- 遺言がある場合に家庭裁判所が関わるのは遺言の検認と遺贈の放棄
- 遺言の無効確認は地方裁判所に提訴する
- その他遺言が関わる手続きをする場所について
【Cross Talk】遺言の手続きは家庭裁判所でいいですか?
先日父が亡くなり、これから相続の手続きをします。遺言書があるのですが、この場合の手続きって家庭裁判所でいいんでしょうか?
遺言書の種類と手続きによって違うのですが、家庭裁判所が関わるのは、自筆証書遺言や秘密証書遺言があった場合の検認と、包括遺贈を受ける受遺者の放棄です。その他の公的な手続きをする場所と併せて確認しましょうか。
お願いします。
遺言がある場合の手続きというと家庭裁判所と考える方も多いと思います。しかし、遺言に関するすべての手続きが家庭裁判所で行われるわけではありません。 家庭裁判所で行うのは遺言の検認と包括遺贈の場合の遺贈の放棄です。他にも遺言に関する公的な手続きはありますが、それぞれどこでどのような手続きあるかも併せてみてみましょう。
自筆証書遺言書がある場合の検認について
- 自筆証書遺言および秘密証書遺言の遺言書は家庭裁判所の検認が必要
- どの地域の家庭裁判所に申し立てをすればよいかの管轄の問題
遺言はどうやら自筆証書遺言にあたるようです。この場合の家庭裁判所での手続きはどのようなものですか?
自筆証書遺言と秘密証書遺言の封のしてある遺言書の開封については、検認の手続きが必要になります。家庭裁判所に提出をして記載内容や形状の確認・確定をします。ただし、この手続きは、遺言を有効と判断する手続きではありません。
まず、自筆証書遺言・秘密証書遺言がある場合の検認の手続きについて確認しましょう。
遺言書の検認についての基礎知識
遺言に関する規定が置かれている民法では、公正証書遺言以外の遺言書を保管している場合に、相続が開始したことを知った後、遅滞なく、家庭裁判所にその遺言書を提出して検認を請求しなければならないとされています(民法1004条1項2項)。 遺言書の検認の手続きとは、遺言に書いている内容・形状を確認するための手続きをいい、検認以後に改ざんなどをしないようにするためのものです。そのため、公正証書遺言の場合には、公証人という公的な役職にある人が、遺言をする人の嘱託に基づいて作成し、その原本は公証役場で保管されているので、改ざんのおそれがなく、検認は不要とされています。また、2020年7月10日からはじまる自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管されている遺言書についても改ざんのおそれがないので、同様に検認は不要となります。
自筆証書遺言書保管制度については、「【令和2年7月10日スタート】自筆証書遺言書保管制度ってどんな制度?」こちらのページで詳しくお伝えしておりますので、参照してください。
家庭裁判所の管轄の探し方
家庭裁判所でする、といっても家庭裁判所は全国にあります。 遺言の検認を担当する裁判所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となっています。例えば、被相続人が東京都世田谷区で亡くなった場合、その相続人が東京都世田谷区以外の場所に住んでいる場合でも、東京都世田谷区を管轄する東京家庭裁判所に申し立てをすることになります。どの家庭裁判所が担当しているかを調べるためには、 (裁判所|裁判所の管轄区域)こちらで探すことができます。
検認の流れ
検認の主な流れを見てみましょう。 検認は遺言書の保管者が検認の申し立てをすることによって開始します。 申し立てがされた後は、相続人に検認をする期日を通知します。期日に相続人などが集まって遺言書の確認をします。検認証明書の発行を申請して、検認がすんだ遺言書と一緒に手続きに使用することになります。
遺贈の放棄について
- 遺贈を受けた人は放棄が可能
- 包括遺贈は相続放棄と同じ手続きで行うので家庭裁判所で行う
遺贈の放棄は家庭裁判所で行うとのことなのですが、教えていただけますか?
