- 遺留分侵害額請求は1年以内にしなければならない
- 遺留分侵害額請求は1年以内にしなければならないのは時効にかかるから
- 実務上は1年以内に内容証明郵便を送って時効になるのを止める
【Cross Talk 】遺留分侵害額請求はどうして1年以内にしなければいけないのですか?
先日父が亡くなりました。父は遺言書を残しており長男である兄が全てを相続するとして次男である私は一切相続させてもらえないという内容でした。不満なので遺留分侵害額請求をしようと思っているのですが、1年以内にしなければならないという情報を見ます。それはなぜですか?
遺留分侵害額請求は1年で時効にかかるとされているからです。ただし、遺留分侵害額請求権の行使さえしておけば、具体的な額で揉めた結果1年を超えても請求は可能です。この行使は実務上内容証明で行います。
そうなんですね、是非詳しく教えて下さい。
被相続人が遺贈や生前贈与をした場合、遺留分を侵害することがあります。遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求をすることができます。この請求権の行使は1年以内にしなければならないとされているのですが、これは遺留分侵害額請求権が1年で時効にかかるからです。このページではその法律上の規定と、実務上その1年以内に何を行えば時効にかからないかについてお伝えします。
遺留分侵害額請求を1年以内にしなければならないとする理由
- 遺留分侵害額請求を1年以内にしなければいけない理由は時効にかかるから
- 1年以内にきちんと行使すれば時効にかからない
遺留分侵害額請求はどうして1年以内にしなければならないのでしょう。
遺留分侵害額請求権は1年で時効にかかるとされているからです。ただし、1年以内に請求さえすれば額が確定しなくても取り戻す事が可能です。
遺留分侵害額請求を1年以内にしなければならない理由は時効にかかるからです。
遺留分・遺留分侵害額請求とは
まず、遺留分・遺留分侵害額請求についておさらいしましょう。 遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に相続において最低限保証されているものです(民法1042条)。 遺贈や生前贈与で、遺留分に相当する遺産の受け取りができなかった相続人は、遺贈や生前贈与で遺産を受け取った人(受遺者・受贈者)に対して、遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条)。この請求のことを、遺留分侵害額請求といいます。なぜ遺留分侵害額請求を1年以内にしなければならないか
この遺留分侵害額請求は1年以内にしなければならない、と説明されます。 その理由は、民法1048条において、遺留分侵害額請求権は1年で時効にかかるとされているからです。 民法1048条の条文を確認しましょう(遺留分侵害額請求権の期間の制限) 第千四十八条 遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
この規定から、・相続開始の時から10年を経過したときも同様
「相続」は被相続人が亡くなったときに開始します(民法882条)。 しかし、遺留分を侵害されている贈与や遺贈があるというのは、後に遺産を調査してみたり、遺言書の中身を確認するまではわかりません。 1年間の時効は、相続開始=被相続人が亡くなったときから進行するのではなく、遺留分の侵害を知ったときから進行することとなることを確認しましょう。 また、自身の遺留分が侵害されていることを知らなかったとしても、相続開始=被相続人が亡くなったときから10年が経過したときにも、遺留分侵害額請求権の行使ができなくなることに注意しておきましょう。
1年以内にしなければならないのは行使のみ
では、具体的に遺留分侵害額の請求として、何をしなければならないのでしょうか。 上述の条文からは遺留分侵害額請求権を行使すれば良いとするのみです。 一般的に時効をとめるためには裁判を起こさなければならないなど、一定のアクションを要求されます。 しかし、遺留分侵害額請求については、遺留分の請求をすることを通知すれば良いとされています。 遺留分の金額について争っている場合でも、1年以内の期間に通知がされていれば、時効で請求権が消滅することはありません。遺留分侵害額請求を1年の時効期間以内に終わらせるための実務上の処理
- 遺留分侵害額請求を行う際に実務上は内容証明を利用する
- 内容証明は送った文書の内容を証明してくれる
なるほど…では1年以内にまずは通知しようと思うんですが何か特定の方法はあるのでしょうか。
法律上特定された方法はないのですが、実務上は必ず内容証明を利用します。配達証明のついた内容証明を利用して、1年以内に遺留分を請求したことを証明できるようにします。
では、実務上どのようにして遺留分侵害額請求をするかについて確認しましょう。
遺留分侵害額請求は配達証明付き内容証明で行う
遺留分侵害額請求は、配達証明付き内容証明を送付して行います。 内容証明は、郵便法で特殊取扱として規定されているもので、文書の内容を証明してもらうことができるものです(郵便法48条)。内容証明で遺留分侵害額請求の通知をすることで、遺留分の請求をきちんと行ったことを証明してもらえます。 ただ、遺留分侵害額請求が1年以内に相手に対して通知されたことも同時に証明する必要があるため、同じく特殊取扱である配達証明を併せてつけます(郵便法47条)。 これによって、1年以内に遺留分の請求の通知をしたことが証明されることになります。
相続分・遺留分金額について争いがある場合
遺留分は、基本的には自身の法定相続分の1/2とされます(直系尊属のみが相続人である場合には1/3)。 そのため、相続分となる遺産がいくらかに争いがある場合には、遺留分の金額についても争いが発生します。 遺留分侵害額請求は、その正確な遺留分の計算ができていなくても請求が可能で、金額に争いがあっても請求さえしてしまえば後日金額を確定させることが可能です。 実務的には、金額を特定せずに遺留分の請求を行う旨通知することが多いです。まとめ
このページでは、遺留分侵害額請求を1年以内にしなければならないとする理由と、実務上1年以内に何をするのかについてお伝えしました。 時効についての基本的仕組みを確認したうえで、1年以内にまずは配達証明付き内容証明を送る、ということを確認しておいてください。
- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
- 遺留分の割合や計算方法が分からない
- 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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