- 寄与分は特別な貢献をした相続人の相続分を増やす制度で、遺留分は遺産の最低限の取り分を確保する制度である
- 寄与分が認められる場合でも遺留分の金額は変化しないが、相続人が相続する金額が変わってくる
- 寄与分で争いになりそうな場合は、早めに弁護士に相談すべき
【Cross Talk 】寄与分と遺留分はどのような関係にあるの?
父の遺産の相続について、私に寄与分が認められるらしいのですが、他の兄弟から遺留分に影響があるのではないかと文句を言われています。寄与分と遺留分はどのような関係にありますか?
遺留分の金額は法定相続分を基準に決まるので、寄与分が認められる場合でも、遺留分の金額は変わりません。ただし、ある相続人に寄与分が認められることで、他の相続人が相続できる金額が変わってきます。
寄与分によって遺留分の金額は変わらないものの、相続できる金額には影響があるんですね。寄与分と遺留分の制度についても教えてください!
被相続人の家業や介護などに特別な貢献をした相続人には、寄与分が認められる可能性があります。 一方、配偶者や子などの一定の相続人には、遺産の最低限の取り分として遺留分が認められます。 寄与分が認められる相続人は、貢献の度合いによって相続できる金額が増えるので、他の相続人にとっては遺留分に影響がないか気になるところです。 そこで今回は、寄与分と遺留分が関係するのかについて解説いたします。
寄与分と遺留分の関係
- 寄与分は特別な貢献をした相続人の相続分を増やす制度で、遺留分は遺産の最低限の取り分を確保する制度である
- 寄与分が認められる場合でも遺留分の金額は変化しないが、相続人が相続する金額が変わってくる
寄与分と遺留分はどのような関係にありますか?
遺留分に金額は法定相続分によって決まるので、寄与分が認められる場合でも、遺留分の金額は変化しません。ただし、寄与分が認められる場合は、各相続人が相続する具体的な金額が変わってきます。
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について特別な貢献をした相続人がいる場合、貢献の度合いに応じて、相続分を増額させる制度です。 被相続人の財産の維持・増加とは、相続人の貢献によって財産の支出を防ぐことができたり、財産を増やすことができた場合のことです。 例えば、長男が住み込みで熱心に被相続人の介護をしたことで、介護士に介護を依頼した場合に発生する費用を節約できた場合は、財産の維持が認められる可能性があります。 また、次男が無償で被相続人の家業を手伝ったことで、家業による収入が増加した場合は、財産の増加と判断されることがあります。 寄与分が認められる相続人がいる場合、通常の相続分よりも多く遺産を相続させることが可能です。 例えば、遺産の総額が1,000万円であり、相続人として長男と次男の2人がいるとします。 被相続人を熱心に介護したことで、長男に200万円の寄与分が認められるとしましょう。 寄与分がない場合には、長男と次男がそれぞれ500万円ずつ相続することになりますが、寄与分が認められた場合、長男は200万円の寄与分だけ多く相続します。その結果、1,000万円の遺産のうち長男は600万円を相続し、次男は400万円を相続します。遺留分とは
遺留分とは、一定の法定相続人について法律によって認められている、遺産の最低限の取り分のことです。 被相続人の妻や子など、被相続人に近い血縁関係にある親族は、被相続人が亡くなった場合に遺産を相続することを期待するのが一般的です。 しかし、愛人にすべての遺産を譲るなど、被相続人の遺言書の内容によっては、被相続人に近い親族が十分に遺産を相続できなくなる場合もあります。 配偶者や子などが遺産を相続できなくなると、被相続人が亡くなった後の生活が難しくなるなどの弊害が生じる可能性が高くなります。 そこで、被相続人に近い親族の遺産に対する期待や利益を保護する制度が遺留分です。 遺留分が認められる法定相続人は、被相続人の配偶者・子(代襲相続の場合は孫)・父母(代襲相続の場合は祖父母)です。 被相続人の兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分は認められません。 遺留分を侵害された場合は、遺留分を侵害するような形で遺産を取得した相手に対して、遺留分に相当する金銭を支払うように請求することができ、これを遺留分侵害額請求といいます。特別寄与料とは
