- 遺言および公正証書遺言とはどのようなものか
- 公正証書遺言のメリット・デメリット
- 公正証書遺言を作成する場合の費用や注意点
【Cross Talk】公正証書遺言ってどんなもの?よく使われているの?
遺言の作成を検討しているのですが、ホームページ等で調べていると、作成が推奨されているのはほとんどが「公正証書遺言」ですね。公正証書遺言ってどんなものなのでしょうか?
公正証書遺言とは遺言の方式のひとつです。公証人がいる公証役場という場所で、公正証書によって遺言を作成するため、遺言に関する争いを少なくすることができ、相続発生後の手続きもスムーズに進められることが特徴です。争いを無くすために遺言を作成する方がほとんどなので、この形式が実務上よく使われています。
なるほど!詳しく教えてください。
遺言は民法の規定に従った形で作成しないと効力が生じません。
民法にはいくつかの遺言の方式が規定されているのですが、実務上よく使われるのが公正証書遺言です。公証役場で公証人が作成するため遺言が無効となりにくく、相続による争いも避けられる可能性が高くなります。
遺言の3つの種類と違い
- 遺言の種類
遺言には、公正証書遺言以外にも種類があるんですか?
はい、あります。遺言の種類についての概要を確認しておきましょう。
遺言には次の3つの種類があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言書の全文を自署することで行う遺言です。
自分一人で作成することが可能で、証人が不要であり、作成に費用がかからないというメリットがある一方、専門家などに相談しないで作成されることが多く、要式を満たさないものとして無効になることがあります。
また、誰にも見つからないで破棄されてしまったり、家族に見つかって破棄されたり改ざんされたりするおそれがあるなどのデメリットがあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人の面前で遺言の趣旨を口授し、公証人が遺言書を作成して遺言者・証人に読み聞かせて行う遺言をいいます。
公証制度を担う法律の専門家である公証人によって作成されるので、信用性が担保され、遺言の検認が不要となるメリットがある一方で、公証役場に行って作成しなければならない負担や、証人や公証人に支払う手数料が発生するというデメリットがあります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が遺言を作成して、公証人と証人の面前で遺言書に封をして行う遺言をいいます。
証人にも遺言書の内容は秘密にしておけるメリットがある一方で、遺言書の内容を専門家が必ずチェックするわけではないので、無効になる可能性が高いというデメリットがあります。
公正証書遺言にかかる費用について
- 公正証書遺言作成にかかる費用
公正証書遺言を作成するにはどのくらい費用がかかるのでしょうか。
遺産の内容によって異なりますので詳しく見てみましょう。
公証役場に払う手数料
公正証書遺言にかかる費用としてはまず公証役場への手数料があります。手数料は次のとおりです。遺言で取り扱う財産の価格 | 手数料 |
---|---|
100万円まで | 5,000円 |
100万円を超えて200万円まで | 7,000円 |
200万円を超えて500万円まで | 11,000円 |
500万円を超えて1,000万円まで | 17,000円 |
1,000万円を超えて3,000万円まで | 23,000円 |
3,000万円を超えて5,000万円まで | 29,000円 |
5,000万円を超えて1億円まで | 43,000円 |
1億円を超えて3億円まで | 5,000万円ごとに13,000円がプラス |
3億円を超えて10億円まで | 5,000万円ごとに11,000円がプラス |
10億円を超える部分 | 5,000万円ごとに8,000円がプラス |
弁護士に支払う費用
遺言の作成を弁護士に依頼する場合には、一般的には、約100,000~200,000円程度、遺言の内容が複雑である場合にはそれ以上の弁護士費用がかかることもあります。証人に支払う費用
証人を用意してもらう場合には一人あたり10,000円程度の費用がかかります。自分たちで用意できる場合(親戚になってもらうなど)には、費用はかかりません。
書類収集
遺言書を作成する際に、添付書類を提出します。具体的には戸籍謄本や不動産登記簿謄本、印鑑登録証明書などです。
これらの取得費用は、遺産の内容や相続人の数によって異なりますが、10,000~20,000円程度です。
作成時に必要な書類
- 相続関係を確認するための戸籍謄本等
- 遺産に関する書類
- 公証役場での手続きに必要な書類
公正証書遺言を作成するときに必要な書類にはどのような書類がありますか?
