- 遺言の概要
- 死因贈与契約の概要
- 遺言と死因贈与契約が抵触する場合の効力
【Cross Talk 】遺言書と死因贈与契約が出てきて混乱しています。
先日父が亡くなりました。父は遺言を遺していたので、そのとおりに手続きをしようとしたところ、父から死因贈与契約で遺産の一部を受け取ることになったという方が現れました。遺言では私が相続することになっていて混乱しています。これはどのように扱えばいいのでしょうか。
日付が新しいものが優先されます。どうしてそうなるのか?法律の規定を確認しましょう。
よろしくお願いします。
人が亡くなったことが条件となって財産が移転する仕組みには、相続・遺言のほかには死因贈与契約というものがあります。 遺言や死因贈与契約を結んでいなければ相続の規定に従って財産の移転を行うのですが、遺言がある場合・死因贈与契約がある場合にはどうなるのか、遺言と死因贈与契約がある場合でその内容が抵触するような場合にはどのような関係になるのかについて確認しましょう。
遺言・死因贈与契約とはそれぞれ何かを確認
- 遺言の概要
- 死因贈与契約の概要
死因贈与契約というものを始めて聞くのですが、どのようなものなのでしょうか。
人の死が原因となって効力が発生する契約のことをいいます。遺言の仕組みと一緒にもう一度確認をしてみましょう。
相続について調べていると相続・遺言・遺贈・生前贈与という言葉を目にするきっかけは多いのですが、死因贈与契約については馴染みがない方も多いと思います。 まず、遺言と死因贈与がどのようなものかを確認しましょう。
遺言とは
遺言というと、日常的な用語としては、死んだ後のことを遺した文書などをいいますが、法律用語としての遺言は、自分の財産の死後についての最終的な意思表示をすることをいいます。 誰と、どのような契約をするかは自由とされており、自分の財産については死後の処分について決めるための仕組みが遺言となっています。相続が発生した場合には、基本的には民法の相続に関する規定が適用されるのですが、遺言がある場合には相続に関する規定に優先して効力が認められることになっています。 このような重要なものなので、遺言をするためには法律上定められた方式で行う必要があり、自筆証書遺言・公正証書遺言などが主に利用されます。
死因贈与契約とは
死因贈与契約とは、贈与者が死ぬことで効力を生じる贈与契約のことをいいます(民法554条)。贈与契約というのは、イメージでいうと一方的にものをあげることだと思うのですが、法律的には対価が釣り合っていないものも贈与にあたります。 すなわち、家を0円で引き渡す場合はもちろん、5,000万円する家を1,000万円で売却する場合も贈与契約にあたりうることになります。
相続に関する調べものをしているとよく「生前贈与」というものを見るのですが、これは通常の贈与契約です。 贈与契約を結んでおいて、自分が死んだときに財産が移転するというのが死因贈与契約となります。 贈与契約は当事者があげます・もらいますという意思表示が合致したら成立することになりますが、通常は契約書を作成します。
遺言と死因贈与契約が抵触した場合の効力は?
- 遺言と死因贈与契約が抵触する場合とは
- 遺言と死因贈与契約が抵触する場合の措置
では、私たちのように遺言と死因贈与契約が抵触するような場合はどうなるのでしょうか。
両方とも有効であるような場合には、日付が後のほうのものが優先されます。
遺言と死因贈与契約が抵触した場合の取り扱いについて確認しましょう。
遺言と死因贈与契約が抵触する場合ってどんな場合?
そもそも遺言と死因贈与契約が抵触する場合というのはどのような場合なのでしょうか。 たとえば、遺言でA不動産を長男に相続させる、としたとしましょう。そのA不動産について別に死因贈与契約で愛人に贈与するとしていたような場合を想定してください。 長男への遺言が優先するのであれば所有権は長男に、愛人への死因贈与契約が優先するのであれば所有権は愛人にうつる、ということになります。この前提として、遺言は自筆証書遺言・公正証書遺言どのような遺言でも有効なものである必要があります。 遺言が無効なのであれば、そもそもどちらが優先という問題ではなく、単純に死因贈与契約しかないと評価することができるからです。 また同様に死因贈与契約について契約書を作成していることが必要です。
もし死因贈与契約の契約書がない場合には、贈与をした事実を確定することができません。 遺族の側から「死因贈与契約なんてなかったんじゃないか?」と主張されると、反論しても証拠がないという状態になります。 以下、遺言は有効であり、死因贈与契約がある場合についてお伝えします。
遺言と死因贈与契約が抵触する場合の効力
遺言と死因贈与契約の内容が抵触する場合には、結論としては日付が新しいものが優先されます。 遺言をした場合に、その後に遺言の内容と抵触するような贈与をおこなった場合には、遺贈を撤回したものとみなす規定があります(民法1023条)。そして、死因贈与契約については、その性質に反しない限り遺言についての規定を準用するものとしており、死因贈与をした後に遺言をしたような場合には上記の条文の適用をして、死因贈与契約を撤回したものと判断することができます。
そのため、まずは遺言書と死因贈与契約の日付が最近に近い方が効力を持ちます。 どの方式の遺言を利用しても、日付はかならず入るようになっており、生前贈与についてもきちんと契約書を作成する場合には日付が入っています。 新しい遺言書・死因贈与契約書を持っている人が遺産に対する権利を受け取ることになります。
なお、第三者への遺言書・死因贈与契約のほうが後である場合でも、相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求権の対象となります。 遺留分は遺言・死因贈与がされた後の関係を前提に発生する権利であるので、両者は別物と判断することが可能だからです。
まとめ
このページでは、遺言と死因贈与が抵触した場合の効力いついてお伝えしてきました。 遺贈と死因贈与というものが法律の形式上、違いがあることを確認しつつ、死因贈与は遺言の規定を準用することになっているので、いずれが先にされたかに関わらず日付の前後によって確定することを確認しましょう。 弁護士に相談しながら適切な解決を目指すようにしてください。
- 遺言書が無効にならないか不安がある
- 遺産相続のトラブルを未然に防ぎたい
- 独身なので、遺言の執行までお願いしたい
- 遺言書を正しく作成できるかに不安がある
無料
この記事の監修者
最新の投稿
- 2024.11.05遺言書作成・執行遺言書の種類別にどのような費用がかかるかを解説
- 2024.10.25相続全般寄与分と遺留分は関係する?弁護士が解説!
- 2024.10.25遺産分割協議遺贈を受けた方も遺産分割協議に参加する必要がある?ケースに応じて解説
- 2024.09.20遺産分割協議遺産分割において立替金はどのように処理されるか