空き家を所有したくないので相続放棄をしたい!保存義務などの注意点について確認
ざっくりポイント
  • 空き家等を相続して所有したくない場合の対応方法
  • 相続土地国庫帰属制度がスタート
  • 相続放棄をした場合の保存義務と最新の法改正について
目次

【Cross Talk 】空き家を相続したくない!どうすればいいですか?

相続についてのご相談があります。父が亡くなったのですが、田舎の古い建物を相続することになりました。空き家になってしまいますので相続放棄をしようと思っているのですが、何か注意点はありますか?

不動産だけ相続放棄をすることができないので、ほかの財産も相続できなくなります。また、管理すべき人が管理するまで、不動産の保存義務があります。空き家については最近重要な法律改正があり、国に引き渡す制度ができましたので、適用されないか検討してみましょうか?

そうなんですね!詳しく教えてください。

一言エリア空き家を相続したくない!相続放棄という方法は?保存義務がある?最新の法改正について

相続財産の中でも、住む人がいない空き家は、相続したくないと考える方も多いです。そのために相続放棄を検討することも珍しくありません。相続放棄をすれば相続人にはならないのですが、新たに管理をする人がいる場合に、その人に引き継ぐまでの保存義務があるので注意が必要です。不動産の保存義務や、不動産を国に引き渡す相続土地国庫帰属というものができているので、その内容を知っておきましょう。

空き家の所有権を取得したくない場合の対応方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 空き家の所有権を取得したくない場合の対応方法
  • 相続土地国庫帰属について知る

空き家の所有権を取得したくない場合にはどんな方法があるのでしょうか?

いくつか方法があるので、その内容を確認しましょう。

一人暮らしの親が無くなり、子どももそれぞれ独立して生活をしている、このような場合には、親の住居が空き家となって相続することになります。 空き家を相続して所有権者になると、固定資産税などの管理・維持のための費用がかかる、空き家が原因で損害を与えた場合の管理責任を負うことになるなど、様々な負担があります。 また、その不動産についてさらに相続が発生して、権利関係が複雑になってしまい、争いのもとになってしまうこともあります。 そのため、空き家を相続したくない、という方も多いのですが、その方法としては次のようなものが挙げられます。

遺産分割で空き家の所有権を取得しない

共同相続をする場合には、空き家の所有権を遺産分割で取得しないのが一つの方法です。 遺産分割で誰がどのような遺産を相続するかは、当事者である共同相続人で自由に決めることができます。 そのため、他の相続人に空き家を単独で相続してもらって、自分は空き家は相続しないとすれば、空き家の所有権を取得することはありません。 この方法であれば、自分も相続人として遺産分割に参加して遺産を受け取りながら、空き家の所有権者になりません。

相続放棄をする

もっとも、進んで空き家を相続したい相続人がいない場合も多いでしょう。 そこで、多くの人が相続放棄をすることを検討します。 相続放棄とは、当該相続について、最初から相続人ではなかったものとする制度です。 相続放棄というと、語感から相続する財産の所有権を放棄する行為のように考える人もいるのですが、そもそも相続人ではなかったという取り扱いをします。 そのため、空き家の相続人にならなくて済むのですが、ほかの遺産の相続をすることもできません。 空き家はいらないけれども預貯金は相続したいということができないので注意が必要です。

相続後に売却をする 

一旦相続をした後に売却をすることで所有権者ではなくなります。 売却する場合、共有である不動産は、他の相続人と足並みを揃えないと、全部を売却することができません。 この場合には、不動産の持ち分を他の相続人や、持ち分を専門に取り扱う不動産会社に売却することを検討しましょう。

相続土地国庫帰属制度

令和5年4月27日からスタートした最新の制度が相続土地国庫帰属制度です。 従来より、あまり取引が活発ではない土地について、相続の結果所有者が誰であるか明確にわからなくなってしまうことが問題でした。 このような、所有者不明土地の発生を予防する方策として法律がいくつか改正されたのですが、その一つがこの相続土地国庫帰属制度です。 空き地については、相続人・受遺者が空き家を取り壊し、土地について次の土地に該当しなければ、申請をして、10年分の土地の管理費用を支払って、国に土地を譲り渡すことが可能 です。
  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  • 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

空き家を相続した人が相続放棄をする場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 空き家を相続した人が相続放棄したときの保存義務
  • 保存義務を免れるための手続き

