- 一人にすべて相続をさせたいケース
- 遺言で一人にすべて相続させるとする場合のリスク
- 遺言で一人にすべて相続させる場合の対応策
【Cross Talk 】すべての遺産を一人に相続させたいのですが…
私の相続についての対策を考えています。私は自営業者で、妻・同居で店の跡取りの長男・家を出た長女が相続人となります。 自営業の店は長男が跡取りになるので、長男一人で相続をしてもらいたいのですが、この旨を遺言に記載した場合どのような問題があるでしょうか。
奥様と長女さんも相続人になるので、遺留分を侵害する遺言になります。遺留分侵害額請求を起こされる可能性はありますので、必要な対策を講じましょう。
法律の規定に従うと共同相続となる場合でも、何らかの理由で一人の相続人にすべての遺産を相続させたいという場合もあります。 遺言で一人がすべて相続をすることも可能なのですが、当然ながらそれは不公平ということで、法律上も遺留分侵害額請求の対象になるなど争いが生じる場合もあります。一人にすべてを相続させる場合の注意点や対策について確認しましょう。
遺言で一人に相続をさせるケース
- 遺言で一人に相続をさせるケースについて
跡取りに相続させたいという理由以外にも遺言をして一人に相続をさせるケースはあるのでしょうか。
夫婦に子がいない場合や、他の相続人が信用できない場合など様々です。いくつか例を見てみましょう。
共同相続人が数名いるにも拘らず、一人に相続をさせるようなケースとはどのような場合なのでしょうか。
跡取りである子にまかせたい
本件の相談者のように、会社や個人事業をしていて、地主で先祖代々の土地があるような場合には、跡取りにすべて相続をさせたいという場合があります。 戦後に民法の相続法に関する改正があり、今の状態に近い相続となったのですが、その前には家督相続制度が基本で、その考え方がいまだに残っているケースもあります。夫婦に子がいない
夫婦に子がいない場合に、配偶者の一人にすべての財産を相続させたいというケースが発生します。 夫婦に子がいない場合、両親が健在であれば両親、両親がすでに亡くなっているような場合には兄弟姉妹が相続人となります(民法887条、民法889条1項各号)。子がいる場合は、自分達夫婦の一方と子で相続をするのですが、親・兄弟姉妹という配偶者からすると縁が遠くなる人が共同相続をすることになり、家族関係によっては相続がうまくいかなくなることもあります。そのため、遺言で配偶者一人に相続をさせるというケースがあります。
他の相続人が信用できない
複数の相続人がいるなかで、すべての相続人が被相続人と良好な関係を築いているとはいえません。 たとえば、子が複数いる中で一人だけ非行に走ってしまって、家に迷惑をかけ続けたというケースもあります。 この時に、何もしなければ子は全員共同相続人として相続をすることができますので、一人の子に遺産を全部相続させたいという場合が発生しえます。一人に相続をさせる場合のリスク
- 一人に相続をさせると遺留分侵害額請求のリスクがある
- 相続分をもらえなかった相続人が遺言無効を争ってくる可能性がある
一人に相続させるとどのようなリスクがあるのでしょう。
遺留分侵害額請求を受ける可能性があるほか、遺言は無効という主張をしてくることも考えられます。
一人に相続した結果、どのようなリスクが発生するのでしょうか。
相続人が遺留分侵害額請求を受ける
一人が相続をすることとなった場合には、他の相続人の相続分はゼロとなります。 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められます。遺留分とは一定の法定相続人に保障された相続財産の一定割合のことをいいます。これが侵害された場合には、遺留分侵害額請求という金銭請求を起こすことが可能です(民法1046条)。この遺留分侵害額請求によって遺言が無効になるわけではなく、遺言が有効であるという前提で、相続をした人に金銭の請求をすることができるというものです。
他の相続人が遺言無効を主張してくる
遺留分侵害額請求だけでは納得いかないという相続人の場合、「遺言が無効である」と主張してくる可能性があります。たとえば、被相続人が高齢で遺言作成時には既に認知症の症状が出始めていた場合、認知症だったので遺言がつくれるわけがなく、その遺言は偽造されたものである、といった争い方をすることがあります。それでも一人に相続をさせる場合の対策
- 一人に相続をさせる場合の対策
リスクがあるのはわかりましたが、できればこのまま一人に相続をさせたいです。
様々な対策があるので順番に検討しましょう。
一人に相続をさせるリスクがある場合に、それでも一人に相続させたい場合の対策にはどのようなことがあるのでしょうか。
相続人が遺留分侵害額請求に対応できるように現金を多めに用意する
遺留分侵害額請求を起こされた場合でも、遺言が無効になるわけではありません。 そして、遺留分侵害額請求は金銭請求になるので、遺産を受け継ぐはずだった人に遺留分相当の金銭を支払うことになります。つまり、遺産を得る人が、これに応じることができる現金を持っていれば問題ありません。逆に遺産の多くが不動産であるという場合には、金銭請求された場合に、支払うための金銭を用意することが難しくなり、場合によっては不動産を売却することにもなります。 遊休不動産などは現金に換えてしまう、金銭を払う代わりに保険金の受取人にする、などして遺留分侵害額請求に対応できる金銭を、遺産を得る人にのこすべきといえます。
無効主張がされにくい公正証書遺言で作成する
遺言には様々な種類がありますが、公証役場で公証人と作成する公正証書遺言・秘密証書遺言は、法律のエキスパートである公証人が、本人の意思を確認しながら作成するものです。 偽造・変造をすることができないので、作成された遺言書の信頼性は高く、無効主張がされにくくなります(無効となるケースはあります)。一方、自筆証書遺言で都合の良いように書かれると、遺言は本物か、問題はないのか、といった様々な観点から疑いの目を向けられることがあります。 公正証書遺言で作成をして、無効を主張させないようにしましょう。
まとめ
このページでは、遺言書で一人に相続させたい場合の問題点についてお伝えしました。 遺言書で一人に相続させるのは不可能ではないのですが、遺留分侵害額請求権や遺言の無効で争うなどの問題が発生しえます。弁護士に相談をして、リスクを少なくするようにしてみましょう。
- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
- 遺留分の割合や計算方法が分からない
- 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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