- 相続の対象になる「相続財産」について知る
- 基本的には相続されるが、相続に適さないものは相続されない
- 税金との関係で相続財産となる「みなし相続財産」を知る
【Cross Talk】どんな財産を相続できるの?
先日父が亡くなり相続手続きをすることになっています。自宅・車・預貯金などは相続できると思うのですが、その他の様々な財産や権利はどうなるのかわからなくなっています。
どのようなものが相続財産となるのか・ならないのかを知っておきましょう。
相続財産とは
- 相続財産とはどのようなものかの概要を知る
そもそも「相続財産」とはどのようなものなのでしょうか。
家や土地などの不動産、自動車などの目に見える財産を思い浮かべるかもしれません。ですがこういった物のみならず、銀行預金に代表されるプラスの財産や、借金に代表されるマイナスの財産も対象になります。相続税との関係では生命保険金や死亡退職金も「みなし相続財産」として対象となることを知っておきましょう。
相続財産になるもの・相続財産にならないもの・相続財産とみなされるもの
相続財産になるもの | 相続財産にならないもの | 相続財産とみなされるもの (みなし相続財産) |
動産 不動産 債権 賃借権 無体財産権 株式 慰謝料 債務 | 一身専属権(年金など) 祭祀財産 香典 | 生命保険金 死亡退職金 特別縁故者が財産を得た場合 相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産 贈与税の納税猶予の特例を受けた株式や事業用資産 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額 特別寄与料 |
相続財産(相続できるもの)
相続をすることができる財産は、相続人に引き継ぐことができるものであれば引き継がれます。以下、代表的な財産について見てみましょう。
動産・不動産
民法は86条で「物」として動産・不動産に関する規定を置いています。 土地およびその定着物を不動産、それ以外のものを動産としています。自宅の建物・土地・マンションといったものは不動産です。車、貴金属といったものは動産ということになります。これらは相続財産になるものです。
債権
人に対する請求権である債権も相続の対象となります。債権の典型例は預金債権です。 銀行に預金をしたものを引き出す、というのは、銀行に対する預金債権の行使ということになり、相続に適した請求権になります。債権の中でも、年金受給権など後述するような一身専属権に属する権利は相続しません。
賃借権
債権の中でも、家を貸してもらう賃借権については注意が必要です。 賃借権も債権ですので相続の対象になります。また、内縁の妻は相続権を持っていないのですが、相続人が居ない場合に内縁の妻が借家人の権利を引き継ぐことができる規定が借地借家法第36条にあるのを知っておいてください。
特許権・著作権などの無体財産権
不動産や自動車のように目に見えるものではなく、人に対する請求権ともいえない権利として、「無体財産権」というものがあります。具体例としては、特許権や著作権といった権利です。このような権利も相続の対象になります。
株式
会社の経営権の持分である株式も相続の対象です。 昔から株式を持っている方は、権利が券面に記載された株券を持っているかもしれませんが、株券は株式を証券化したものにすぎず、相続の対象になるのは株式そのものです。
慰謝料
慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的な苦痛を慰謝する(なぐさめる)ための費用のことをいいます。 精神的な苦痛を受けたからといって、必ず慰謝料請求をするというわけではないので、一身専属権に属すると解釈されていますが、請求の意思がある場合には相続財産となるとされています。 ただ、交通事故のように即死してしまい請求の意思を示すこともできないような場合に慰謝料請求ができないとするのは、怪我をしただけの方に比べてバランスが悪いという観点から、慰謝料請求権は事実上相続される権利として認められています。
債務
ここまで積極財産(プラスの財産)について見てきましたが、前述したとおり債務など消極財産(マイナスの財産)も相続をすることになります。債務の代表例としては借金です。
例えば、被相続人は、相続の時点で評価額にして2,000万円のマンションを保有している一方で、1,500万円の借金がある場合、マンションだけを相続して借金は相続しないということはできません。注意が必要な消極財産としては保証債務があります。 保証債務も相続人が承継することになっています。 しかし、保証債務のうち企業に入社する際に求められる身元保証人としての債務や、根保証とよばれるもののうち極度額の定めのないものについては相続しないとされています 。
相続できないもの
一方で相続をすることができない権利についても知っておきましょう。
一身専属権
法律用語として「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」と呼ばれる権利は相続の対象になりません。 一身専属権というのは、特定の方のみに専属して認められる権利の事をいいます。 具体例としては何度かお伝えしている年金受給権や、扶養請求権といった権利がこれにあたります。要は、80歳の親が亡くなったからといって40歳の子が年金を受け取る権利を相続するわけではない、という事になります。