特別寄与料とは、一定の範囲の親族が被相続人に対して特別な寄与をした場合に、寄与の度合いに応じて請求できる金銭のことです。 相続人が特別な寄与をした場合は寄与分が認められますが、寄与分は相続人のみに認められる制度なので、相続人以外が特別な寄与をしたとしても、寄与分は認められません。 例えば、被相続人の長男が介護をした場合、長男は相続人なので寄与分が認められます。 しかし、長男の配偶者は相続人ではないので、長男の嫁が熱心に被相続人の介護をしたとしても、寄与分は認められないのです。 特別な寄与をしたことは同じであるにも関わらず、相続人でなければ貢献が認められないとすると、不公平な結果になってしまいます。 そこで、相続人以外の一定の親族(配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族)が特別な寄与をした場合に、寄与の度合いに応じて金銭を請求できるようにしたのが、特別寄与料の制度です。 例えば、長男の嫁は相続人ではないので寄与分を請求することはできませんが、3親等内の婚族なので、特別寄与料を請求することができます。寄与分・遺留分の争いの解決方法
- 寄与分を高額に考慮すること自体は可能である
- 寄与分で争いになりそうな場合は弁護士に相談すべき
高額な寄与分をめぐって争いになりそうなので、困っています。
高額な寄与分を設定すること自体は可能ですが、高すぎる寄与分は争いになりがちです。寄与分について争いになりそうな場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。
寄与分を高額に考慮することは許される?
法律上寄与分の上限については規定されていないため、寄与分が高額に考慮されることはあります。 よって、他の相続人が納得するのであれば、遺留分を侵害するほどの高額の寄与分を認めることも法的には可能です。 ただし、調停や訴訟など、裁判所の手続きによって寄与分を算定する場合は、高額の寄与分を認めることで,他の相続人の遺留分を下回る結果にならないように配慮される場合があります。高額の寄与分が認められた場合,遺留分侵害額請求を主張できるか
他の相続人に寄与分が認められたことで、自分の相続分が遺留分を下回ったとしても、寄与分に対して遺留分侵害額請求をすることはできません。 遺留分侵害額請求の対象になるのは、遺留分を侵害するような遺贈や贈与などですが、寄与分は含まれないからです。 例えば、遺産の総額が1,000万円であり、父親が死亡して長男と次男の2人が相続人の場合において、長男に600万円の寄与分が認められたとしましょう。 上記の場合において、次男には250万円(遺産の総額の1/4)の寄与分が認められます。 寄与分に基づく相続の割合は長男が800万円で200万円なので、次男は遺留分を50万円下回った金額しか相続することができません。 しかし、寄与分による相続分の増加は遺留分侵害額請求の対象ではないので、次男は長男に対して50万円を請求することはできません。寄与分で争いそうなときには弁護士にご相談を
寄与分について相続争いが発生しそうな場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。 ある相続人について寄与分が認められた場合、他の相続人にとっては自分の取り分が減ることになるので、取り分を認めようとしない可能性があります。 寄与分について争いが発生すると、遺産をどのように分割するかを決めることができず、相続手続きが進まなくなってしまう場合があります。 争いが激しくなる前に早めに弁護士に依頼すると、弁護士が適切な主張や証拠に基づいて他の相続人と交渉できるので、相続争いを防止しつつ、適切な金額の寄与分を得やすくなるのがメリットです。まとめ
寄与分とは、被相続人に特別な貢献をした相続人に認められるもので、遺留分は一定の相続人について遺産の最低限の取り分を確保する制度です。 遺留分の金額は法定相続分によって決まるので、ある相続人に寄与分が認められる場合でも、他の相続人の遺留分の金額は変わりません。 しかし、寄与分が認められて相続できる金額が増えると、他の相続人が相続できる金額に影響があるので、寄与分をめぐって争いになる可能性があります。 寄与分をめぐって争いになりそうな場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
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