- 相続放棄の概要
- 相続放棄をしても生命保険が受け取れる場合
- 生命保険を受け取れる場合の相続税の課税に注意
【Cross Talk】相続放棄をしたらやっぱり生命保険金(死亡保険金)は受け取れない?
先日父が亡くなり、私が相続人になりました。私は相続放棄をしたのですが、父は生命保険の受取人を私にしていたようです。この場合には生命保険は受け取れないですよね。
保険契約は相続とは別と評価されるので受け取れる場合があります。
相続をしたくない場合には相続放棄という方法があります。 相続放棄をすると相続人ではなくなるので相続をしなかったことになるのですが、被相続人が保険を利用しているような場合もあります。 このような場合でも生命保険金(死亡保険金)を受け取ることが可能な場合があります。生命保険を受けとることができる場合やその場合の注意点などについて知っておきましょう。
相続放棄をしても生命保険金(死亡保険)を受け取れる理由
- 相続放棄をすると相続しない理由
- 相続放棄をしても生命保険金を受け取れる理由
相続放棄をしても生命保険を受け取れるのはどうしてですか?
保険契約に基づく支払いなので相続のシステムとは直接関係しないからです。相続放棄のシステムとあわせて確認しましょう。
相続放棄をしても生命保険を受け取れる理由を確認しましょう。
相続放棄で借金を相続しないのは相続人ではなくなるから
まず、相続放棄で借金などを相続しなくなる理由を確認しましょう。 相続放棄をすると、その相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)。 相続人は借金も相続しますが、相続放棄をすると相続人ではなくなるので、借金も(財産も)相続しないことになります。保険金を受けとるのは相続したからではなく保険契約の内容だから
保険金を受取る権利は相続人に与えられるわけではなく、保険契約で保険金の受取人とされているからです。 そのため、相続人であるかどうかは関係なく、契約で受取人とされていれば、受け取ることができます。相続放棄して生命保険金(死亡保険金)を受け取れる場合・受け取れない場合
- 生命保険金(死亡保険金)の受取人が誰かによって保険金を受け取れるかどうかが決まる
相続放棄をした方が保険金を受け取れる場合はどのような場合なのでしょうか?
相続放棄をする相続人自身が受取人である場合です。受取人が被相続人である場合には受け取ることができません。
相続放棄をする場合でも保険金を受け取ることができる場合について見てみましょう。
相続放棄して生命保険金(死亡保険金)を受け取れる場合
保険契約で受取人が金銭を受け取ることができるのはあくまで、保険契約の履行によるもので、相続によるものではありません。 そのため、相続放棄をした方が死亡保険金の受取人である場合には、相続放棄をした場合でも保険金を受け取ることができます。相続放棄して生命保険金(死亡保険金)を受け取れない場合
一方保険契約で受取人が被相続人本人である場合には、保険金はそのまま相続財産となるため、相続放棄をしてしまうと受けとることはできません。 また、他の相続人が死亡保険金の受取人である場合には、その相続人の固有の財産になるため、自己の権利を主張できるものではないということになります。相続放棄をして受け取った生命保険金(死亡保険)の相続税に注意
- 相続放棄をしても死亡保険金を受け取った場合には相続税が課されるので注意をする
相続放棄をした方が保険金を受けとった場合に必要な注意点はどのようなものでしょうか。
保険金を受け取った場合には、みなし相続財産として、相続税の申告が必要になります。
相続税の課税に注意
相続放棄をしても保険金を受け取った方が注意すべき事として、相続税の関係があります。 保険金は、相続による財産の移転ではないため、規制がまったくないと財産を全て保険として相続に代えて相続人に受け取らせることができてしまいます。
そうすると相続税での課税ができなくなってしまいます。 このように相続税の課税という観点からは死亡保険金を課税の対象にする必要があります。そのため死亡保険金は相続財産とみなされることになります(みなし相続財産)。
相続税は基礎控除というものがあり、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されることになり、この額を超えない限り相続税の課税はありません。
この基礎控除の適用について相続放棄をした方も相続人としてカウントされることになっています。 また、生命保険に関しての非課税の制度である「500万円×法定相続人の数」においても相続放棄をした方も相続人としてカウントされることになっています。 しかし、相続放棄をした人が生命保険金(死亡保険金)の受取人となっている場合、前述のとおり、生命保険金(死亡保険金)を受け取ることはでき、相続税の基礎控除の適用を受けますが、生命保険に関して、非課税枠の適用を受けることはできません。 生命保険金(死亡保険金)について基礎控除を超える金額を受け取る場合には、計算方法に注意が必要です。
