- 争族が起こる原因
- 争族対策の方法
- 争族対策をするとどのようなメリットがあるか
【Cross Talk】自分の死後に遺族が争わないようにするためには何が必要?
私も高齢になってきたので、終活をしなければと考えております。一番気がかりなのは、親族が私の相続をきっかけに争うようなことがあったら…ということです。どうしたら争いなく相続を行えますか?
生前に遺言書を書いておくことが有効です。また、法律の規定だけでなく、生命保険を活用するなどの対策もあります。詳しくは弁護士に相談してみてください。
そうなのですね!相談に乗ってもらってもよいですか?
終活をしている方の中には、相続人が複数いて自分の死後に争う、いわゆる「争族」にならないかを心配する方も多いと思います。どのようなことがあると争族になりやすいのかを知っておくと、対策方法も立てやすいといえます。終活でよく名前を聞くエンディングノートでは法的な効力が発生しないなど、注意点もあるので、このページで争族対策の基本的な事項をみていきましょう。
なぜ争族対策が必要なのか?
- 年間約13,000件も相続に関する争いが起きている
- 場合によっては相続税が高額になるなどの不利益もある
家族が争わないように争族対策は必要という意識はあるのですが、実際必要なのでしょうか?
相続した不動産を売却や賃貸に出す場合や、相続税が通常の相続よりも高額になる場合は、争族が起こりやすいので、事前に弁護士と対策を考えることをお勧めします。
終活の一つとして争族対策が必要と言われています。その理由を掘り下げてみましょう。
相続ではなく争族とは?
先ほどから出てきている「争族」という単語に、違和感を覚える方も居るのではないでしょうか。争族という単語は、元々の相続という言葉について、相続で争いが生じていることを示す造語です。 相続がはじまると、法律の規定で法定相続分が決められていて、その通りに遺産を分割していくだけ、というイメージの方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、裁判所に関するデータを取り扱う司法統計によりますと、平成30年で年間13、000件近くの遺産分割事件が終了したと発表されています。 法律で規定があるにもかかわらず、実際にはこれだけの件数の争いが発生しているという事を知っておきましょう。
争族が起こる原因
ではなぜ「争族」は起きてしまうのでしょうか。相続の手続きなどは法律上の規定に従って進めればよいと思われがちですが、相続分などの詳細に関しては当事者間の話し合いをもって進めていくことになります。 例えば、父、母、子2人の家族で、父が亡くなり母、子2人で遺産を相続したとします。 この場合、法律上の規定としては母が遺産の1/2・子がそれぞれ1/4の割合で相続する、となっています。
父の遺産として、1,800万円の住宅と150万円の預金、50万円の自動車があるとします。 母と長男が住宅に住み続けるので、母・長男が住宅とそこにある自動車を相続し、次男には150万円の預金をあげるとします。この場合、住宅を相続した母と長男からすれば、相続したといっても住宅と自動車をそのまま譲り受けたのみで、資産が増えたという実感はないかもしれませんが、実際150万円の預金をもらった次男は全体の相続分の約1/10しか相続できておらず、不服を抱いて争うという可能性があります。
争族が起こったらどうなる?
「争族」が起こることでどのような問題が発生するのでしょうか。 まず、当事者である家族が、これを機に疎遠になる可能性があります。 また、遺産分割を進めるためには相続人全員が納得した上で、遺産分割協議書に押印をする必要があります。争いが終わらずに遺産分割協議がいつまでも終わらないと、空き家になった家の売却や賃貸ができなくなります。遺産が多く相続税を申告・納付する必要がある際も、遺産分割の決定が長引く場合には、遺産分割が完了する前に法定相続分に従って相続税の申告・納付を行い、遺産分割後に更正申告を行うなどの不利益を被ることにもなります。
争族対策として何をやっておくべきか?
- 遺言を残しておくのが最大の対策
- エンディングノートは単なるお知らせだと考えておく
- 生命保険の活用ができるケースも
争族対策として、どのような対策がありますか?
