いったん申し立てると自由に取り下げられないという点です。
後見開始の申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ取り下げることができません(家事事件手続法第121条1号)。
「希望した候補者が選ばれそうにないからやめる」といった理由では、許可されないのが通常です。
申し立てる前に、専門職が選任される可能性も含めて検討しておく必要があります。
面接・調査
申立て後、家庭裁判所にて面接が行われます。
面接のほかに、本人との面談や親族への意向照会も行われます。
何が行われ、何を聞かれるのかは、次の3章で詳しくお伝えします。
審判
家庭裁判所から後見人(保佐人・補助人等)が選任されます。
ここで大切なのは、申立ての際に立てた候補者がそのまま選任されるとは限らないという点です。
誰を選任するかは家庭裁判所が判断します。
親族の間に意見の対立がある場合や、財産が多く管理が複雑な場合には、弁護士などの専門職が選任されることがあります。
また、親族が選任された場合でも、必要に応じて専門職の後見監督人が付くことがあります。
通知・後見開始
申立人・後見人へ審判書謄本が郵送され、後見開始の旨が登記されます。
審判は、審判書謄本を受け取った日から2週間が経過すると確定します(家事事件手続法第86条1項)。
確定すると、家庭裁判所から法務局へ連絡が行き、後見が開始したことが登記されます。
後見人は「登記事項証明書」を取得して、金融機関などの窓口で自分が後見人であることを示すことになります。
登記が完了するまでには、確定からさらに2週間程度かかるのが通常です。
申立て後、家庭裁判所で行われること
申立てをしてから審判までの間に、家庭裁判所は本人の状況と、誰を後見人にするのが適切かを調べます。
何が行われるのかを知っておくと、準備がしやすくなります。
申立人・候補者との面接
家庭裁判所で、申立人と後見人候補者が調査官などから事情を尋ねられます。
聞かれるのは、次のような点です。
・申立てに至った経緯(なぜ今、後見が必要なのか)
・本人の生活状況、判断能力の程度
・本人の財産と収支の状況
・親族の状況と、申立てについての親族の意見
・候補者が後見人としてふさわしいか(本人との関係、財産管理の経験など)
申立書に書いた内容を確認する場ですので、提出した書類の控えを手元に置いて臨むと安心です。
本人調査
裁判所の職員が本人と面談し、本人の意向と状態を直接確認します。
本人が家庭裁判所に出向けない場合には、自宅や施設、病院に出張して行われます。
聞かれるのは、後見が始まることについてどう思うか、候補者が後見人になることに異存はないか、といった点です。
親族への意向照会
家庭裁判所は、本人の推定相続人などの親族に対して、書面で意向を確認することがあります。
後見の申立てについて賛成か反対か、候補者が後見人になることに異存はないか、を尋ねるものです。
反対の意見が出ると、候補者ではなく専門職が選任される方向に働くことがあります。
そのため、申立ての前に親族へ事情を説明し、了解を得ておくことが、手続きを円滑に進めるうえで大切です。
医師の鑑定(必要に応じて)
家庭裁判所は、本人の精神の状況について鑑定をしなければ後見開始の審判をすることができないのが原則です。
ただし、明らかに必要がないと認めるときは鑑定を省略できるとされています(家事事件手続法第119条1項)。
実際には、診断書の内容から判断が明らかな場合が多く、鑑定が行われるのは一部にとどまります。
鑑定が行われる場合は、その分だけ期間も費用もかかることになります。
手続きにかかる期間の目安
書類の収集・準備に1〜2か月
意外に思われるかもしれませんが、時間がかかるのは申立ての前の準備です。
医師に診断書を依頼してから受け取るまでに数週間かかることがあります。
戸籍や住民票、後見登記されていないことの証明書の取得にも日数がかかります。
財産目録と収支予定表を作るには、預貯金の残高や年金額、施設費用などを一つずつ確認する必要があります。
これらをそろえるのに、1か月から2か月ほどかかるのが一般的です。
申立てから審判まではおおむね1〜2か月
申立てをしてから審判が出るまでは、おおむね1か月から2か月が目安です。
面接、本人調査、親族への意向照会といった審理に時間がかかります。
鑑定が行われる場合には、さらに1か月から2か月ほど加わることがあります。
審判が出た後は、2週間で確定し、その後に登記されますので、実際に後見人が動き出せるようになるまでにもう少し時間がかかります。
準備から数えると、全体で3か月前後を見込んでおくとよいでしょう。
急ぎで後見人が必要な場合
「施設の入所契約が迫っている」「本人の預金を下ろさないと医療費が払えない」といった事情があっても、手続きを飛ばすことはできません。
相続税の申告期限が迫っているなど、期限のある手続きを控えている場合も同じです。
急を要する場合には、審判が確定するまでの間の応急的な措置として、家庭裁判所に審判前の保全処分を申し立てる方法があります。
もっとも、認められるのは限られた場面ですので、必要になりそうだと分かった時点で早めに動き出すことが何よりの対策です。
手続きにかかる費用
申立ての段階でかかる費用
後見開始の申立てには、次の費用がかかります。
・申立手数料……収入印紙800円
・登記手数料……収入印紙2,600円
・郵便切手……数千円程度(金額と内訳は家庭裁判所によって異なります)
・診断書の作成料……数千円程度(医療機関によって異なります)
・戸籍謄本・住民票などの取得費用
・鑑定費用……行われる場合。裁判所の案内では通常10万円以下とされています
鑑定が行われなければ、申立ての段階の費用は1万円から2万円程度に収まることが多いといえます。
弁護士に依頼する場合には、これとは別に弁護士費用がかかります。
選任後の後見人への報酬
後見が始まった後は、後見人に対する報酬が継続して発生します。
報酬の額は、後見人が家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が本人の資力その他の事情によって決定します(民法第862条)。
東京家庭裁判所が公表している目安では、基本報酬は月額2万円、管理する財産額が1,000万円超5,000万円以下の場合は月額3万円から4万円、5,000万円を超える場合は月額5万円から6万円とされています。
