- 遺産分割協議の期限
- 遺産分割協議のやり直しができる場合と必要な手続き
- 遺産分割協議をやり直した場合の税務の処理
【Cross Talk 】遺産分割協議の期限はいつまで?やり直しはできる?
先日父が亡くなり、母・私・弟で相続をしました。
これから相続の手続きを行うのですが、私と弟の仲が良くないので、ゆっくり様子を見ようと思っています。
遺産分割協議はいつまでにしなければならないのか期限みたいなものはありますか?
また、一旦分割協議が終わった後にやり直しはできるのでしょうか。
遺産分割協議に法律上の期限はないのですが、相続税申告期限等を考えるとなるべく早くやっておくべきですね。
やり直しは、遺産分割を行った当事者全員の合意があれば可能ですが、注意も必要です。
遺言書なしに相続が開始すると遺産分割協議をすることになります。
遺産分割協議はいつまでに行わなければならない、という期限はありませんが、なるべく早めに行うべき理由もあります。
とはいえ、急いで遺産分割協議をして、あとで後悔しても、やり直すことは原則としてできません。
このページでは、遺産分割の期限と遺産分割のやり直しについてお伝えいたします。
遺産相続における期限があるもの
- 遺産相続において期限があるもの
- 時効・期限などの制度について
相続には期限があるものが複数ありますよね。
簡単に相続における期限があるものをおさらいしましょうか。
相続において期限があるものについて確認しましょう。
期限があるもの一覧
相続において期限があるものの代表としては次のようなものが挙げられます。
- 死亡届:7日以内
- 生年金:10日以内
- 民健康保険・国民年金:14日以内
- 相続放棄、限定承認:相続の開始を知ってから原則として3カ月
- 準確定申告(所得税):相続の開始を知ってから4カ月
- 相続税申告・納税:相続の開始を知ってから10カ月
- 遺留分侵害額請求権:相続開始・遺留分の侵害を知ってから1年・相続の開始から10年
- 相続回復請求権:相続権の侵害を知ってから5年・相続の開始から20年
- 相続登記:2024年から相続人になったことを知ってから3年
時効と期限について
これらの期限には、時効、届出期限など様々な性質のものがあります。
遺留分侵害額請求権や相続回復請求権のように、一定の権利は、期限が経過すると権利が無くなるという意味で時効にかかります。
それ以外については、手続きの期限を定めており、経過するとペナルティの対象になります。
遺産分割協議の期限
- 遺産分割協議に期限はない
遺産分割協議に期限はないんですね。
おっしゃる通りで法律上の期限はないのですが、なるべく早くしないと後の手続きに差し支えることになります。
遺産分割協議には期限はありません。
遺産分割協議に期限はないが早めにするべき理由
相続に関する手続きとして、相続放棄は原則として相続開始を知ったときから3ヵ月以内に行うこととされていたり、相続税申告が10ヵ月以内に行うこととされていたりして、期限が定められているものがあります。
しかし、遺産分割協議自体については、いつまでに行わなければならないという期限はありません。
ただ、遺産分割協議は様々な手続きを行う前提になっています。
先延ばしにすると様々なリスクが発生しますので、次項で確認しましょう。
遺産分割協議を引き延ばした場合のリスク
- 遺産分割協議を引き伸ばした場合のリスク
- 特に相続税申告では様々な制度が使えないことがある
遺産分割協議を引き伸ばした場合にはどのようなリスクがあるのですか?
