- 遺産分割協議成立後に新たな遺産が発覚するのはどのような場合か
- 新たな遺産が発覚したときの遺産分割協議の効力
- 新たな遺産が発覚した場合でも争いを生じさせないためのポイント
【Cross Talk】遺産分割後に新たな口座が発覚した!どうすれば良い?
もう半年前になるのですが、父が亡くなり私と母・妹で相続をしました。父が亡くなってから3ヶ月の時点で、遺産分割協議を行いました。 しかし、先日、父が株取引に使っていた銀行口座があることがわかったのですが、このような場合に遺産分割協議の効力はどのようになるのでしょうか。
その遺産が発覚していればこのような遺産分割をしなかった、といえる場合でない限り、従来の遺産分割は有効で、新たに発覚した遺産について遺産分割協議を行うことになります。
ある方に相続が発生した場合、遺言書がなければ、相続人の間で遺産について遺産分割を行います。 ただ、遺産分割時に相続人が把握していない遺産があるような事があります。 このような場合でも遺産分割は基本的に有効で、新たに発覚した遺産についてのみ遺産分割を行うことになります。
遺産分割協議のやり直しが必要な場合の具体例
- 遺産分割協議のやり直しが必要となる場合
- 重要な遺産が発覚・相続人が遺産を隠していた場合・相続人が漏れていた場合など
遺産分割協議はどのような場合にやり直す必要がありますか?
3つほど典型的な場合について確認しておきましょう。
遺産分割協議のやり直しが必要であるのはどのような場合でしょうか。
必ず遺産分割協議をやり直さなければならないわけではない
まず、遺産分割をした後に新たな遺産が発覚したからといって、必ず遺産分割協議をやりなおさなければならないわけではありません。 遺産分割において全ての遺産を網羅できないことはよくあります。 例えば、被相続人も忘れているような銀行口座に僅かな預貯金があったり、被相続人が趣味で収集していたものがかなり高額であるような場合が挙げられます。 このような場合に備えて、遺産分割協議書を作成する場合に、新たな遺産が見つかった場合には、その見つかった遺産について遺産分割協議をする旨が記載されていることが多いです。 このような場合には、遺産があとから見つかったからといって、遺産分割協議自体をやり直すということにはなりません。遺産分割上重要な遺産が後に発覚した場合
発見された遺産が、遺産総額に比して額が大きいような場合など、重要な遺産でその遺産があることがわかっていれば従来の遺産分割をしなかったような場合には、遺産分割協議をやり直すことが望ましいといえます。 このような場合には、遺産分割協議をやり直すことになります。相続人が新たに発覚した遺産を隠していた場合
相続人が新たに発覚した遺産を隠していた場合にも、遺産分割協議をやり直すことがあります。 親の形見で他の相続人に渡したくない、お金に変えてしまえばわからない、暗証番号を知っていたので親のお金をおろしていた、というような場合に発生します。 遺産分割協議は相互の信頼のもとに行われるので、他の相続人に対する背信行為があるような場合、従来の遺産分割協議をやり直したほうが良い場合があります。
相続人全員で遺産分割協議をしなかった
相続人全員で遺産分割協議をしなかった場合にも遺産分割協議をやり直すことになります。 遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人全員で行ったのではない遺産分割協議は無効です。 例えば父が亡くなり、相続人が母・その母の子どものみであると思って遺産分割協議をしたところ、実際に調べてみると前に結婚した相手との間に子どもがいたという場合もあります。前に結婚した相手との間の子でも、子どもである以上は相続人なので、その人が参加せずに行った遺産分割協議は無効です。遺産分割協議をやり直さなければならないのです。
遺産分割協議後に債務が発覚した場合の対処法
- 遺産分割協議後に債務が発覚した場合には相続放棄・限定承認を行うのが難しい
- 債務整理・時効援用を検討
遺産分割協議が終わった後に債務が発覚したような場合にはどうなりますか?