訴訟や不動産の売却など特別な事務を行った場合には、付加報酬が加算されることがあります。
なお、親族が後見人になった場合でも報酬を請求することはできますが、実際には請求しないことも多くあります。
誰が負担するのか
申立ての費用は、原則として申立てをした人が負担します。
ただし、家庭裁判所が本人の負担とする旨の判断をすることもあります。
一方、後見人への報酬は、本人の財産から支払われます。
本人に資力がなく報酬を負担できない場合には、市区町村の成年後見制度利用支援事業による助成を受けられることがあります。
制度の有無や要件は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
任意後見の場合の流れ
判断能力があるうちに公正証書で契約し、法務局に登記する
任意後見は、本人の判断能力があるうちに、将来支援してもらう人を自分で選んでおく制度です。
流れは次のとおりです。
・(1)誰に何を任せるかを決める(財産管理、施設の入所契約など)
・(2)公証役場で任意後見契約を締結する
・(3)公証人の嘱託により、法務局に契約の内容が登記される
任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければなりません(任意後見契約に関する法律第3条)。
自分で後見人を選べる点が、法定後見との最大の違いです。
判断能力の低下後に任意後見監督人の選任を申し立てる
契約を結んだだけでは、任意後見は始まりません。
本人の判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
申し立てられるのは、本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者です。
本人以外の方が申し立てる場合には、本人がその意思を表示することができないときを除き、あらかじめ本人の同意が必要です(任意後見契約に関する法律第4条3項)。
家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から、契約の効力が生じます(任意後見契約に関する法律第4条1項)。
任意後見監督人には報酬が発生しますので、費用は法定後見と同じようにかかることになります。
弁護士に依頼した場合の流れとメリット
相談から申立て・面接への同行まで
弁護士にご依頼いただいた場合の流れは、次のようになります。
・(1)ご相談……本人の状況を伺い、後見・保佐・補助のどれで申し立てるかを検討します
・(2)委任契約
・(3)必要書類の収集……戸籍や登記されていないことの証明書などを代わりに取得します
・(4)申立書類の作成……申立書、申立事情説明書、財産目録、収支予定表などを作成します
・(5)家庭裁判所への申立て
・(6)面接への同行、裁判所とのやりとり
書類の収集と作成は、この手続きでもっとも負担の大きい部分です。
とくに財産目録と収支予定表は、資料を集めて数字を積み上げる作業になりますので、ここを任せられる意味は小さくありません。
弁護士が後見人候補者になれる・第三者として関与できる
弁護士は、申立ての代理をするだけでなく、後見人の候補者になることもできます。
次のような場合には、親族ではなく弁護士が後見人になるほうが、結果として円滑に進むことがあります。
・親族の間で意見が対立していて、誰が管理しても不満が残る
・不動産や非上場株式があり、管理や処分に法的な判断を要する
・引き受けられる親族がいない、遠方に住んでいる
・本人が遺産分割の当事者になっていて、親族との利益相反が生じる
第三者である弁護士が関与することで、財産管理の透明性が保たれ、親族間の不信感を避けやすくなります。
本人が亡くなった後の相続手続きまで対応できる
成年後見は、本人が亡くなると終了します。
その後は、相続の手続きに移ることになります。
当事務所では、後見の申立てから、本人が亡くなった後の遺産分割や相続手続きまで、続けて対応することができます。
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よくある質問
鑑定が行われる場合には、さらに時間がかかります。
審判の後、2週間で確定し、法務局への登記を経て後見人が動き出せるようになります。
書類の準備に1か月から2か月かかりますので、着手から数えると3か月前後を見込んでおくとよいでしょう。
誰を後見人に選任するかは家庭裁判所が判断しますので、候補者を立てても、そのとおりにならないことがあります。
親族の間に対立がある場合や、財産が多く管理が複雑な場合には、弁護士などの専門職が選任される傾向があります。
また、親族が選任された場合でも、専門職の後見監督人が付くことがあります。
後見開始の申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可がなければ取り下げることができないとされています(家事事件手続法第121条1号)。
希望した候補者が選ばれそうにないという理由での取下げは、認められないのが通常です。
申し立てる前に、見通しを確認しておくことが大切です。
本人の状態をよく知っているかかりつけ医に依頼するのが一般的です。
家庭裁判所の所定の書式を使いますので、書式を入手してから依頼してください。
ケアマネジャーなどに「本人情報シート」を作成してもらい、あわせて渡すと、医師が判断しやすくなります。
まとめ
このページでは、成年後見の手続きの流れについてお伝えしました。
手続きは、準備・申立て・審理・審判と登記という4つの段階で進み、全体で3か月前後かかります。
もっとも時間がかかるのは申立て前の書類の準備で、診断書の取得や財産目録の作成に1か月から2か月を要します。
また、いったん申し立てると家庭裁判所の許可がなければ取り下げられず、候補者がそのまま選任されるとも限りません。
申し立てる前に見通しを立てておくことが大切ですので、迷われたら弁護士に相談をしてみましょう。
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成年後見に関する当事務所の弁護士監修コラム




