遺言の中で預金(貯金)について記載する場合の注意点を解説
ざっくりポイント
  • 遺言に記載する際は、どの預金か特定できるように口座番号などを正確に記載する
  • トラブルになる可能性があるので、口座の預金額は記載しない
  • 相続税など、預金を相続しない人の金銭的な負担に配慮すべき
目次

【Cross Talk 】預金について遺言書に書く場合、どんなことに注意する?

私は複数の預金口座を持っており、預金について遺言書に記載しようと思うのですが、どんなことに注意すべきですか?

どの預金について書いたのかを特定できるように、金融機関名や口座番号などの情報を正確に記載する必要があります。ただし、預金の金額については書くべきではないなどの注意点もあります。

注意点を把握しつつ、正確に記入すべきということですね。他にも注意点があれば教えてください!

預金(貯金)について遺言書に書く場合、金額以外は具体的に記載すべき

銀行などの金融機関に預金(貯金)口座を持っている場合、預金について遺言書に書いておけば、どの預金をどの相続人に相続させるかなどを指定することができます。 預金については口座番号などをできるだけ具体的に記載すべきですが、その一方で、金額については書くべきではないなどの注意点もあります。 そこで今回は、預金について遺言書に記載する際のポイントを解説します。

預金(貯金)とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 預金とは厳密には金銭自体ではなく、金融機関から金銭を引き出せるという債権のことを指す
  • 預金は相続の対象だが、その場合は現金を相続するのではなく、債権を相続することになる

私の銀行口座にある預金を子に相続させたいのですが、そもそも預金とはなんですか?現金と何が違うのでしょうか?

預金とは厳密には金銭自体ではなく、お金を引き出すことを金融機関に要求できる権利のことです。預金は一種の債権であり、金銭そのものである現金とは異なります。

預金とは、銀行などの金融機関に預け入れた金銭を指すのが一般的です。そのため、預金というと金銭自体をイメージするかもしれませんが、法的には預金とは金銭そのものではなく、債権の一種です(預金債権といいます)。

口座を開設すると預金ができるようになりますが、これは法的には顧客と金融機関が預金契約という契約を締結している状態です。 預金契約に基づいて、顧客は預け入れた金銭と同種同額の金銭を引き出せるという債権を持っています。一方、金融機関は顧客から引き出しの要求があった場合は、それに応じて同種同額の金銭を返還するという債務を負っています。

たとえば、顧客が銀行口座に1万円札を預け入れた場合、顧客はその1万円札自体を引き出せるのではなく、それと同種同額の1万円という金額を引き出せる、という債権を持っているのです。

預金は相続の対象ですが、たとえば300万円の預金を相続するとは、300万円の金銭自体を相続するのではなく、300万円という金額を金融機関から引き出せる債権を相続するということです。

なお、金融機関によっては預金ではなく貯金という言葉を用いますが、どちらも債権であることに変わりはありません。 これはそれぞれの金融機関の根拠となる法律が預金という言葉で定義しているか、貯金という言葉で定義しているかによります。

遺言書での預金についての記載方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • どの預金か特定できるように、金融機関名や口座番号などを正確に記載する
  • トラブルになる可能性があるので、預金の金額は記載しないようにする

預金について遺言書に記載する場合、どのようなことに注意すべきですか?

どの預金かを特定できるように、金融機関名や口座番号などの情報を正確に記載しましょう。ただし、預金の金額を記載するとトラブルになりやすいので、具体的な金額までは記載する必要はありません。

遺言書に預金について記載する場合、口座の情報はできるだけ具体的に記載することが重要です。

「私が有する全ての預金」という抽象的な文言を使ってしまうと、相続の際に相続人などが金融機関を調べて特定しなければならなくなり、預金を相続するために労力がかかってしまいます。 預金について遺言書に記載するには金融機関名、支店名、口座の種類(普通預金か定期預金か)、口座番号などの具体的な情報を記載して、どの預金かを特定できるようにしましょう。

また、記載した情報に誤りがあった場合、その口座には遺言の効力が及ばない可能性がありますので、口座の種類や口座番号などは間違いがないように正確に記載し、通帳などを参照して必ず確認するようにしましょう。

ただし、預金口座に入金されている金額までは記載する必要はありません。預金口座の金額を遺言書に記載してしまうと、相続の際にトラブルになる可能性があるからです。 たとえば、A口座に預金が現在100万円あるからといって、「A口座の預金100万円を長男に相続させる」と遺言書に記載してしまうと、将来的に口座の預金額が増加した場合に、増加分については遺言による指定の効力が及ばないと判断される可能性があります。

増加分について誰が相続できるかなどでトラブルにならないように、預金の金額は遺言書には記載しないことをおすすめします。

遺言書で預金を取り扱う場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続税や遺留分侵害額請求によって、相続人が金銭負担をしなければならない可能性がある
  • 遺言書に書き忘れた預金があると、その処分について相続人が話し合わなければならない

遺言書で預金を取り扱う場合、どんなことに注意すべきですか?

預金を相続せずに不動産だけを相続する方がいる場合、税金などを金銭で支払わなければならない点に注意しましょう。また、書き忘れた預金口座があると、その処分をめぐって相続人間で話し合わなければなりません。

預金を相続できない人の金銭負担に配慮

相続した不動産の価格が高額な場合など、相続税を納めなければならないケースがあります。

現金や預金も相続していればそこから相続税を捻出することができますが、不動産しか相続していない場合は手持ちの資金で支払わなければならないので、せっかく相続をしても大きな金銭負担になる場合があります。 また、遺言によって特定の方にほとんどの財産を相続させた場合などは、その方が他の法定相続人から遺留分侵害額請求を受けて、金銭を支払わなければならなくなる可能性があります。

いずれにせよ、相続によって金銭を支払わなければならない可能性を考慮しつつ、預金をどのように配分するかを考えることが大切です。

遺言書に記載されていない預金はあらためて遺産分割対象となるので注意

遺言書に記載しなかった預金については、どのように処分するかを遺言で指定しなかったものとして扱われます。 そのため、遺言書に記載されていない預金が見つかった場合、その預金をどうするかは遺産分割協議の対象となり、相続人全員で話し合って決めなければなりません。

そうなると、協議のために時間や手間がかかるだけでなく、預金の処分をめぐって相続人間で争いになる可能性もあります。 せっかく遺言書を作成したのに、預金について記載し忘れたことでトラブルが発生しては元も子もありませんので、手持ちの預金口座の情報は漏れなく記載するように注意しましょう。

預金について記載漏れしやすい例としては、同一の銀行に普通預金口座と定期預金口座の両方を持っている場合に、定期預金口座について記載していないケースです。 普通預金口座しか記載しなかった場合、定期預金口座については指定がなく相続人が話し合う必要があるので、定期預金口座についても忘れずに記載しましょう。

また、開設したもののほとんど使っていない口座が複数ある場合は、口座を解約して整理しておくのがおすすめです。 なお、遺言書に書き漏らしがあった場合に備えて、「記載していない財産は〇〇に相続させる」などと書いておくと、書き忘れた財産の処分をめぐるトラブルを一応は防止しやすくなります。

まとめ

遺言書の中で預金について記載する場合、どの預金なのかが特定できるように、金融機関名や口座番号などの情報は正確に記載する必要があります。 ただし、預金の金額を記載してしまうと変化があった場合にトラブルになりやすいので、金額を記載することは避けましょう。 その他、預金を相続しない人の金銭的負担に配慮する、あまり使わない口座は解約して整理しておく、などの工夫も大切です。

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