銀行預金を下ろせなかったり、特に相続税申告の場合に使える制度が使えないなどの不都合が生じます。
遺産分割協議を引き伸ばした場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
遺産に関する処分ができないリスク
遺産に関する各種処分ができないことが多いです。
例えば、被相続人の預金口座は、その方が亡くなったことを金融機関が確認すると凍結されます。
こうなると、口座からお金を下ろすためには、基本的には遺産分割を行い、遺産分割協議書を添付書類として解約の手続きをしなかればなりません。
一部の預貯金を下ろすこともできますが、従来のようにカードを持っていってすぐにお金をおろせるわけではなく、銀行での所定の手続きや、裁判所での所定の手続きが必要です。
その他の資産についても、処分のためには、通常、遺産分割協議書の提出を求められます。、遺産分割協議を引き伸ばすと、基本的には遺産を処分をすることができません。
相続人が増えてしまい相続が複雑になるリスク
遺産分割を伸ばしていると、共同相続人の一人が亡くなるなどしてさらに相続が発生し、相続が複雑になることがあります。
例えば、父・子ども2名が相続人である場合で、その子どものうち1人が亡くなって孫が2名いる場合には、相続人はその時点で計4名となります。
手続きがより複雑になるのみならず、関係が疎遠であるなどの理由から、合意形成が困難になる可能性も否定できません。
遺産を単独で処分されてしまうリスク
遺産を単独で処分されてしまうリスクがあります。
例えば、不動産がある場合に、いったん共有者名義としたうえで共有持分のみ売却することが可能です。
その結果、共有持分を買い取った会社などが遺産分割に入ってくることがあり、トラブルになることもあります。
他の手続きに影響する
遺産分割協議には期限がなくても、相続税申告には相続の開始を知った日から10ヵ月の期間制限があります。。
相続税申告をする際によく利用される制度として、小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減がありますが、これらは遺産分割を終えていることが適用の条件です。
遺産分割が終わっていないからといって申告期限を伸ばすことはできません。申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合、いったんこれらの制度の利用をしないで相続税申告・納税を行い、遺産分割が終わってから更正の請求という形で申告をやりなおして還付をしてもらわなければなりません。
そのために、税理士に依頼する場合には、余分な手間や費用がかかることになります。
遺産分割のやり直しは原則できない
- 遺産分割のやり直しは原則できない
遺産分割のやり直しはすぐにできるのでしょうか。
一度合意したものを簡単に覆すことができるのは妥当ではなく、原則はできません。
遺産分割のやり直しは原則できないことを確認しましょう。
遺産分割協議が整うと。協議の内容を遺産分割協議書に記載します、協議の内容に従って、飼相続人は、各自で、相続した遺産を引き継ぐ手続きを進めているのが通常の流れです。
この段階になってから、誰かが「やっぱり自分が土地を相続したい!」といって、やり直しをしなければならないとなると、いつまでたっても遺産分割が進みません。
遺産分割協議も、相続人間でする合意、約束ですから、一度合意をしたら変更できないのが原則です。
例外的に遺産分割のやり直しができる場合
- 遺産分割協議が無効・取消になってやり直す場合
- 遺産分割協議を全員の合意のもとでやり直す場合
- 新たな遺産がみつかった場合の遺産分割のやり直しは原則できない
原則ということは例外があるのですね。遺産分割のやり直しはすぐにできるのでしょうか。
はい、遺産分割協議が無効・取消となる場合や、全員が同意をしている場合には可能です。
例外的に遺産分割協議のやり直しができる場合について確認しましょう。
遺産分割協議に無効・取消原因がある場合
遺産分割協議が無効・取消ができるような場合には、遺産分割協議がやり直しになります。
例えば、相続人全員が参加していないなど遺産分割協議が無効である場合には、相続人全員で遺産分割協議をやり直さなければなりません。
また、遺産分割協議にあたって詐欺や強迫が用いられた場合には取り消すことができ、遺産分割協議はやり直しとなります。
遺産分割協議を行った相続人全員の合意がある場合
遺産分割協議をしたものの、その後事情が変わって当事者全員が別の分け方がよかった、と考えを変えることもあるでしょう。
その場合には、再度、全員の合意のもと遺産分割協議をやり直すことになります。
新たな遺産が見つかった場合
遺産分割協議をした後に、被相続人の新たな遺産が見つかる場合もなくはありません。
この場合、新たな遺産がどの程度のものか、事前にどのような取り決めをしているかによって場合分けして考える必要があります。
