1.遺産分割の対象となる財産

遺産分割協議ではどのような財産を遺産分割の対象とするのでしょうか。

相続人が2名以上いる場合には、相続した財産は相続人全員の共有になると規定されています(民法第898条)。

とすれば、基本的には相続財産のすべてを遺産分割の対象とすべきようにも思えます。

しかし、相続財産の内容や性質によって、遺産分割の対象にせず、相続人がすぐに権利を行使できるものもあります。

2.相続財産であるが遺産分割の対象とならない財産

相続財産であっても、遺産分割の対象とならないものには次のようなものがあります。

2-1.預金以外の金銭などの可分債権

まず、金銭などの可分債権のうち、預金債権を除くものは、遺産分割の対象にならず、相続人が相続分に応じて債務者に対して権利を行使することができます。

可分債権というのは、分けることができるものを引き渡してもらう債権のことで、金銭債権はその代表です。


金銭債権については、最高裁判例昭和29年4月8日・最高裁判例昭和30年5月31日などの判例で、共同相続人が相続分に応じて権利を取得するものとしています。

つまり、共同相続人は自分の法定相続分に従って、債務者に対して請求をすることが可能となっています。

2-2.祭祀財産

お墓や仏壇などの先祖を祀るための財産のことを祭祀財産と呼んでいます。

祭祀財産については、遺産ではあるのですが、一般的な資産のような分け方をするのではなく、慣習や被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継することになっています(民法第897条)。

ですので、お墓は長男・仏壇は次男…というような遺産分割を行わず、誰が祭祀を主宰するか決めて、その人がすべての祭祀財産を承継します。

3.相続財産でないけども遺産分割で問題となる財産

被相続人に属していた財産ではないので、相続財産ではないものの、遺産分割で問題となる財産について確認しましょう。

3-1.生命保険金

被相続人が亡くなったことによって生命保険金を受け取ることができるようになります。

この生命保険金ですが、亡くなったことが原因で受け取ることができるという点では相続財産のように見えます。

生命保険金の受取人が被相続人である場合には、被相続人に属する財産となって相続の対象となります(法的にこのような契約が可能ですが、現実に行われているケースは少ないです)。


しかし、生命保険金で受取人が相続人になっているものについては、保険契約の内容として支払われるものであり、被相続人の財産を相続したから受け取れるのではありません。

そのため、相続財産ではありません。

とはいえ、被相続人のお金で毎月の保険料を支払っているものですので、生命保険の利用方法次第では、相続人間に実質的な不利益が生じる場合があります。

そのため、保険金の受取人とその他の共同相続人との間に著しい不公平が生じて、民法第903条に規定する特別受益の規定の趣旨から考えて是認できないような状態になっている場合には、民法第903条の特別受益に関する条文を類推適用して、持ち戻しの対象になるとしています(最高裁判所平成16年10月29日判決)。


他の相続人がもらった生命保険金があまりにも多い場合には、遺産分割で考慮される可能性があります。

3-2.死亡退職金

死亡退職金の受取人が相続人となっている場合は、労働契約に基づいて受取人が会社に請求することができる権利となります。

そのため、生命保険金同様に、相続財産には含まれないことになります

3-3.代償財産

代償財産とは、資産の代償として請求することができる財産をいいます。

典型的な例が、不動産が火災で焼失したような場合に、火災保険金を請求することができるようになった場合の火災保険金がこれにあたります。

相続を開始した直後には存在した不動産が、遺産分割までに消失したような場合、火災保険金は保険契約に従って支払われることになるのであって、相続財産ではありません。

しかし、本来は相続財産として分ける予定だったものなので、遺産分割の対象としなければ不公平となるような場合には、代償財産を遺産分割の対象にすることが望ましいといえます。

3-4.相続財産からの果実

たとえば、マンションを賃貸していたような場合に、毎月発生する賃料のように、ある財産から生じる収益のことを「果実(かじつ)」と呼んでいます(民法第88条)。

相続開始後に賃料が発生したような場合には、不動産の所有者がこれを受け取る権利があることになるのであって、金銭債権として相続分に応じて請求することができます。

しかし、全員で合意をすれば、遺産分割の対象にすることも可能です。

3-5.相続開始後・遺産分割前に処分された財産

被相続人が死亡して相続が開始してから、遺産分割までの間に、共同相続人の一部が相続財産を処分してしまうことがあります。

たとえば、被相続人の所有していた貴金属を、遺品整理業者に売却するような場合です。

このような場合には、共同相続人全員(処分を行った共同相続人の同意は不要)が同意すれば、その財産が遺産分割時に存在するものとみなすことができます(民法第906条の2)。

この条文によって、実質的には遺産分割の対象になります。

4.まとめ

このページでは、遺産分割の対象になる財産・ならない財産などについてお伝えしました。

判断が難しいものがある場合には、弁護士に相談してみてください。

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遺産分割に関するよくある質問

共有物分割請求訴訟を行うことができます。 共有物分割請求訴訟を行うことにより、共有状態を解消できます。 共有状態を解消する方法には「現物分割」と「代償分割」の2種類あります。 「現物分割」は共有されている物を現実に分ける方法で、土地をAさんとBさんで半分ずつに分筆するイメージです。 「代償分割」は共有物を一人が取得し、その一人が他の共有持分権者に代償金を払って解決する方法です。
してはいけないという決まりはありませんが、すべて決まってからの方が良いです。仮に、決まったはずの財産所有者から後から「騙された」と言われれば、有利に進んでいたはずの協議に待ったがかかる可能性があります。 ですので、名義変更のタイミングは全ての協議か終了してからのほうが良いでしょう。
遺産分割後に相続人、全員が納得しているような場合は、遺産分割のやり直しをする必要はありません。逆に「この遺言を知っていればこのような遺産分割はしなかった。」など、相続人や受遺者全員の同意が得られない場合は遺言書に沿った遺産分割になります。
認知症を患っている相続人について、成年後見制度を使う必要があります。 成年後とは判断能力が不十分な方を不当な契約などから保護し、財産管理を支援する制度です。成年後見を申し立てると、裁判所の判断に基づいて、判断能力が不十分な方の代わりに財産管理などを行う成年後見人がつきます。 相続人の中に認知症で判断能力が不十分な方がいる場合は、成年後見制度を利用し、その相続人についた成年後見人と遺産分割協議を行うことになります。
相続財産の分割方法は主に4つあります。 ①現物分割(個々の財産をそのまま相続人に分配する方法) ②2代償分割(1部の相続人が相続分を超えて財産を引き継ぐとき代わり金銭を他の相続人へ支払う方法) ③換価分割(相続財産を売却し、現金に換えて分配する方法) ④共有分割(複数の相続人で持ち分を決める)です。 どの相続方法にも長所・短所がありますので、どうしても話し合いが進まない場合は家庭裁判所に調停や裁判を申し立てるか、弁護士に相談してみてください。

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