一身専属権かどうかは、法律の規定や、解釈によって決められますが、契約によっても決められることがあります。 例としてはゴルフ会員権について、本人が亡くなった場合には相続人がゴルフ会員券を相続するわけではなく権利が消滅するとする約款・規約があるような場合には相続の対象になりません。
祭祀財産
次に客観的には物なのですが、通常と同じ取り扱いができない財産として祭祀財産(さいしざいさん)があります。祭祀財産というのは、祭祀に関する財産のことをいい、祭祀とは先祖・祖先をまつることをいいます。 例えば、一家代々引き継いでいる墓・仏壇仏具・位牌・遺影などは、それそのものは財産なのですが、通常の財産と同じように扱うことは不適切です。 そのため、祭祀財産については相続財産に属するものとはせず、祭祀を主宰する者が承継します。
香典
葬儀をする際に参列者から受け取る香典は、遺族が手にするものになりますが、相続財産としては扱いません。 香典は、参列者が被相続人の遺族に贈与した金銭として取り扱うことになり相続の手続きによって引き継がれるものではないと判断されています。
相続税の課税対象になるもの・ならないもの
- 相続税では相続財産ではないものが「みなし相続財産」として課税の対象となる
- 生命保険金はみなし相続財産となる
- 死亡退職金はみなし相続財産となる
相続税では相続財産ではないものも課税の対象になると聞きました。
おっしゃるとおりで、生命保険金や死亡退職金をはじめとしたいくつかの財産が「みなし相続財産」と規定されています。
課税対象になる相続財産
相続税における相続財産も基本的には相続した財産をもとに相続財産がいくらかを計算します。 ただし、一定の財産については相続による財産取得ではないものの、全体とみれば実質的に相続財産とみなすことが公平であるものがあります。 そこで、相続税法3条では、相続によって得た財産ではないものの、相続税法との関係では相続財産とみなすものを規定しています。 この条文によって相続財産として計算されるものについては「みなし相続財産」と呼ばれています。
みなし相続財産については次のようなものがあります。課税対象にならない相続財産
相続財産ではなく、みなし相続財産にもあたらない財産については、相続税の課税の対象とはなりません。
相続財産の調査方法
- 相続財産の調べ方
- 不動産については名寄帳を取得する
- 債務については信用情報を取り寄せる
相続財産はどのように調査すれば良いでしょうか。
財産によって調査のコツがあるので順番に確認しましょう
相続財産の調査の方法
相続財産は、被相続人がエンディングノートをのこしている場合には、エンディングノートに記載がないか見てみましょう。 現金は被相続人が使っていた財布はもちろんですが、いわゆるへそくりのようなものもあるので、基本的には遺品は全て確認しておくのが良いでしょう。
銀行の通帳や不動産の権利証、株券などについては、重要書類をしまっていたところを探してみましょう。 貸し金庫があるような場合には貸し金庫に入れていることが多いです。 車についての車検証は通常は車のダッシュボードに入れられています。
所有している不動産がわからない場合には名寄帳を取得する
所有している不動産は、不動産の権利証や、自宅に届いている固定資産税納税通知書などを確認すれば分かることが多いです。 もしわからない場合には、個人が所有している不動産を一覧で確認できる名寄帳を市区町村で取得しましょう。
債務の調査方法
銀行などの貸金業者からの借金については、被相続人の信用情報を取得しましょう。 信用情報機関では信用情報に登録されている情報を閲覧することが可能です。 個人事業主で買掛金や未払金があるかどうかは、商業帳簿や領収書の有無をつきあわせて確認をします。
「みなし相続財産」など相続税との関係も知る
- 相続税の申告が必要な場合の相続財産や控除を知っておく
相続財産について他に知っておくべきことはありますか?
相続税の申告が必要な場合に、「みなし相続財産」として相続の対象でないものに課税される場合があることを知っておきましょう。
何が相続財産になるのか?という点で知っておくべきなのが、相続税法との関係で相続財産が何になるのかという事です。 相続税の申告にあたっては、法形式上相続の形態をとらなくても、実質的に見ると財産の移転であると評価できるものについては、課税逃れを防ぐ観点から課税に含まなくてはなりません。
そのため、「みなし相続財産」という概念によって、相続により移転する財産ではなくても、相続税法との関係では相続財産として取り扱う規定があります。 典型例としては保険金です。被相続人が契約者・被保険者として受取人が相続人であるような場合がこれにあたります。
まとめ
このページでは、相続財産についてお伝えしました。 基本的には被相続人の財産を相続人が受け継ぐのですが、中には相続に適さないものは相続財産とはならないという事、相続税の課税のための対象財産の計算には相続税逃れができないような規定がされていることなどを知っていただいたうえで、判断に迷うようでしたら弁護士に相談することをおすすめします。
- 遺産相続でトラブルを起こしたくない
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