大きく分けて、相続関係を確認するための戸籍謄本などの書類・遺産に関する書類・公証役場での手続きに必要な書類の3つがあります。
相続関係を確認するための戸籍謄本等
相続関係を確認するための書類として戸籍謄本が必要です。
遺言の中で、相続財産を渡す相手を長男・次男・長女などと指定することがあるため、被相続人との関係を確認する際に必要となります。
「戸籍謄本」とは実務上戸籍に関する書類をまとめてこのように呼んでおり、実際に取得するのは、戸籍謄本のほか、戸籍全部事項証明書・除籍謄本・改正原戸籍謄本なども含まれます。 戸籍謄本の取得については「相続したときに必要な戸籍謄本の取り方・見方・提出先について解説!」で詳しくお伝えしていますので、参考にしてください。 受遺者がいる場合には、受遺者の特定のために生年月日・住所を記載するので、受遺者の住民票も必要となります。
遺産に関する書類
公正証書遺言の中で遺産を特定したり、公証人に対する手数料を計算したりするために、遺産に関する書類が必要です。
遺産に関する書類 | 概要 |
---|---|
不動産登記事項証明書(不動産登記簿) | 不動産の特定のために利用する |
固定資産税評価証明書 | 公証人への報酬の決定のために用いる。固定資産税納税通知書の写しでも可 |
その他の遺産 | メモでも良いが、通帳・車検証・有価証券などコピーを用意しておくと正確 |
公証役場での手続きに必要な書類
公証役場での手続きに必要な書類として次のようなものが必要です。書類 | 概要 |
---|---|
遺言者本人の身分証明書 |
|
証人に関するメモ |
|
公正証書遺言作成の要件と手順
- 公正証書遺言作成のための要件
- 実際には事前に公証人と打ち合わせをする
- 公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言を作成することができる要件のようなものはあるんですか?
遺言を作成するための手続的な要件や作成の流れを確認しましょう。
公正証書遺言作成の要件
公正証書遺言は、遺言する方式のひとつで、遺言書を公正証書として作成する方式を指します。公正証書遺言は次のように作成することになっています。
- 証人2人以上の立会い
- 遺言する人が公証人に対して遺言の内容を口授
- 公証人が遺言者の口授を筆記して遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させる
- 遺言者及び証人名が筆記の正確なことを確認したうえで、各自署名捺印をする
- 最後に公証人が、公正証書遺言の方式に従って作成されたものである旨を記載して署名捺印する
以上が法律の規定です。
なお、証人2名には、欠格事由(証人になることができない事由)がないことが必要です。
また、前提として、遺言者が遺言をすることができる遺言能力を有していることが必要です。
遺言能力については「遺言書は何歳から何歳まで書ける?年齢に関する制限を確認」で詳しくお伝えしていますので参考にしてください。
以上の手続きは公証役場で形式的に行われますが、実際には事前にどのような遺言書を作成するか、公証人とやりとりをしながら進めていくことが多いです。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書作成の流れは主に次のようになります
- 公証人と事前に内容のすり合わせを行う
- 公正証書遺言作成の日時と証人を選定する
- 作成当日
まず、事前に公証人と公正証書遺言にする内容のすり合わせを行います。 遺言者の希望がどのようなものかと、遺言書作成に必要な情報について、公証人と事前にすり合わせを行います。 遺言書作成のために必要な情報として、不動産登記事項証明書や遺産に関するメモはこの段階で公証人に送付することになります。
弁護士に依頼すれば、遺言内容の希望などを取りまとめて公証人とすり合わせをしてくれるので、手続きがスムーズになります。
書面の内容が固まると、作成期日と証人を決めます。
作成期日には上記の民法に規定した手続要件をみたすために、遺言者・公証人・証人が一同に会する必要があります。
そのため、公証役場に来てもらう期日(公証人が出張する際には出張先に集まる期日)を決めます。
証人が決まっていない場合には公証役場から推薦してもらえます。
弁護士に依頼する場合には、弁護士と同じ事務所の弁護士や事務員など、守秘義務がある人を選任してもらえます。
公正証書遺言作成の際の注意点
- 遺留分侵害に注意をする
- 公正証書遺言が無効になる場合を知っておく
公正証書遺言を作成する際、注意すべきことはありますか?
