被相続人が結んでいた契約が相続でどのように扱われるのか詳しく解説いたします!
ざっくりポイント
  • 不動産の貸主・借主の地位は相続の対象になる
  • その他の契約上の地位も原則として相続人が承継する
  • 一身専属的な権利・義務は承継しない
目次

【Cross Talk 】亡くなった人が借りていた家はどうなる?相続人は住み続けることができる?

夫と二人暮らしをしていましたが、先日、夫が亡くなりました。これから相続の手続きをしなければならないと思うのですが、まず気になっているのが家のことです。夫名義で借りていた家に住んでいるのですが、この契約がどうなるのか不安です。

不動産の借主の地位は相続人が承継することになっています。不動産に関する電気や水道などの供給契約も同様です。ですから、そのままご自宅に住み続けることができます。

安心しました。それ以外の契約がどうなるのかも教えてください。

契約の名義人が亡くなったら契約上の地位はどうなる?

賃貸借契約のような継続的契約の場合、契約期間の途中に契約の当事者が亡くなってしまうことは珍しくありません。また、売買のように1回限りの契約であっても期限(履行期)が定められている場合、やはり期限の前に契約の当事者が亡くなることはあり得ます。そのような場合、契約はどのように扱われるのでしょうか。

今回はまず、不動産に関する契約の当事者が亡くなった場合について解説し、その他契約一般についてもあわせて解説いたします。

不動産賃貸借契約

知っておきたい相続問題のポイント
  • 不動産の貸主・借主の地位は相続人に承継される
  • 借主の相続人が住まない場合は解約を

不動産の賃貸借契約期間中に本人が亡くなったら、賃貸借契約はどうなるのですか?

貸主が亡くなった場合であっても借主が亡くなった場合であっても、貸主・借主の地位は相続人に承継されます。

不動産の賃貸借契約の期間中に貸主(賃貸人)または借主(賃借人)が死亡した場合、貸主または借主の地位(権利義務)は、貸主または借主の相続人が相続します。

相手方(貸主死亡の場合は借主、借主死亡の場合は貸主)の同意や特別な手続きなどは必要ありません。 従前の契約による権利義務をそのまま引き継ぐので、改めて契約書を作ることも必須ではありません。 もっとも、相続人が承継したことを明確にしておくために、相続人を貸主または借主とする新たな契約書を作成するのが望ましいと言えます。

借主が単身で賃借物件に居住していた場合など、借主の相続人が賃借物件の使用収益の継続を望まないときは、賃貸借契約を解約することができます。 他方、貸主の相続人が賃貸借契約を終了させたいと考えたとしても、借主保護の要請のため正当な事由がなければ解約することはできません。

なお、賃貸借契約と異なり、使用貸借契約(他人のものを無償で使用収益する契約)の場合、借主の死亡によって契約は終了するとされています(民法597条3項)。

使用貸借が、借主その人を考慮してその方に対してのみ貸与される場合が多いことから、借主の死亡によって契約が終了することとしたのです。

不動産賃貸借契約にまつわる契約

知っておきたい相続問題のポイント
  • 電気、水道、ガスなどの契約も相続人が承継する
  • 状況に応じて名義変更、解約をする

相続人が不動産の借主になるのなら、不動産と関係のある電気、水道、ガス等の契約はどうなりますか?

電気、水道、ガスといった公共料金に関する契約についても、相続人が承継することになります。

不動産を使用収益するには、不動産の賃貸借契約以外にも多くの契約を結ぶ必要があります。 代表的なものとしてあげられるのが、電気、水道、ガスなどの供給契約です。不動産の借主がその不動産に関してこれらの供給契約を結んでいた場合、借主が死亡すればこれらの契約も借主の相続人に承継されます。

この承継にも特別な手続きは必要なく、相続人が何もしなければ料金が発生し続けることになります。ですから、相続人がその不動産に居住する予定がないのであれば、すみやかに解約の手続きをとる必要があります。

他方、相続人がその不動産に居住する場合に、電力会社等に連絡して契約名義や料金の引き落とし口座を変更する手続きをした方がいいでしょう。亡くなった方(被相続人といいます)の名義のままでも電気等を利用することはできますが、引き落としに利用していた被相続人の口座が凍結されると料金の支払いができなくなり、電気等が止められてしまう可能性があるからです。

その他の契約

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人は原則として被相続人の一切の権利義務を承継する
  • 被相続人の一身に専属したものは承継しない

不動産にまつわる契約も基本的に引き継ぐことになるのですね。それ以外の契約はどうでしょうか?

不動産に関する契約に拘らず、相続人は基本的に被相続人の全ての権利義務を引き継ぐことになっています。ただし、例外として、被相続人だけが行使できる権利や被相続人だけが履行できる義務については、相続人に引き継がれることはありません。

通常の契約

不動産の賃貸借契約や不動産にまつわる契約だけでなく、それ以外の契約上の地位についても、相続によって被相続人から被相続人に引き継がれるのが原則です。 というのも、相続人は、相続開始の時から、被相続人の遺産に属した一切の権利義務を承継するとされているからです(民法896条本文)。ですから、不動産の賃貸借以外の契約、たとえば売買契約に基づく権利や義務も、相続人が承継することになります。

売買契約の買主が亡くなった場合、買主の相続人が買主の地位を承継するので、代金が未払いであれば代金を支払う義務を負うことになりますし、売買の目的物の引き渡しを受けていなければ目的物の引き渡しを求める権利を得ることになります。

一身専属的な権利・義務にかかわる契約

もっとも、この原則には例外があり、被相続人の一身に専属した権利義務は、相続人に承継されません(民法896条ただし書き)。

一身に専属した権利義務とは、被相続人だけが行使できる権利または被相続人だけが履行できる義務のことです。たとえば、Aというテレビ局がBという歌手に○月〇日に生放送するテレビ番組に出演してもらう契約を結んだという場面を想定して下さい。Bは〇月〇日にそのテレビ番組に出演する義務を負い、その対価としてAに対し出演料を請求する権利を有するということになります。

この場合にBが〇月〇日以前に死亡したとしても、Bの相続人は、テレビ番組に出演するというBの義務を承継することはありません。その義務の履行はBにしかできないからです。

これが、被相続人の一身に属する権利義務というものです。

まとめ

不動産の賃貸借を中心に、被相続人の結んでいた契約が相続においてどのように扱われるかについて解説しました。原則として被相続人の権利義務の一切を相続人が承継することになるので、名義変更・解約など適切な手続きをするようにしてください。

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