- 遺言書の内容が不明確であるとしてトラブルとなる例
- 遺言書の内容が不明確でも、なるべく遺言書を有効にするために解釈を行う
- 遺言書の内容が不明確である場合の対応方法
【Cross Talk 】残された遺言書の内容が不明確なのですが、これは無効じゃないの?
先日父が亡くなり、私たち子ども3人で相続をしました。父は自筆証書遺言書を残していたのですが、「次男に遺産を任せる」という内容で記載がされていて、次男が全部相続をするのか、次男が遺産の割り振りを決めるのか不明確なものになっています。このような場合には遺言書は無効になりませんか?
遺言書の内容を解釈して決めることになります。遺言書を全部見せてもらってもいいですか?
はい、よろしくお願いします。
亡くなった方がせっかく遺言書を残していた場合でも、遺言書の内容が不明確であるということがあります。遺言書は遺言者の最後の意思決定なので、なるべく有効にするために解釈によって内容を確定します。当然ながらその解釈によってトラブルになることもあります。遺言書の内容が不明確な場合の処理と、その解決方法を一緒に確認しましょう。
遺言書が不明確な場合にはどう扱われるか
- 不明確な遺言書は無効になるのではなく解釈をする
- 不明確な遺言書の例と解釈についての判例での実例
遺言書が不明確である場合にはどのような取り扱いをするのですか?
遺言書を解釈することによって有効にしようとすることになります。
遺言書が不明確な場合にはどのような扱いをするのでしょうか。
不明確な遺言書の例
そもそも不明確な遺言書とはどのような遺言書でしょうか。 過去に争われた例ですと、
(1)「妻Aに遺贈する、妻Aの死亡後は子どもB・Cが分割所有する」(最高裁判決昭和58年3月18日)
(2)「遺言者は法的に定められたる相續人を以って相續を与へる」(最高裁判決平成17年7月22日)
(3)「財産については私の世話をしてくれた長女のAに全て任せます」(大阪高裁判決平成25年9月5日)
といったものがあります。
このような場合に、遺言書がどのようになるのでしょうか。
遺言書が無効になるわけではなく遺言書の解釈をする
不明確な遺言書が作成された場合の効力について、上記(1)の事例において、最高裁判所は「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである」
としています。 つまり、当該記載の部分だけから判断するのではなく、遺言書全体さらには遺言書を作成していた状況から遺言書の内容を確定することになります。
遺言書の解釈についての実例
では上記の例でどのような解釈がされたか確認しましょう。(1)「妻Aに遺贈する、妻Aの死亡後は子どもB・Cが分割所有する」(最高裁判決昭和58年3月18日) この事例では、
・妻Aに遺贈する、という部分が有効で、子どもB・Cの分割所有は単なる遺言書者の希望にすぎない
・妻Aが所有権を有していれば、子どもB・Cに移転する後継ぎ遺贈と解釈をすることができる
以上の解釈の可能性が遺されており、この点を認定せずに最高裁判所に上告されたので、原審である福岡高裁に差し戻しを行いました。
(2)「遺言者は法的に定められたる相續人を以って相續を与へる」(最高裁判決平成17年7月22日) このケースでは、大阪高裁が「法定相続人である被相続人の兄弟姉妹に相続させる」と判断したものを、最高裁判所では遺贈と解釈する余地があるとして、大阪高裁に差し戻しを行いました。
(3)「財産については私の世話をしてくれた長女のAに全て任せます」(大阪高裁判決平成25年9月5日) このケースでは、長女Aに対する遺贈なのか、遺産分割をAに任せるのか、について争われましたが、遺贈であると認定されました。
遺言書の内容が不明確である場合のトラブルの解決方法
- 遺言書の内容が不明確である場合の解決方法としては当事者間での話し合いがある
- 話し合いで解決しない場合には裁判を起こす
遺言書の内容が不明確であることが原因でトラブルになっているときには、どうやって解決すれば良いのでしょうか。
話し合い・訴訟によって解決をします。
亡くなった方が不明確な遺言書を作成していた場合にはどのように解決するのでしょうか。
当事者間での話し合い
まず、当事者間で遺言書をどのように扱うか話し合います。 遺言書をどう取り扱えば良いかわからないというときには、相続人全員が遺言書の内容と異なる合意をすれば、その合意の内容通りに遺産分割をすることも可能です。
参考:遺言書に納得できない!遺言書と異なる遺産分割はできる?
遺言書の内容についてどうあつかうか合意をすることができそうな場合でも、当事者の感情的な対立が激しくなることが原因で交渉がまとまらないような場合もあります。 この場合には、弁護士に依頼をして交渉を代理してもらい、当事者が面と向き合うことを避けて,感情的な対立を抑えて交渉をすることも検討しましょう。
裁判を行う
当事者間で合意をすることができない場合には裁判を行います。 裁判所で認定された遺言書の解釈に沿って、不明確な遺言書の内容が確定されます。 裁判の起こし方は請求内容や請求の根拠となる法律上の権利によって異なるので、訴訟の専門家である弁護士に相談をしてみてください。まとめ
このページでは、遺言書の内容が不明確である場合についてお伝えしました。 遺言書の文言のみならず、遺言書全体・遺言書を作成したときの状況から解釈をして遺言書の内容を決定する、ということを確認していただきました。 どのように解釈をするか、どうやって他の共同相続人と折り合いをつけるかなど、遺言書の内容が不明確な場合にはトラブルになりやすいので、なるべく早めに弁護士に相談をするようにしてください。
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