遺留分侵害に注意すること、公正証書遺言を作成しても無効になる場合があることを知っておきましょう。
公正証書遺言作成時の注意点について確認しましょう。
遺留分侵害に注意をする
例えば、妻子がいるにも関わらず、愛人に遺産の全部を譲り渡す、という内容の遺言をした場合、方式さえ満たしていれば遺言の効力は認められます。
しかしこの場合、妻子が相続人として最低限保証される権利である遺留分を侵害することになります。
もし妻子が遺留分侵害を原因として遺留分侵害額請求を行使すると、遺贈を受けた人に対して遺留分相当の金銭の支払いを求める事ができます。
また、長男と長女がいる場合に、長女は結婚して家の人間ではなくなったとして、相続分をなくそうと考える方もいます。
しかし、子どもである以上は相続分を保有しています。そのため、子どもの一人を除くような遺言をすると、遺留分を侵害しかねません。
遺留分を侵害する遺言を作成することも可能ですが、その場合には遺留分侵害額請求権を行使されたときに支払いをすることができる金銭をしっかり用意しておくなどの対策をとる必要があります。
公正証書遺言でも無効になる場合がある
遺言をするには、公正証書遺言の要件を満たす必要がありますので、公正証書遺言の方式に背くようなことがあると無効になります。
例えば、法律上証人になることができないとされている人が証人であったというような場合です。
ただし、このような場合はあまり起きません。 問題となるのは、遺言をするために必要な遺言能力です。
遺言も対象物を処分する意思表示ではあるので、意思能力(自分の行為の結果を認識し、判断することができる能力)が必要となります。 遺言の作成にあたっては、遺言能力といわれています。
そのため、認知症にかかるなどして、意思表示をすることができる状況にない人は、公正証書遺言も利用することができません。
公証人との面談で遺言能力の有無の確認はされるのですが、相槌程度の返事をすることができて、付き添われている親族に誘導されるような形で遺言の作成が進んだような場合には、公証人が遺言能力を正確に判断できない場合があります。
公正証書遺言のメリット・デメリット
- 公正証書遺言のメリット
- 公正証書遺言のデメリット
遺言には公正証書以外にもいろいろありますよね?この方式が一番使われているということは、それなりにメリットがあるということでしょうか?またデメリットはありますか?
公証人と作成した遺言は、遺言者の手元に加え公証役場にも保管されているので、偽造のおそれがなく、遺言書の検認が不要であること、などもメリットとして挙げられます。 一方で、手続が複雑で費用がかかる、場合によっては秘密に作成できないなどのデメリットもあります。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットを確認しましょう。
まず公正証書遺言は、遺言者の意見を踏まえて公証人が作成します。作成された遺言書は遺言者が正本・謄本として持っている他、公証役場でも保管してあるので、偽造されるおそれが非常に低いといえます。
また公正証書遺言は、他の遺言書と違って、裁判所での検認という手続きが不要です。
裁判所での検認には長いと2ヶ月程度待つこともあるので、スムーズな遺言執行ができます。
自筆証書遺言は遺言の作成を秘密にしておくことが可能であるため、遺言書を作成したことに周囲の人間が誰も気が付かないというデメリットがありますが、公正証書遺言は証人2名の立会いも必要になるので、遺言の存在に誰も気が付かないという可能性は一定程度減ります。
公正証書遺言のデメリット
一方デメリットとしては、公証役場での手続きが必要となるなど、自筆証書遺言に比べて手続きが複雑であることが挙げられます。
また、公証役場に支払う手数料などの費用がかかります。
さらに、証人2名が必要で、かつ遺言の内容を証人にも知られるため、遺言をしたことやその内容を知っている人がいる点で、完全に秘密で作成することは難しくなります。
もっとも、弁護士に依頼した場合、証人2名を守秘義務が課せられている弁護士や司法書士、税理士などに頼むこともできるため、遺言の内容が外部に漏れるおそれは少なくなります。
まとめ
このページでは、公正証書遺言についてお伝えしてきました。公正証書として作成されることで高い信頼が得られ、紛争予防に利用できる公正証書遺言で、確実な相続を目指しましょう。 さらに詳しく気になる方は、トラブルをより回避するためにも、法律の専門家である弁護士をおすすめします。
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