- ペットは所有権などの主体にならない
- 自分の死後に自分の財産をペットのために使ってもらうような方法によってペットが安泰に!
- ペットを預かったら相続放棄ができない?
【Cross Talk】ペットに遺産を残したい!相続でなんとかできませんか?
私の相続についての相談なのですが、病気で長くないだろうと診断されたので身の回りの整理をしているところ、飼ったばかりの子猫がいます。家族同然なので私が亡くなった後もきちんと世話をしてもらえるようにしたいのですが、相続財産をペットにあげる…ということはできませんか?
ペットが相続財産の所有権などの主体になることはないのですが、負担付遺贈や信託などによってペットの面倒を他の人に見てもらうようにしておくことが可能です。
相続など自分の死後の事について考えた場合に財産・相続人などとともに、自分のペットについても考えるでしょう。 法律上は物という扱いになるペットですが、実際には家族同然ですので、自分の死後にきちんと取り扱ってもらう事を望むでしょう。 端的にペットを相続人にすることは後述のようにできないのですが、そのための方法はありますので把握しておきましょう。またペットを物として相続をする際の注意点についても把握をしておきましょう。
ペットに遺産を残すことができるか?
- ペットがお金や不動産などの持ち主になることはできない
- 自分の死後にペットの面倒を見てもらう方法について知る
まず、自分の死後にペットが暮らしていくために、ペットに遺産を相続させるのが良いと思うのですができないでしょうか?
ペットに相続をさせることはできないのですが、受遺者が遺産をもらうための条件をペットの面倒を見てもらうこととしたり、信託を利用することによって死後にペットの面倒を見てもらうという事が可能になります。
まず、自分の死後にペットがきちんと暮らしていくための方法を考えましょう。
ペットは相続人・遺贈を受ける者にはならない
方法の一つにペットに遺産を残すことを内容とする遺言を作成することによってペット自身を相続人や、受遺者(遺贈を受け取る人のこと)とすることを考える方も多いと思います。しかし、相続人となるものは民法で定められているところ、ペットは相続人とは定められていません。また、遺産である銀行預金や不動産の所有者になることができる地位である「権利能力者」を有するには人であることが必要であり(唯一の例外は胎児)、ペットは人ではないので所有権などの帰属主体となる権利能力を有さない以上、遺贈の対象にもなりません。
ペットに遺産を残す方法である負担付遺贈
ペットが遺産の所有権者にならない以上、自分の死後にペットの面倒を見てもらう方法としては、「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」をする方法が考えられます。 遺贈というのは遺言によって死後に財産を譲ることです。負担付というのは、遺贈をするにあたって特定の条件をつけることをいい、この条件としてペットが死ぬまではきちんと面倒を看る(つまり面倒を看なかったら遺贈は無かったことにする)とするものです。 遺言は民法に所定の形式で行われることになり、実務上は公正証書遺言か自筆証書遺言を利用して行うことになります。
公正証書遺言は、公正証書という書類によって遺言を残す方法で、公証役場で作成をするのが基本になります。 自筆証書遺言はその名のとおり、自筆で記載して作成する遺言をいいます。 遺贈を受けた人は、その遺贈を受け取ることによって、ペットの世話をする義務が発生するので、自分の死後にペットの世話を法律的な義務として任せることができます。
ペットに遺産を残す方法である負担付死因贈与
他の方法としては負担付死因贈与(ふたんつきしいんぞうよ)があります。 負担付の意味は遺贈と同様にペットの面倒を看るという条件をきちんと履行することです。 贈与というのは、一方から他方に財産を無償で譲り渡すことで、死因贈与というのは死亡を条件として譲り渡すことをいいます。贈与ですので遺贈と違って遺言書の作成などは必要とされません。 これによっても、自分の死後に受贈者に法律的な義務としてペットの世話を任せることができるようになります。
ペットに遺産を残す方法である信託
最後に信託という方法によって遺産でペットの世話をしてもらう方法があります。 ペットの世話をお願いしたい人(委託者・受益者)が、ペットの世話をする人と信託契約を締結して、財産を信託財産として、受託者がペットの世話に利用するものです。受託者は信託財産を信託契約で結んだ範囲でしか利用できなくなりますので、信託契約でペットの世話にために利用するという契約をしておきます。 この契約は本人が死亡した後でも有効であるため、死後もペットは面倒を見てもらえることになります。
ペットは相続財産?ペットを引き取ったら相続放棄できない?
- ペットは相続の中では「物」として相続財産に含まれる。
- ペットの世話を看ることになっても相続放棄ができなくなるようなことはない。
相続をしたときペットはどのような扱いになるのですか?
民法上は「物」として相続財産に含まれることになります。
ペットがいる人の相続においてペットはどのような取り扱いになるのかを確認しましょう。
ペットは相続財産になり得る
まず、ペットは法律上「物」として扱われます。 所有権者である飼い主が亡くなって相続が発生した場合には、相続人が受け継ぐことになります。ペットといっても雑種から血統書がつくようなものまであり、そのペット自体に価値がつくような場合もあります。 その場合には、遺産分割協議などで、所有権がだれに所属するかをきちんと話し合う、遺産として計算する、相続税申告において遺産に含めて計上する、といった処理が必要になります。
ペットを引き取ったら単純承認したことになり相続放棄できなくなる可能性はある
遺産になるということは、その取扱い次第では相続放棄ができなくなる可能性があることは知っておきましょう。相続放棄は単純承認をしたような場合には利用できなくなるのですが、遺産を処分したような場合には単純承認したことになってしまうことになっています。 そのため、価値のあるペットを第三者に売却するなどした場合には、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄はできなくなります。
ペットに餌をあげても単純承認にはならず相続放棄できる
当然ですが、一時的にでもペットを預かっている人は、餌や水をきちんとあげなければペットは死んでしまいます。 この行為は、遺産の保存行為にあたり(民法第921条1号但し書き)、処分とみなされることはありません。そして、相続放棄をした後には、相続人や相続財産管理人など、ペットを引き渡すべき人に渡すまで、きちんと餌や水をあげるなど、きちんとした管理をする必要があります。
まとめ
このページでは、死後のペットがきちんと暮らしていけるための方法と、相続におけるペットの取り扱いを中心に、相続におけるペットの取り扱いについてお伝えしてきました。 ペットに遺産を相続させることはできませんが、死後にペットの世話をしてもらう方法は遺言など存在します。 その方法や、相続した財産としてのペットの取り扱いに困った時には、相続の専門家である弁護士に相談するようにしましょう。
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