- 秘密証書遺言は内容を秘密にしたまま遺言できる
- 秘密証書遺言を作成するには公証役場に出向き、2名の証人が必要
- 遺言書が無効にならないように、訂正方法と証人適格に注意する
【Cross Talk】内容を知られずに遺言する方法は?
私が亡くなったときのために遺言をしたいのですが、相続人である息子達が納得しないような内容もあるので、遺言の内容を秘密にしたまま遺言したいです。良い方法はありますか?
民法が規定する遺言の方式の一つである秘密証書遺言は、内容を誰にも知られずに遺言できるのがメリットです。一方、作成方法を誤ると無効になる可能性があるなどのデメリットや注意点もありますので、特徴をよく把握したうえで秘密証書遺言を作成するかどうかを検討しましょう。
きちんと作成することが重要なのですね。秘密証書遺言を作成する方法も教えてください!
民法が定める法定相続によらずに財産を相続させる方法として、遺言があります。もし遺言の内容を他者に知られなくない場合、秘密証書遺言という方法があります。 秘密証書遺言は遺言の内容を知られることなく遺言できるのがメリットです。一方、秘密証書遺言を作成するには公正役場に出向く必要がある、2人の証人が必要になるなどの特徴もあります。 特に、作成方法を誤ると効力が認められない可能性がある点には注意が必要です。そこで今回は、秘密証書遺言のメリットやデメリット、作成方法や注意点などをわかりやすく解説していきます。
秘密証書遺言とは?
- 秘密証書遺言のメリットは、遺言の内容を秘密にできること
- 秘密証書遺言のデメリットは、不備があると無効になる可能性があること
秘密証書遺言はどんなメリットやデメリットがありますか?
秘密証書遺言のメリットは、遺言の内容を誰にも知らせずに秘密にできることです。デメリットは、公証人でも内容を確認できないので、不備があると無効になってしまう可能性があることです。
秘密証書遺言の意味
相続における遺言(いごん)とは、遺言者の死後に財産をどのように分配するかを定めた意思表示です。遺言が記載された書類を遺言書といいます。遺言は民法で規定されている所定の方式を満たさなければ効果が生じません。民法には普通方式の遺言として自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。 秘密証書遺言は遺言の内容を秘密にしたまま遺言できるのが特徴です。
秘密証書遺言のメリット
秘密証書遺言には以下のようなメリットがあります。・内容を秘密にできる 秘密証書遺言は公証役場で作成しますが、公証人は遺言の内容を確認しません。そのため、内容を誰にも知られることなく遺言することができます。 公正役場は公正証書の作成や私文書の認証などを行う役場で、公証事務を担う公務員は公証人と呼ばれます。
・遺言者自身の自書である必要がない 秘密証書遺言は自筆する必要はなく、パソコンや代筆で作成することができます。自筆が難しい高齢の方などに便利です。
・偽造や変造を防止できる 秘密証書遺言は封印をしますが、規定の手続きを経ずに開封されたものは効果が認められません。それによって遺言書の偽造や変造を防止できます。
・遺言者本人が作成したことを証明できる 秘密証書遺言は遺言者本人が署名をして封入するので、特別な手続をしなくても本人が作成したものであることが証明されます。
秘密証書遺言のデメリット
秘密証書遺言には以下のようなデメリットがあります。・遺言に不備があると無効になる可能性がある 秘密証書遺言は公証人が内容を確認できないため、内容などに不備があった場合は効力が無効になる可能性があります。せっかくの遺言を無効にしないためにきちんと作成しましょう。
・手続に手間がかかり、証人も必要 秘密証書遺言書を作成するには手間がかかります。遺言書を作成して封をした後に、公証役場に出向いて公証人に認証をしてもらう必要があります。その際に費用もかかります。 また、秘密証書遺言を完成させるには2人の証人を用意する必要があります。
・遺言書の開封には所定の手続が必要 秘密証書遺言の中身を確認するには、家庭裁判所による検認の手続が必要です。検認は遺言書が法律の規定を満たしているかどうかを確認する手続で、検認が終了するまでは遺言書の内容を確認することはできません。 また、家庭裁判所の検認の前に開封された場合は秘密証書遺言としての効果が認められないため、紛失や開封がないように注意して保管する必要があります。
秘密証書遺言の作成方法
- 秘密証書遺言は公証役場で手続をする
- 秘密証書遺言を完成させるには2人の証人が必要
秘密証書遺言を作成する方法を教えてください。
秘密証書遺言はまず遺言書を作成して封をします。その後、公証役場に持っていき公証人の立会で完成させます。秘密証書遺言を完成させるには、証人適格を有する2人の証人が必要です。
遺言書の作成
遺言書は手書きだけでなくパソコンやワープロでも作成可能です。また、次に解説する遺言者自身の署名と押印があれば、遺言者以外の方による代筆も可能です。ただし、秘密証書遺言が無効になった場合に備えて自筆証書遺言としての効力を持たせたい場合は、代筆はできません。自筆証書遺言は本人が全文、日付、氏名を自署しなければ効力が認められないからです。
遺言書に署名・押印
秘密証書遺言を作成するには、遺言者の自筆による署名と押印が必要です。押印には認印も使用できますが、後で同じ印章を使用するので紛失しないようにしましょう。遺言者が、遺言書を封じ、証書に用いたのと同じ印章で封印