計算の具体例
例えば、相続人が3人いた場合、生命保険の非課税枠は 500万円✕(法定相続人の数3人)=1,500万円が生命保険金の非課税枠となります。生命保険金は相続税ではなく贈与税・所得税がかる場合に注意
- 契約の形態によっては相続税ではなく贈与税や所得税がかかる場合もある
- どの税金を支払うのが良いかは税理士と確認しながら進めるべき
生命保険金を受けとった方が贈与税や所得税がかかる場合もあると聞いたのですが
おっしゃる通りで契約の形態によっては贈与税や所得税がかかる場合もあります。
ここまで、生命保険金を受け取った方は、相続税の対象となる前提でお話してきました。 しかし、この前提は、
・相続人が受取人である
2.の場合は、例えば父が亡くなったときに備えて子どもが契約して掛け金を支払っている場合です。 特に贈与税がかかる場合には、税率が高くなることが想定されます。 相続対策に生命保険を使う場合には、どのような契約形態にしておくと目的達成ができるか、課税がどうなるかなどは、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
生命保険金(死亡保険金)以外にも相続放棄をしても受け取れるもの
- 生命保険金(死亡保険金)以外にも相続放棄をしても受け取れるもの
- 相続の仕組みとは異なる理由で金銭を受け取ることができるもの
生命保険金は相続ではない契約に基づいて受け取れるということは他にも受け取れるものはありありそうですね。
おっしゃる通りです。生命保険金以外にも相続放棄をしても受け取れるものについて確認しましょう。
生命保険金は相続放棄をしても、保険契約という別の仕組みがあるので金銭を受け取れるものでした。 同じように、相続放棄をして相続人ではなくなっても、請求できるものがあります。
死亡退職金
被相続人が会社員で死亡退職金の定めがあった場合、死亡退職金が支払われます。 死亡退職金は被相続人と企業との契約に基づいて支払われるもので、相続とは直接に関係しません。 そのため受取人が相続放棄をしていても、死亡退職金は支払われます。遺族年金
国民年金または厚生年金保険の被保険者、または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金が遺族年金です。 この遺族年金は、相続財産として受け取るわけではなく、遺族年金を受け取ることができる方に給付される権利として存在します。 そのため、相続放棄をしても遺族年金を受け取ることは可能です。未支給年金
本人が受け取っていない年金がある場合、未支給年金として遺族が受け取ることが可能です。 この未支給年金、本来被相続人が受け取ることができるものを遺族に支給するものなので、一見、相続財産のように思えるのですが、遺族が受け取ることができる権利で相続財産ではないとされています。相続トラブルにならないための「生命保険金(死亡保険)の活用方法」
- 相続トラブルにならないための生命保険の活用方法
- 現金が必要となる方がいる場合に生命保険金の受取人とすることでトラブルを回避する
生命保険は相続対策に利用できるという認識なのですが、どのように利用できるのでしょうか。
現預金が必要となる方に現預金を残す選択肢を増やすことが可能となります。
生命保険は相続トラブルを避けるためにどのような利用ができるのでしょうか。 例えば遺産の価値の大部分が不動産の価格であるような、遺産分割で偏りが出そうな場合や、やむなく遺留分を侵害することが避けられない場合に遺留分侵害額請求に対応するなど、相続において現預金が必要となる方が発生することがあります。
このような場合に現金・預貯金・現預金に変えやすいものなどを利用することになるのですが、これらの相続財産と同様に生命保険金を利用することが可能です。 金銭を受け取ることができればトラブルが避けられそうな場合で、手元の金銭だけでは不安である場合には積極的に利用を検討してみましょう。
まとめ
このページでは、相続放棄をした方が保険金を受け取ることができるかについてお伝えしました。 保険と相続は法律上の制度が別なので、相続放棄をした方が受取人である場合には、相続放棄をしても保険金を受け取ることができます。 しかし、その場合には相続税との関係が複雑になりますので、気になった場合には専門家に相談をしながら進めるようにしましょう。
- 亡くなった親に借金があるかもしれない
- 親と疎遠のため、財産を相続する気がない
- 相続税が払えないため家などの不動産を相続したくない
- 自営業を引き継ぎたいが借金がある
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