基本的には遺言を残すことが大切です。
争族を回避するための具体的な対策にはどのようなものがあるでしょうか。
遺言書を作成する
争族を回避する最も効力の強いものが遺言です。 法律の規定に基づく相続は、遺言を残していなかった場合に発生するもので、遺言によってどの財産を誰にわたす、という事を指定しておくとその通りに遺産分割をすることになります。ただ、この遺言については、法律の規定に基づいて厳格な要件のもと行われますので注意が必要です。
遺言書の3つの種類を知っておこう
遺言書には様々な種類があるのですが、最も頻度の高い次の3つの遺言の方法を知っておきましょう。 ①公正証書遺言は、遺言を公正証書に残す形で行う遺言で、法律的には遺言者が公証人に伝えて、公証人が作成することになっています。 ②自筆証書遺言は、遺言の内容を自書で作成して行うものです。 最近、遺産が多い場合に、遺産目録についてのみはパソコンで作成してもよいと改正されました。 ③秘密証書遺言は、自分で遺言書を作成して、公証人の面前で封をする方法で、内容を秘密にする遺言です。 専門家や公証人に内容のチェックを受けながら行うことができる公正証書遺言が最もよく使われます。エンディングノートでは遺言の効力が生じない場合がある
終活をしていると、自分について遺族に知ってもらったり、意識がなくなったあと、死後の葬式や遺産の分配について記載しておいたりする「エンディングノート」という存在と出会う方も珍しくありません。 エンディングノートは、争族に活用できるのでしょうか。 まず、遺言として効力を持つためには、法律の厳格な規定にそったものでなければなりません。例えば、市販キットなどで作成した場合、印字された箇所があると、それ以外は手書きで書かれていたとしても、自書に該当せず自筆証書遺言としての効力を持ちません。 エンディングノートに死後の遺産分割について自分の考えや想いなどを記載しておくと、それを見た遺族が想いをくみとり、争いに発展しないという効果は期待できます。 しかし、遺言としての効力が生じるわけではないので、相続分を少なくされた人が絶対にそのまま従わなければならないというものではなく、争いが生じる可能性はあるといえます。
遺留分侵害額請求権には注意が必要
遺言書を作成した場合、「遺留分侵害額請求権」によって争族が起こる可能性があることも知っておきましょう。 「遺留分」というのは、相続において最低限保証されている権利のことで、本来の相続分の1/2を請求することができる権利のことをいいます。 例えば、父が亡くなり母・子2人で遺産を相続した場合、遺産合計が2,000万円ですと、母に1/2=1,000万円、子がそれぞれ1/4=500万円の相続分を受け取ることができます。 例えば、子のうち一人には100万円のみ分配すると遺言上なっていた場合でも、相続分の500万円の半分である250万円が遺留分となり、150万円分については遺留分の侵害をしているという状態になります。この場合、遺言で不利益に扱われた相続人は、他の相続人に対して差額の150万円分の支払いをもとめることができます。この請求権のことを遺留分侵害額請求権と呼んでいます。 公正証書遺言の作成を弁護士や公証人へ依頼した場合は、遺留分の侵害について指摘してくれるので、事前に気づくことができます。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言では、誰にも相談をせずに作成をすると、遺留分を侵害することも珍しくありません。 遺留分侵害額請求が起きた場合にも対応できるよう、遺留分侵害用の現金を別途用意しておくとよいでしょう。
生命保険を利用した争族対策もある
この争族対策に生命保険が利用できることを知っておきましょう。 生命保険で遺族は保険金を受け取りますが、この保険金は保険契約を履行することによって得られた金銭です。そのため、相続財産になりません(※相続税との関係では「みなし相続財産」として相続財産に含みます)。保険契約を結んで支払いをすると遺産は当然に減り、一方で相続の対象にならない金銭を取得することができるということになります。そのため、相続分が少ない相続人を生命保険の受取人にしてあげることで、遺留分侵害額請求をしないようにしましょう、という話し合いが可能となります。 また、他の相続人が生命保険の受取人になっていれば、遺留分侵害額請求をされた場合でも受け取った保険金の中から支払うことができます。生命保険の活用ができるかに関しては、弁護士に相談をしてみてください。
争族対策として遺言をしておくことのメリット
- 遺言により相続分を自由に分配できる
- 相続人以外にも遺産の分配が可能
遺言による争族対策には、自由に財産を分配できること以外にもメリットはありますか?
例えば、孫にも一定程度の財産を残したい場合には、遺言で孫に遺贈することもできます。
遺言を残しておくことでどのようなメリットがあるでしょうか。
自分の思い通りに財産を分配できる
相続は、法定相続分に従って遺産分割を行うものとされているため、遺産をどう分けるかは当事者によって決めることができます。しかし、被相続人が遺言を残しておけば、遺言に沿った遺産分配を行うことが可能です。争いを避けることが可能になる
遺言を残すことで、法的な拘束力をもった遺産分配を事前に決めておくことができるため、仮に相続人が不服であっても、争うことができないということになります。そのため、相続人間の遺産争いを防ぐことができます。相続人の手続きがスムーズになる
遺産分割手続きにおいては、当事者が話し合いをした上で、遺産分割協議書を作成するなど様々な手続きが伴います。特に相続税がかかる場合には、被相続人の死亡後10ヶ月以内に申告・納税しなければならないので、あまり時間がかかる事は避けるべきです。遺言を残しておけば、時間のかかる遺産分割協議を省くことができるので、相続人の負担を減らすことができます。相続人以外にも財産を分配できる
相続をした場合、財産の配分を受けることができるのは、基本的に相続人のみです。 しかし、法律で決められた相続人だけではなく、その他の人に財産を譲りたい場合もあるかもしれません。 一緒に暮らしていて日々お世話になった長男の奥さん、孫といったものが代表的なものです。 相続人以外に財産を譲るよう指定できることを遺贈といい、遺言を残すメリットのひとつといえるでしょう。まとめ
このページでは、相続において「争族」となることを防ぐための方策についてお伝えしました。 相続といっても、相続人の人数・関係性・遺産の内容などによって、対策が違ってきます。 弁護士に相談をして、相続人が揉めて「争族」にならないように、上手な対策を練っていきましょう。
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