遺言書の内容について「対抗要件」を備えるということの意味と内容
ざっくりポイント
  • 対抗要件とはどのようなものか
  • 動産の対抗要件である引き渡しを受けるためには
  • 不動産の対抗要件である登記を備えるためには
目次

【Cross Talk 】遺言書があったときに、「対抗要件を備える必要がある」と見たのですが何をすればいいですか?

遺言書で不動産を相続することになりました。法改正で不動産を相続したときには対抗要件を備える必要がある、という内容をみたのですが、対抗要件というのはどのようなものでしょうか。

2019年7月1日に施行された改正民法の話ですね。不動産については相続登記が対抗要件になります。対抗という言葉の意味も含めて、詳しくお伝えいたしますね。

是非お願いします。

対抗要件とはどのようなもので遺言書がある場合にはどうなるか

遺言書によって遺産について権利を得た人が、その遺産について別の権利者が現れた場合に、遺言書により取得した遺産についての権利を主張することができるか否かは、対抗要件を備えているか否かによって変わってきます。 具体的に何が対抗要件になるかは、動産か不動産かによって異なります。 遺言書や相続後の遺産分割で遺産を得た人は対抗要件を備えなければならない旨の法改正がなされたことも含めて確認しましょう。

対抗要件の概要

知っておきたい相続問題のポイント
  • 対抗要件の概要
  • 動産・不動産の対抗要件

そもそも対抗要件というのはどのようなものでしょうか。

あるものを巡って権利関係がぶつかる場合、どちらが優先されるのかは、対抗要件をどちらが先に備えたかによります。動産と不動産で取り扱いが違うので確認しましょう。

まず「対抗要件」とはどのようなものか確認しましょう。

法律用語である対抗要件とは

まず、法律用語である対抗要件とはどのようなものか確認しましょう。 ある物について、売買契約により所有権を得た、という人が二人現れたとします(二重売買)。 この場合、どちらも売買契約において買主としてその物を取得しているので、どちらも単独の所有権を主張することになります。 ある物について単独の権利を主張する人が二人現れたときには、どちらかを優先させなければなりません。 その優先関係を判断するための要件が対抗要件で、民法では、動産と不動産に分けて規定されています。

動産の対抗要件

動産については引渡しが対抗要件とされています(民法178条)。 例えば、元々の所有者がAさんとBさんに自身が所有しているカメラを販売してしまった場合、AさんとBさんの間では先に引渡しを受けた方が他方に自分が所有権者であると主張することができます。 この場合、もう一方の方は、契約内容が履行されなかったことから、二重譲渡をした売主に契約を解除して損害賠償を求めることになります。

不動産の対抗要件

不動産の対抗要件については登記が対抗要件とされています(民法177条)。 家や土地・マンションについては法務局で登記をする不動産登記制度があり、この登記で所有権などを公にしています。 そして、同様に二重売買があった場合には、登記を先にした方が優先されます。

遺言書の記載内容の対抗要件を備える必要性と手続き

知っておきたい相続問題のポイント
  • 動産については引渡しを受ける
  • 不動産については相続登記をする
  • 2019年7月1日改正内容で取り扱いが変わっている

二重売買というお話ですが遺言書で遺産を受け継いだ場合にも同様なのでしょうか。

はい、遺言書で遺産を受け継いだ場合に、他の相続人の債権者に差し押さえをされて、二重譲渡と同じような状況になることがありますので、対抗要件を備える必要があります。

ここまで、二重譲渡のようなケースにおける対抗要件についてお話してきましたが、実は遺言書の場合にも対抗要件が問題になるケースがあります。

遺言書がある場合に対抗要件が問題になるケース

具体例として、故Aさんの相続人が、B・C・Dさんであったという事例を想定します。 この場合、B・C・Dさんが共同相続をするのですが、遺言書で遺産の割り振りがされていた場合には、遺言書の通りとなるのが原則です。

ただ、Cさんにお金を貸していて、返済をしてもらえていない債権者がいる場合、その債権者はCさんが相続した遺産に差し押さえをしてお金を回収したいと考えることになります。

この場合、民法899条の2第1項によると、遺言書により法定相続分を超えて遺産を取得した人は、その法定相続分を超える部分を第三者に対抗するためにはその取得した財産に応じて登記や登録などの対抗要件を備える必要があるとされています。

例えば、Bさんが遺言書により不動産を単独で取得することになっていたものの、その旨の登記をする前にCさんの債権者がその不動産の差し押さえを行った場合、Bさんは自身の持ち分を超える部分(CさんとDさんの持分部分)の所有権をCさんの債権者に主張することができないことになります。

そのため、遺言書により遺産を取得した人は、すみやかに対抗要件を備えることが必要であるといえます。 なお、この899条の2は民法改正により2019年7月1日から新たに施行された内容で、それ以前は登記などの対抗要件がなくても、遺言書で遺産を譲り受けた人は権利を主張できましたが、同日以降は、対抗要件が必要となっています。

動産の対抗要件を備えるための手続き

動産の対抗要件は引渡しですので、他の共同相続人が遺産を持っているような場合には、すみやかに引渡しを受ける必要があります。 共同相続人が引き渡しをしない場合には、裁判を起こして引渡しを求めることになります。なお、共同相続人が先だって転売してしまうことを防ぐためには、占有移転禁止の仮処分という手続きもあります。

不動産の対抗要件を備えるための手続き

不動産の対抗要件を備えるためには、不動産登記が必要になります。 遺言書がある場合には、遺言書を利用して単独で登記手続きをすることができますので、すみやかに行っておくことが望ましいといえます。

まとめ

このページでは、遺言書がある場合の対抗要件についてお伝えしてきました。 遺言書で遺産を得ることになった人も、きちんと対抗要件を備えなければ、権利を争う第三者に対して自らが権利者であることを主張できなくなる可能性があります。 遺言書があった場合にはすみやかに対抗要件を備えるようにしましょう。

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