- 会社の相続についての仕組みを知る
- 会社を相続する際の注意点を知る
【Cross Talk】社長が亡くなった場合の相続ってどうなるの?
先日父が亡くなり、母と私で相続をしました。 父は小さいながら会社を経営していたのですが、会社の経営者って相続するとどうなるのでしょうか?私は相続人として会社の代表取締役をしなければならないのでしょうか?
いいえ、会社経営者の相続は株式の相続と考えましょう。
ある人が亡くなると相続が発生しますが、会社の経営者が亡くなった場合にも相続は発生します。この時に何を相続するのでしょうか。 このことを知るためには会社の経営者はどのような遺産を所有しているといえるのか、死亡すると取締役の地位はどうなるのか、といった事を確認した上で、実際に相続するにあたってどのような注意が必要か確認をしましょう。
会社経営者(社長)が亡くなった場合の相続は会社というものを理解する必要がある
- 会社の基本的な仕組みを知る
そもそも会社の基本的な仕組みについて理解をしていないのかもしれません…。
確かに経営者の相続を考えるときには会社、法人というものの基本的な構造を知っておくと良いかもしれません。
会社の経営者の相続を考えるにあたって、会社の基本的な構造を知っておきましょう。 会社は法律的には法人(営利社団法人)とされています。 会社を所有する権利のことを株式といい、株式を持っている株主によって構成されるのが株主総会です。 株主総会では取締役ら会社役員の選任等主に会社の組織にかかわる重要な事項を決定し、日々の業務の経営に関する決定権限は取締役(取締役会が設置されている場合には代表取締役)がもっている…という事になります。
会社の経営者は、普段は取締役(代表取締役)などの肩書で活動していますが、小規模な会社の場合、取締役(代表取締役)であると同時に株主であることも少なくありません。なお、会社の経営者のトップとして一般的に使われている「社長」という言葉は法律用語ではなく、会社の経営者のトップとしての法律上の地位は取締役(代表取締役)となります。
社長(取締役(代表取締役))が亡くなった場合の相続財産
- 会社の経営者である社長(取締役(代表取締役))が亡くなったときの相続財産について知っておく
会社の経営者である社長が亡くなった場合には何を継ぐんでしょうか?
会社関係の財産として相続するのは会社の株式ということになります。会社に関する財産関係なども併せて確認しましょう。
それでは相続においては何を相続するのでしょうか。
社長(取締役(代表取締役))個人の資産
まず、社長(取締役(代表取締役))が、会社とは関係なしに保有している個人の財産(例:住居用の土地・建物や自家用車)が相続の対象になります。 そして、会社の所有者としての権利である株式も、社長(取締役(代表取締役))個人の財産として相続することになります。会社の資産・債務
次に会社の資産・債務は相続しません。 会社の資産の所有者は、法人としての会社にあるため、社長(取締役(代表取締役))が亡くなったとしても、その相続人が会社の資産を継ぐことはありません。 また、会社の借金・買掛金などのマイナスの財産である債務についても、社長(取締役(代表取締役))が亡くなったとしても相続人が継ぐようなことはありません。社長(取締役(代表取締役))の地位
社長が亡くなった時には社長を当然に継ぐことにはなりません。 社長は一般的な役職の名前で、法律的には取締役・代表取締役などの地位にあります。 取締役(代表取締役)は、法律的には会社と委任契約を結んでおり、委任契約は当事者の一方が死亡した場合には終了します(民法第653条第1号)。 たとえば、子が会社で後継ぎとして勤めているような場合には、子を代表取締役などに選任する手続きを株主総会において行う必要があります。会社の債務の連帯保証人の地位
小規模の会社の社長(取締役(代表取締役))などの役員は、会社の債務・借金などについて連帯保証人になっていることは珍しくありません。 この連帯債務については、当該役員の債務になりますので、相続をすることになります。会社への貸付金
また、小規模な会社ですと、社長(取締役(代表取締役))の個人資産から会社のための支出をすることがあります。 この場合、社長(取締役(代表取締役))が会社に対して貸し付けをしているという事になるのですが、これは債権ですので相続の対象となります。もし会社経営者の債務の額や会社の債務の額が大きかったら?
- 会社債務が多い場合には相続放棄・限定承認などを検討する
- 会社の債務が多い場合には会社の清算を考える
亡くなった経営者である父が個人でしている連帯保証を考えるとちょっと払える額ではないのですが、相続を回避する方法はないでしょうか。
相続放棄や限定承認を検討しましょう。
会社の経営はすべて順調であるというわけではなく、中に債務や借金などを引き継ぎたくない…という場合もあるでしょう。 このような場合には、相続放棄・限定承認という方法を検討しましょう。 相続放棄をすれば、法律上最初から相続人ではなかったとみなされますので(民法第939条)、プラスの財産のみならず、マイナスの財産である借金を相続することもなくなります。
借金・債務の額が不明であるような場合や、相続したいものがあるような場合には限定承認を利用することも検討します。 相続放棄・限定承認については、3ヶ月以内に行わないような場合や、相続財産に対する処分を行うと、相続を承認したものとして利用できなくなる可能性があるので注意をしましょう。
単純承認してしまった場合の対処法
- 会社を継がない場合の対処の方法を知る
すでに遺産を相当処分しており相続放棄はできないようです。ただし会社を継ぐつもりはないので、どう処理をすれば良いかを教えてもらえますか?
処理の方法をお伝えします。
被相続人の相続を承認してしまった場合の後の処理について知っておきましょう。
株式の譲渡、会社が買い取る方法
まず、相続人が株式を所持している状態ですと、株主として会社の重要な事項の決定等に関与をしなければならない状態が続きます。 そのため、株式を譲渡してしまうことが検討されます。ただ、特に小規模な会社の場合、会社としてもどのような人かわからない人が株式を取得して会社経営に入ってくるのを防止するために、株式については譲渡制限をしていることが一般的です。 そのため、以下の2つの方法を検討しましょう。
一つは、会社に買い取ってもらう方法です。 相続人から会社に依頼する場合には、会社としては自己株式の取得になるので、自己株式取得のための要件を満たせば行うことができます。 会社としては、相続が発生した場合、当該会社の株式を取得した相続人に対して、当該株式を会社に売り渡すことを請求できる権利(一般承継株主に対する売渡請求権)を定款で定めることにより、当該相続人から自己株式を買い取ることができます(会社法第174条)。
なお、これらの買取価格には、上限がありますので注意が必要です(会社法第461条第1項5号、同条第2項)。会社が取得できない場合には、第三者への売却について会社に承認をしてもらう(会社法第136条)、会社に対して買い取ってもらう人を指定してもらう、などの必要があります(会社法第140条第4項)。
会社をたたむ方法
以上のように、株式の譲渡による移転ができるのは、会社の株式をその会社自身が買ってくれる場合や、買ってくれる第三者がいる場合です。 会社が相当に小規模で、社長(取締役(代表取締役))一人で業務を行っていた場合や、会社が経済的に破綻しているような場合には、相続をきっかけとして、会社をたたんでしまうのが現実的です。 この時には、会社の清算手続きを行いますが、債務超過にあるような場合には破産・特別清算という手続きをとります。まとめ
このページでは、社長(取締役(代表取締役))が亡くなって相続をしたような場合についてお伝えしました。 会社という法人の仕組みについて知った上で、株式の相続を通した相続関係について確認しましょう。 額が大きい借金や取引の債務の連帯保証をしているような場合もありますので、相続の早い段階から相続放棄を検討する必要もあります。 相続放棄をするような場合には期間制限もありますので、なるべく早い段階から弁護士に相談するなどしましょう。
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