- 遺言書を隠すことによる民事のペナルティ
- 遺言書を隠すことによる刑事のペナルティ
- 遺言書について争いたい場合の方法
【Cross Talk】こんな遺言書を隠したいんですけど…どんなペナルティがありますか?
相談なのですが、先日父の遺言書をたまたま目にしてしまいました。自筆証書遺言で作成されたものなのですが、その内容が私にとってものすごく不利でして…。これを隠してしまうとどのようなことになりますか?
遺言書の隠匿によって民事では相続欠格に、刑事事件にもなりかねません。遺言書の内容に納得がいかないのであれば、遺言無効や遺留分侵害額請求権で争うようにしましょう。
そうなんですね!詳しく相談に乗ってください。
何らかの原因で遺言書を一人で見つけてしまい、その内容が自分に不利なものだった…という可能性はあります。 遺言書を隠してしまったことが発覚すると、民事では相続欠格といって相続できなくなってしまう措置がされ、刑事事件にもなる可能性があります。どうしても遺言の内容に納得いかない場合の争い方についてはどのような方法があるかについて確認しておきましょう。
遺言書を隠したことが発覚した場合に発生するペナルティ
- 遺言書を隠したことが発覚した際に発生する民事上のペナルティである相続欠格
- 遺言書を隠したことが発覚した際に発生する刑事上のペナルティである私用文書等毀棄罪
遺言書を隠した際のペナルティってどのようなものがあるんですか?
そもそも相続をすることができなくなる相続欠格という制度のほか、刑事事件のペナルティも発生します。
遺言書を隠していたことが発覚した場合に発生するペナルティについて確認しましょう。 ペナルティとしては民事・刑事がありますのでそれぞれ確認しましょう。
相続欠格
まず、遺言書を隠した場合には相続欠格になります。 相続欠格とは、相続をする場合に、相続に適さない特定の事情がある場合に、相続人となることができないとする制度です。民法では891条第5号において、遺言書の隠匿が規定されます。 つまり、遺言書を隠すと、相続人になることができなくなります。後述する遺留分は相続人に与えられている権利ですが、不利な遺言で遺留分を侵害されている場合でも、遺言書を隠匿してしまうと相続人ではなくなってしまうため、遺留分侵害額請求権すら起こすことができなくなるのです。
相続欠格にあたらない場合もある?
遺言書の隠匿が相続欠格にあたるとするのは、遺言書を隠匿して不当に利益を得ようとするような相続人に相続を認めるのは適切ではない、とする趣旨のものです。 そのため、不当な利益を得る目的ではないような場合には、遺言書を隠匿した場合でも相続欠格にあたらない場合があります。実際に、遺言を隠匿したにも関わらず、不当な利益を得る目的ではなかったために、相続欠格にあたらないとする判例もあります(最判平成9年1月28日)。 そのため、遺言書を隠すことすべてが相続欠格にあたらず、ケースバイケースでの判断になります。
私用文書等毀棄罪
遺言書を隠匿する行為については刑事事件になる可能性があります。 遺言書は権利義務に関する文書であり、これを隠匿することは、刑法259条に規定する私用文書等毀棄罪に問われることになります。同罪は罰金刑がなく、5年以下の懲役刑のみが規定されているもので、重い罪になると考えておくべきです。自分に都合の悪い遺言書について争いたい場合
- 遺言書の有効・無効を争う場合には遺言無効確認を行う
- 遺言書が有効である場合でも自分の遺留分が侵害されている場合には遺留分侵害額請求権を行使する
相続できなくなったり、刑事事件になるのはちょっと困ります…。しかし、どう考えてもあのような遺言を父が残すと思えません。というのも、遺言をした当時にはすでに認知症にかかっていた可能性があるんです。遺言について争う方法はありませんか?
遺言無効確認や遺留分侵害額請求権を行使することを検討しましょう。
遺言書を隠すことは妥当ではありませんが、遺言について争うことができなくなるわけではありません。 遺言について争う方法について確認しましょう。
遺言の有効・無効を争う
まず、当該遺言の有効・無効を争う方法はあるのでしょうか? 遺言をするにあたっては、そもそも遺言能力という遺言をするための意思能力が必要であったり、遺言に関する要件を充たす必要があります。 以下のような場合には遺言が無効になることも考えられます。- 自筆証書遺言について遺言書に日付が書かれていないなど要件を充たしていない
- 自筆証書遺言の筆跡が本人のものではない
- 遺言当時には認知症にかかっており遺言能力があったとはいいがたい
- 公正証書遺言・秘密証書遺言で証人になった人は証人になることができない人であった
遺留分侵害額請求権を行使する
遺言が有効に成立している場合でも、遺留分を侵害するような内容の遺言である場合には、受遺者(遺言により遺産を受け取った者)に対して遺留分侵害額請求権を行使することが可能です。 たとえば、夫・妻・子1人の場合に、夫が全財産を愛人に譲るとしても、妻・子はそれぞれ遺産の1/4分に相当する金銭債権を受遺者である愛人に請求をすることが可能です。このような請求のことを遺留分侵害額請求権と呼んでいます。 遺留分侵害額請求権は、相続開始を知った日から1年以内に行う必要があるので、配達証明付き内容証明を利用して、送った日付と送った内容を証明できるように請求をします。
まとめ
このページでは、遺言を隠した場合にどのようなことが起こるのか、についてお伝えしました。 遺言を隠した場合には、相続欠格に該当し相続できなくなる・私用文書等毀棄罪に該当し刑事罰を受ける、ということを知っておきましょう。 といっても遺言について争うことができなくなるわけではなく、遺言無効や遺留分侵害額請求といった争う手段はあります。 遺言が納得いかない場合に、どのような行動がベストかを弁護士に相談するのが良いといえます。
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