1.法定単純承認と熟慮期間
相続が開始すると、相続人は、単純承認・相続放棄・限定承認という3つの選択肢をとることができます。
ただし、この3つのうちいずれを選択するのか、いつまでも選べるとなると、相続がいつまでたっても終わらないことになります。
そこで、民法は、相続放棄・限定承認に3ヶ月という期間制限を設けて、3ヶ月以内に相続放棄・限定承認をしない場合には、単純承認したものとみなす、と規定しています(民法第915条・921条)。
この3ヶ月の期間制限のことを、「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼んでいます。
2.相続放棄・限定承認ができる期間
相続放棄・限定承認は「相続開始を知ったとき」から3ヶ月以内に行う必要があります。 「相続の開始」は被相続人が死亡によって開始するので(民法第882条)、3ヶ月の期間制限は、相続人が被相続人の死亡を知ったときから数えることになります。
そのため、被相続人との交流がなくなっており、被相続人が亡くなったことを知らなかったような場合には、この3ヶ月の期間制限は開始しません。
3.熟慮期間の伸長
3ヶ月というと、十分な時間があるようにも思えます。
しかし、いわゆる四十九日法要を行うまでは、相続について何もしない、できないという方も多いです。
また、債務の調査や、相続放棄・限定承認に必要な戸籍の収集などには非常に時間がかかることがあります。
以上のようなことが積み重なり、3ヶ月の熟慮期間が過ぎてしまいそうなときには、家庭裁判所に申し立てをして、熟慮期間を延ばしてもらうことができます。
この手続のことを、熟慮期間の伸長と呼んでいます。
一度延長した熟慮期間を再度延長することもできますが、裁判所に対し、なぜ再度の延長をする必要があるのか説明をしなければなりません。
熟慮期間の伸長は必要最低限にとどめられるので、なるべく3ヶ月の熟慮期間内に相続放棄・限定承認をすることが望ましいといえます。
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