相続放棄・限定承認は遺産分割協議を行ってしまうと、利用ができない可能性が高いです。債務整理をすることになるので、まずは債務の調査を慎重にしましょう。
遺産分割協議後に債務が発覚した場合にはどのように対処すれば良いでしょうか。
遺産分割をした場合には基本的には相続放棄・限定承認はできない
借金などの債務が発覚した場合で、それが微々たる金額であるような場合には、支払ってしまえば良いのですが、額が多すぎて支払えない場合には、相続放棄・限定承認を検討することになります。 しかし、遺産分割をした後には、相続放棄・限定承認は基本的にはできません。
遺産について処分をした場合には単純承認とみなされることになるのですが(民法921条1号)、遺産分割はこの遺産についての処分にあたるため、単純承認したとみなされます。 単純承認したとみなされると、相続放棄・限定承認はできなくなりますので、遺産分割をすると相続放棄・限定承認ができなくなります。
ただ、大阪高裁平成10年2月9日決定のように、単純承認となる事情が発生した後でも、予期に反して多額の相続債務があった場合には、分割協議が錯誤により無効となる結果、相続放棄・限定承認ができる場合があるとしています。 遺産分割をした場合でも、諦めずにまずは弁護士に相談するようにしましょう。
相続放棄・限定承認ができない場合には債務整理を検討する
相続放棄・限定承認ができない場合には、債務整理を検討しましょう。 債務の返済ができない場合には、任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理をします。 どの手続が適切かは、債務の額と返済可能な金額によって異なります。 こちらも弁護士に相談してみましょう。
長期間経過している場合には時効の援用も検討する
遺産分割後に債務・借金が発覚する場合は、相続人が調査しても分からないような債務について、長期間経過後に債権者が請求してくる場合が多いと思われます。 その期間が相当経過している場合には、消滅時効にかかっている可能性もあります。 消滅時効については2020年4月1日に民法改正が行われているので、改正前後で内容が異なりますが、目安としては5年以上経過している場合には弁護士に相談してみてください。
遺産分割協議後に新たな遺産が発覚した場合の事前対策
- 遺産分割協議の内容で、新たな遺産が発覚した場合の対応についても定めておく
遺産分割協議後に新たな遺産が見つかると争いになってしまいますね。何か良い対策はあるのでしょうか。
最初の遺産分割協議の内容で、新たな遺産が見つかった場合についての分け方・見つかった場合の管理方法などについて決めておくと良いでしょう。
遺産の調査をしっかり行う
前提として遺産の調査をしっかり行うことは必須です。 銀行口座や証券口座などはもちろん、不動産を所有しているような場合では名寄帳を取り寄せるなどして、遺産分割の意思決定に影響をするような遺産の調査を取りこぼして遺産分割を行うようなことがないようにしましょう。新たな遺産が出てきた場合の対応を遺産分割協議書に記載しておく
相続人が生前に、相続発生時を見越して準備をしていたような場合はまだしも、突然亡くなるような場合も十分にありますので、事前に被相続人の遺産を全て把握して遺産分割協議をすることは難しいといえます。 このようなときに、後に争いとならないよう、新たな遺産が見つかった場合の遺産の処理方法について、遺産分割協議の内容に盛り込んでおくことも検討しましょう。
相続税の申告を行った場合には修正申告が必要となる
- あとから遺産が出てきた場合には修正申告が必要となる
相続税との関係であとから遺産が出てきた場合に注意すべきことはありますか?
相続税の修正申告が必要となるので注意をしましょう。
遺産の額が基礎控除額を超えていると、相続税の申告・納税を行わなければなりません。 相続税申告をした後に新たな遺産が見つかり、その遺産について遺産分割を行った場合には、新たに見つかって遺産分割を行った遺産についても相続税申告の対象に加えなければなりません。 その方法として、遺産が見つかった後に相続税の修正申告を行います。 修正申告をせずに税務調査が入ると過少申告加算税や重加算税がかかることになるので、自主的に修正申告をしましょう。
まとめ
このページでは、遺産分割協議後に、被相続人の遺産が新たに見つかった場合についてお伝えしました。 被相続人が自身の相続発生を見越して準備をせずに、突然亡くなったような場合には、被相続人の遺産をすぐに発見できないような場合があります。 基本的には、新たに発覚した遺産について別途遺産分割をするのですが、それでも一度成立した遺産分割協議の内容があまりにも不公平だと感じる場合には、無効を主張できないか、弁護士に相談するようにしましょう。
- 死亡後の手続きは何から手をつけたらよいのかわからない
- 相続人の範囲や遺産がどのくらいあるのかわからない
- 手続きの時間が取れないため専門家に任せたい
- 喪失感で精神的に手続をする余裕がない
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