- 遺留分を侵害されたら侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる
- 遺留分侵害額請求権は1年で時効により消滅する
- 遺留分侵害額請求権は内容証明で行使する
【Cross Talk 】遺言書で他の相続人が全ての遺産を相続することになった
父の遺品を整理していたところ遺言書が見つかりました。そこには、全ての遺産を兄に相続させると書いてありました。父の意思とはいえ、私は何ももらえないのでしょうか?
いいえ。ご相談者様には遺留分と言って、遺言書をもってしても奪うことのできない最低限度の相続分が保障されています。お兄様が全ての遺産を相続すれば、ご相談者様の遺留分が侵害されることになるので、ご相談者様はお兄様に対して遺留分を侵害された額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
何ももらえないわけじゃないんですね、安心しました。
生前贈与や遺贈によって遺留分を侵害された相続人は、侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。 この遺留分侵害額請求権を行使する方法について、法律上の定めは特にありませんが、権利行使したことの証拠を残すため、内容証明郵便を利用するのが一般的です。 ただ、内容証明郵便という言葉は聞いたことがあっても、実際に内容証明郵便を見たり作成したりしたことがある方は少ないと思われます。 そこで今回は、遺留分について解説したうえで、内容証明郵便とは何か、どのように作成すれば良いのか、費用はどの程度かかるのか等を解説いたします。
遺留分侵害額請求権で内容証明郵便を利用する理由
- 遺留分には時効がある
- 内容証明郵便を利用すれば権利行使した証拠になる
遺留分を侵害された場合の金銭の請求はどのようにすればいいのですか?
法律上は権利行使の方法に特段の規定はありませんが、内容証明郵便を利用するのが一般的です。
遺留分とは
遺留分とは、一定の範囲の相続人に対して最低限の相続分を保障する制度です。 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められており、直系尊属(被相続人からみて血のつながった上の世代)のみが相続人となる場合は1/3、それ以外の場合は1/2が遺留分となります(民法1042条1項)。 この1/3あるいは1/2という割合は、相続人全体のために留保される遺産の割合で、相続人が複数いる場合は、この遺留分の割合に各相続人の法定相続分をかけた割合が、各相続人の遺留分になります(同条2項)。 例えば、親が亡くなって子ども2人が相続する場合、子ども2人の遺留分はそれぞれ1/2×1/2の1/4ということになります。遺留分侵害額請求とは
生前贈与や遺贈によって、遺留分に相当する遺産を相続することができなくなることを、遺留分が侵害された、といいます。 遺留分を侵害された相続人は、生前贈与や遺贈を受けた者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項)。 これを遺留分侵害額請求といいます。遺留分侵害額請求は1年で時効にかかる
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、あるいは相続開始の時から10年を経過したときは、時効によって消滅します(民法1048条)。 ですから、遺留分を侵害された場合、この期間内に遺留分侵害額請求権を行使しなければなりません。時効にかからないためには内容証明が必要
遺留分侵害額請求権の行使方法については、民法に特に定めはありません。 ですから、口頭で行使することも可能です。ただし、遺留分侵害額請求を行使しても相手方が直ちに支払いに応じるとは限りません。 口頭では権利行使したことの記録が残らないため、のらりくらりとかわされているうちに相手方から「1年経過したから時効だ」などと言われるおそれがあります。 そのような事態を防ぐために、遺留分侵害額請求権は、内容証明郵便を利用して行使するのが一般的です。
内容証明を作成しよう
- 内容証明を利用すれば郵便局が文書の内容を証明してくれる
- 内容証明にかかる費用はおおむね2000円以下
内容証明を利用したほうがいいのはわかりましたが、内容証明ってどんなものですか?聞いたことはありますが、見たこともありません。
内容証明郵便は、郵便局が郵便物の写しを保存して、その内容を証明してくれるというものです。 これによって、相手方からの「1年以内に請求を受けていない」という時効の主張を防ぐことができるのです。内容証明郵便は、手書きのほか、パソコン等を利用して作成することもできます。
内容証明とは
内容証明郵便とは、郵便局が文書の謄本(写し)保を存することによって、誰が誰に対し、いつ、どのような文書を差し出したのかを証明する制度です。 通常の郵便では。郵便物の内容は差出人と受取人にしかわかりません。 そのため、通常の郵便で遺留分侵害額請求権を行使しても、相手方から「そんなことは書いてなかった」と言われるおそれがあります。 内容証明郵便を利用して郵便局に写しを保存してもらい、文書の内容を証明してもらうことで、このような相手方の主張を防ぐことができるのです。内容証明はどうやって作成する?
内容証明は大きく分けて手書きかパソコンを利用するなどして作成した文書を郵便局の窓口に持ち込む方法と、インターネットを利用した電子内容証明による方法の2種類があります。 個人が内容証明を出すのは前者が多いと思われますので、以下では前者の作成方法を説明いたします。 まず、相手に差し出す文書を作成します。 用紙は特に制限がありませんが、字数・行数の指定があることに注意が必要です。 手書きの場合には、市販の内容証明用紙を用いるのが無難でしょう。差し出す文書が完成したら、その謄本を2通作成します。1通は郵便局で保存するためのもの、1通は差出人が手元で保存しておくためのものです。
あとは差出人及び受取人の住所氏名を記載した封筒を用意して、郵便局の窓口に向かいましょう。 なお、内容証明を取り扱っていない郵便局もあるので、事前にインターネットや電話などで確認しておくといいでしょう。内容証明にはいくらかかる?
内容証明にかかる費用は、基本料金に加えて一般書留の加算料金435円、内容証明の加算料金(1枚目440円、2枚目以降260円増)です。 また、内容証明郵便を利用する場合、あわせて配達証明(郵便物を配達した事実を証明するもの)を利用するのが一般的で、これを利用する場合は加算料金320円が必要になります。遺留分侵害額請求権を行使する文書は、通常は1~2枚の分量になると思われます。
したがって、定形郵便を利用(ごく普通の封筒で送る)するとすれば、内容証明及び配達証明にかかる費用は、
1枚 基本料金84円+一般書留加算435円+内容証明加算440円+配達証明加算320円=1279円
2枚 上記計算式に260円加算して1539円
となります。
内容証明に何を記載する?
金銭の支払いを請求する場合、請求する金額を特定するのが一般的です。 しかし、契約などに基づく請求と異なり、遺留分侵害額請求の場合は遺留分権利者が遺産の全容を把握できていないことも多く、1年という短期間で消滅時効にかかるため、請求金額の特定などの詳細な記載をすることは求められていません。そのため、受取人に対する生前贈与や遺言書によって差出人の遺留分が侵害されているので、遺留分侵害額請求をすることを明らかにすれば、それで足りると考えられます。
文例
遺留分侵害額請求権を行使する内容証明郵便の文例は、次のようなものです。まとめ
このページでは、遺留分侵害額請求権を行使する際には内容証明を利用する旨、解説を行いました。 遺留分侵害額請求権の行使方法をご理解いただけたでしょうか? 内容証明郵便は多くの方にとってなじみがないと思いますので、ぜひ参考にしてください。
- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
- 遺留分の割合や計算方法が分からない
- 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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