遺言で遺贈を受けた場合でも、目的物が要らない場合や、相続人との争いに巻き込まれたくない、という場合もあります。このような場合には遺贈を放棄することができます。遺贈の方法として、割合を指定してされる包括遺贈については、相続放棄と同様に家庭裁判所に申述を行うことになっています。
家庭裁判所に対して行う遺贈の放棄について確認しましょう。
遺贈とは
遺贈とは、遺言によって財産を譲り渡すことをいいます。 たとえば、孫は代襲相続が発生していない限り相続人ではありませんが、遺言で遺産の受け取りを孫に指定するような行為をいいます。 遺贈には、特定の財産についてする特定遺贈と(例:孫にA不動産を遺贈する)、割合を示してする包括遺贈(例:孫に遺産の1/8を遺贈する)という方法があります。包括遺贈の放棄については家庭裁判所に対して申述する
この遺贈ですが、たとえば特定遺贈として全く必要のない不動産を遺贈されても、固定資産税や維持費がかかるだけで、かえって受遺者に負担となることがあります。また、包括遺贈の場合には、相続人と協議をする必要があり、場合によっては争いに巻き込まれることになってしまうことも考えられます。 これらの不都合を受遺者に判断で回避できるように、遺贈については放棄することが認められています。遺贈のうち包括遺贈の放棄は、相続放棄と同じ方法ですることになっており、相続放棄は相続があったことを知ってから3カ月以内に、家庭裁判所に対して申述しなければならないとされています(民法990条、938条、915条1項本文)。また、その際の家庭裁判所は被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所となりますので、管轄の裁判所を探す方法も同じく上述した裁判所のホームページで探します。
一方、特定遺贈の放棄は、家庭裁判所への申述を行う必要はなく、遺言執行者や他の相続人に対してその特定遺贈の放棄をする旨を伝えれば足り、期限もありません(民法986条1項)。
遺贈の放棄については、「遺贈の放棄はできるの?期限はあるの?相続放棄との違いは?」こちらのページで詳しく解説しているので、併せて参照してください。
家庭裁判所でやるわけではない手続き
- 遺言書について家庭裁判所では行わない手続きについて
ほかにも遺言書については手続きがありそうですが、家庭裁判所では行わないのですか?たとえば遺言の無効を争うような場合とかどうでしょうか。
遺言の無効は地方裁判所の管轄になります。遺言についての他の手続きについてどこで手続きをするかを確認しましょう。
遺言書がある場合には他にも手続きがあります。 その手続きがどこで行われるかについて見てみましょう。
遺言の無効確認
まず、遺言が無効であると主張したいような場合には、遺言無効確認の訴えを地方裁判所にすることになります。 遺言無効確認については調停前置といって、事前に調停手続きを経なければいけない事件とされています(家事事件手続法257条、244条)。もっとも、調停はお互いの妥協点を探ることが目的であるのですが、遺言が有効か無効かで争っている場合に妥協点が見つかることはほとんどありません。 そこで、調停をしても解決がほとんど困難であることを理由に、いきなり地方裁判所に遺言無効確認の訴えを起こすこともあります。
公正証書遺言に関するもの
公正証書遺言がされている場合に、保管していた遺言書を紛失するような場合があります。 公正証書遺言の原本は公証役場で保管されており、遺言者などが持っているものは謄本ですので、紛失してしまったような場合には再発行してもらえます。 この手続きは遺言書を作成した公証役場で行います。自筆証書遺言に関するもの
2020年7月10日より、法務局で自筆証書遺言書保管制度が始まります。 自筆証書遺言書があるかどうかの確認や、その取り寄せについては、法務局で行うことになります。不動産登記
遺言によって不動産を手に入れた人は、公正証書遺言や検認の済んだ自筆証書遺言・秘密証書遺言を利用して不動産の登記を行います。 不動産の登記の手続きは法務局で行います。まとめ
このページでは、遺言・遺言書についての手続きの中で家庭裁判所を使うもの・使わないもの、という基準でどのような手続きがあるのかについてお伝えしてきました。 手続きについて心配なことがある場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
- 遺言書が無効にならないか不安がある
- 遺産相続のトラブルを未然に防ぎたい
- 独身なので、遺言の執行までお願いしたい
- 遺言書を正しく作成できるかに不安がある
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