空き家を相続した人が相続放棄をした場合には何か注意が必要でしょうか。

管理できる人が現れるまで空き家を保存する必要があります。この制度については最近法改正があったので注意しましょう。

空き家を相続した人が相続放棄をした場合にはどのような注意が必要でしょうか。

相続放棄をした人で占有をしている人は空き家の保存義務を負う

相続放棄をすることで、遺産については権利がなくなるわけですが、現に相続放棄をした人がものを占有していることもあります。 この場合に、相続放棄をした人が遺産を現に占有している場合には、その占有している財産を、自己の財産におけるのと同一の注意で、他の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務を負います(民法940条)。 これから誰も住む予定が無くて空き家になる場合でも、占有をしていたといえる人の場合には、その建物を相続する人や相続財産清算人に引き渡すまで管理する義務を負います。

相続放棄した人の空き家の保存義務に関する2023年4月の法改正を確認

この空き家の保存義務については、2023年4月に現在の内容の法律が施行されました。 従来は、空き家の保存義務については、
民法940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
と規定されていました。 つまり改正前は、最後に相続放棄をした人が管理義務を負うことになるので、現に占有していない場合でも、最後に相続放棄をした人は管理を継続しなければなりませんでした。 現在は、
民法940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
と改め、現に占有している場合に限定して、引き渡し相手を相続財産清算人に対して行うこと、また財産については「保存」しなければならないと改められています。

相続放棄した人の空き家の保存義務を適切に果たさなかった場合のペナルティ

もし保存義務がある人が空き家の保存義務を適切に果たさなかった場合には次のようなデメリットを負います。

損害賠償責任を負う可能性

建物を保存する義務がある場合、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって被害を受けた人に対する場合の占有者としての損害賠償責任を負う可能性

があります(民法727条1項)。 例えば、占有している空き家の塀が崩れて、通行人が怪我をしたような場合などです。 また、保存義務に違反して空き家が毀損してしまった場合、相続人や相続財産清算人、被相続人の債権者、などから、損害対象請求を受ける可能性があります。

相続放棄した人の空き家の保存義務から免れるための手続き

相続放棄した人の空き家の保存義務から免れるための手続きを確認しましょう。 まず、相続人となる人がいる場合には、その相続人に対して通知をして、不動産の占有を明け渡します。

相続人となる人がいない場合には、相続財産清算人を選任する手続きを行い、家庭裁判所から選任された相続財産精算人に対して引き渡します。 相続人がいない場合の相続財産清算人は、利害関係者等からの請求によってはじめて選任されます。

民法740条の保存義務を負っている人はこの利害関係人として請求が可能ですので、空き家を引き渡すために請求を行いましょう。 相続財産清算人の選任は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。 管轄の裁判所は、 裁判所の管轄区域|裁判所HPで確認することが可能です。

申立てには、申立書・戸籍謄本等・住民票の除票・財産を証明する書類・利害関係を証明する書類などが必要です。必要な書類については、相続財産清算人の選任|裁判所HPで確認しましょう。

まとめ

このページでは、空き家となる不動産を相続したときに、相続放棄をする場合の注意点を中心にお伝えしました。 相続人ではなくなる相続放棄を行うことで、空き家を相続することはなくなりますが、もし占有している場合には、不動産の保存義務を負うことになります。 相続放棄以外にも方法はあるので、どのような方法が望ましいか、相続放棄した場合の保存義務の有無、保存義務を免れるための相続財産清算人選任のための手続きなど、不明な点がある場合には、弁護士に相談してみてください。

遺言や相続でお困りの方へ
おまかせください!
分からないときこそ専門家へ
相続については、書籍やウェブで調べるだけではご不安な点も多いかと思います。当事務所では、お客様の実際のお悩みに寄り添って解決案をご提案しております。「こんなことを聞いてもいいのかな?」そう思ったときがご相談のタイミングです。
  • 亡くなった親に借金があるかもしれない
  • 親と疎遠のため、財産を相続する気がない
  • 相続税が払えないため家などの不動産を相続したくない
  • 自営業を引き継ぎたいが借金がある
初回相談
無料
法律問題について相談をする
電話での予約相談
(新規受付:7時~22時)
0120-500-700
相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き
(新規受付:24時間対応)
LINEでの相談予約
(新規受付:24時間対応)

この記事の監修者

弁護士 玉田 誠一第二東京弁護士会
良質な法的サービスを安心して受けられる。そうした当たり前を実現すべく日々全力を尽くしております。

法律問題について相談をする

初回相談無料

電話での予約相談

(新規受付:7時~22時) 0120-500-700

相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き

(新規受付:24時間対応)

LINEでの相談予約

(新規受付:24時間対応)
資料ダウンロード

相談内容

一般社団法人 相続診断協会
資料ダウンロード
相続手続き丸わかり!チャート&解説