遺言書の記載が終わったら、遺言書を封紙に入れて封じます。遺言書を封じる際に、遺言書に使用したのと同じ印章で押印する必要があります。遺言書に使用したものと異なる印章で押印をした場合、秘密証書遺言としての効力が無効になってしまうので要注意です。
遺言者が、公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出
封印した遺言書を公証役場に持っていき、公証人と2人の証人の前で封印した遺言書を提示します。秘密証書遺言に必要な2人の証人は、証人になるための証人適格があります。以下に該当する場合、証人適格が認められません。
- 未成年者(婚姻している場合を除く)
- 相続人となる者
- 受遺者およびその配偶者と直系家族
- 秘密証書遺言の作成を担う公証人の配偶者と4親等内の親族
- 公証役場の関係者
自己の遺言書である旨と筆者の住所・氏名を申述
公証人と2人の証人の前で遺言書を提示した後は、自分の遺言書である旨と住所・氏名を申述します。公証人が遺言書提出の日付と遺言者の申述を封紙に記載
申述が終わったら、公証人が遺言書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載します。遺言書を作成する際に日付を記載していなくても、公証人が封書に日付を記載するため、日付がないことによる遺言の無効を防止できます。
公証人、遺言者、証人が、封紙に署名・押印
公証人による封紙の記載が終わったら、最後に公証人、遺言者、証人が封紙に署名・押印をして、秘密証書遺言が完成します。保管は自分で行う
作成した秘密証書遺言は自分で保管する必要があります。公証役場で作成しますが、役場に保管してもらうことはできません。自分で保管するため、万が一紛失した場合などはせっかく作成した遺言を活用できない危険性があります。作成した秘密証書遺言は、金庫などに厳重に保管して紛失しないようにするのがおすすめです。弁護士などに保管を依頼する方法もあります。
秘密証書遺言作成の際の注意点
- 遺言書の訂正方法を誤ると訂正が無効になる
- 証人適格がない場合、秘密証書遺言の効果が認められない可能性がある
秘密証書遺言を作成する際に、注意点があれば教えてください。
秘密証書遺言を作成するにあたっては、遺言書を訂正する方法、証人適格があること、遺言作成にかかる費用などがポイントです。特に、訂正方法を誤ると訂正が無効になる点に注意しましょう。
遺言書の加除訂正方法
加除訂正は文書の一部を取り消し、代わりの文言を加えて訂正することです。簡潔に言えば遺言書の一部を訂正することです。民法には遺言書について厳密な加除訂正方法が規定されており、その方法でなければ訂正の効果は生じません。民法に規定された訂正方法は、遺言者が訂正する場所を指示し、これを変更した旨を付記してこれに署名し、かつその変更の場所に印を押すことです。 具体的には、まず削除する箇所を二重線などで明確にします。次に、訂正する箇所の近くに加筆する文字を記載して印を押します。最後に遺言書の空いている部分に何文字削除し何文字加筆したかを記載し、遺言者の署名をすれば完了です。
証人適格のない者が証人になったら遺言書が無効になる可能性がある
秘密証書遺言を作成するには2名の証人が必要ですが、証人適格のない者が証人になった場合、秘密証書遺言としての効力が無効になる可能性があります。秘密証書遺言の成立には証人が必要なところ、証人適格のない者は証人として認められないからです。 もっとも、秘密証書遺言としての効力が無効の場合でも、自筆証書遺言の方式を満たしている場合は、自筆証書遺言としての効力は認められます。自筆証書遺言の効力を持たせたい場合、全文の自書などが必要です。秘密証書遺言の費用
秘密証書遺言を作成するには費用がかかります。必ず発生する費用は、公証役場に収める手数料の1万1,000円です(定額)。 秘密証書遺言を完成させるには2名の証人が必要ですが、証人を自分で用意できない場合は公証役場に手配してもらうこともできます。その場合の費用として、証人1人あたり8,000円程度の費用がかかります。2人だと1万6,000円程度です。 秘密証書遺言の作成を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、報酬として費用がかかります。事務所によって異なりますが、報酬の目安は3〜10万円程度です。まとめ
秘密証書遺言は内容を誰にも知られることなく遺言できるのが特徴です。偽造や変造を防止できる、遺言者本人が作成したことを証明する必要がないなどのメリットもあります。 一方、不備があると無効になる可能性がある、作成に手間と証人が必要になるなどのデメリットもあります。特に、不備があると遺言自体が無効になるリスクには注意が必要です。 せっかくの遺言を無効にしないためには、自筆証書遺言としての方式も満たすようにする、弁護士などの専門家に作成を依頼するなどの工夫がおすすめです。
- 遺言書が無効にならないか不安がある
- 遺産相続のトラブルを未然に防ぎたい
- 独身なので、遺言の執行までお願いしたい
- 遺言書を正しく作成できるかに不安がある
無料
この記事の監修者
最新の投稿
- 2024.05.23相続全般相続法が改正された!いつから?今までと何が変わった?
- 2024.05.23相続全般相続人代表者指定届とは?その効力は?書き方も併せて解説
- 2024.03.22相続放棄・限定承認遺留分放棄とは?相続放棄との違いやメリット、撤回の可否を解説!
- 2023.11.06相続全般「死んだら財産をあげる」相続における口約束はトラブルのもと!事例をもとに解決方法を解説