まず、新たな遺産がかなり高額のもので、その遺産があることを知っていれば、従前の遺産分割協議はしていなかったと一般的にも言える程の場合には、遺産分割協議は民法95条の錯誤取消の対象です。遺産分割協議を、取り消したうえで、もう一度協議をやり直すことになるでしょう。
他方、新たな遺産が従来の遺産分割協議を覆す程度のものではない場合には、新たに見つかった遺産について遺産分割協議を行うことになります。 この場合でも、当事者が合意のうえで遺産分割協議を一からやり直すこと自体は可能です。
新たな遺産が見つかった場合については「遺産分割協議後に新たな財産が発覚!この場合どうすればいいの?」でお伝えしていますので気になる方は参考にしてください。
遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない
- 全員の合意で遺産分割協議をやり直すのに期限はない
- 取消権を行使する場合には5年の時効がある
遺産分割協議のやり直しはいつまでにしなければならないのでしょうか。
特に遺産分割協議はいつまでにやるということは定められていませんので、いつでも大丈夫です。
ただし、取消権を行使してのやり直しである場合には、追認をすることができるときから5年の時効があるので注意をしましょう。なお、遺産分割から20年でも時効により取消権が消滅します。
遺産分割協議のやり直しをするのに期限はない
遺産分割協議をやり直す場合には期限はありません。 しかし、取消権を行使してやり直す場合には時効がありますので以下で解説いたします。取消権には時効(期限)がある
遺産分割協議が錯誤、詐欺または強迫によって行なわれて取り消すことができる場合、取消権については、追認できるときから、5年の時効で消滅すると規定されています(民法126条)。
そのため、遺産分割協議のやり直しに期限はないものの、取り消すことができるのは5年です。
遺産分割のやり直しをする場合の注意点
- 遺産分割をやり直しても相続人から遺産を取得している第三者がいる場合には取り戻せない
- 不動産の所有者が変わった場合には費用がかかる
遺産分割をやり直す場合に注意しておくことはありますか?
やり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していたような場合には第三者から取り戻すことができません。
遺産分割をやり直す前に相続人が第三者に遺産を譲渡していた場合
遺産分割をやり直す場合に注意すべきなのが、やり直し前に当初の取得者が第三者に遺産を譲渡してしまっているような場合です。
遺産分割をやり直すからといって、第三者に譲渡された遺産は基本的には取り戻せません。
例外的に、やり直しの原因が詐欺の場合で遺産分割を取消すとき、第三者が詐欺を知っていたような場合には、民法96条3項によって取り戻せる可能性はあります。
例えば、第三者が、被相続人が保有していた遺産を譲り受けたくて、入れ知恵をした相続人が遺産分割において詐欺を行った場合です。
もっとも、このような場合は珍しいので、既に第三者に譲渡されている遺産がある場合には、基本的には取り戻せないと考えておきましょう。
不動産を譲渡するときに費用がかかる
不動産の持ち主が変わる場合には、不動産の登記を変更することになります。 不動産登記にかかる登録免許税や、登記を司法書士に依頼した場合には司法書士に対する費用の支払いもあることを確認しておきましょう。
遺産分割協議をやり直した場合には不動産登記の名義変更が必要
- 遺産分割協議のやり直しで不動産の名義人に変更があった場合には不動産登記の名義変更を行いましょう
遺産に不動産があるのですが何に注意をすべきでしょうか?
不動産がある場合には不動産登記の名義変更をしておきましょう。
遺産分割協議をやり直す場合、遺産の中に家・土地・マンションなどの不動産がある場合には、不動産登記の名義変更を行いましょう。 法定相続分に基づく相続登記がされている場合には、遺産分割を原因とする不動産登記をします。 最初の遺産分割協議によって決められた内容で登記をしている場合には、一度その登記を抹消したうえで、遺産分割後の相続登記を行います。
遺産分割協議をやり直した場合には課税される
- 遺産分割協議をやり直した場合の課税関係
ちなみに遺産分割協議をやり直すときに、大きなお金が動くと税金がかかったりしますか?
はい、遺産分割協議のやり直しによって遺産の移動が譲渡・交換・贈与にあたると判断される場合、課税の対象となる可能性があります。
遺産分割協議をやり直した場合には、課税の問題は発生するのでしょうか。
この点について、遺産分割協議のやり直しがあった場合の課税は、譲渡・交換・贈与があったものと判断されることがあります。
そのため、相続する遺産が減った方から相続する遺産が増えた方に対する贈与等にあたると評価されれば贈与税が、譲渡・交換と評価できる場合には所得税等がかかるかもしれません。
最初の遺産分割協議から新しく遺産が移転したものと評価をする以上、既に相続税を申告・納付している部分については影響ありません。
なお、最初の相続が無効・取消ができる場合には、遺産分割後に遺産を移転したという評価をすることはできないため、このような税金はかかりません。
遺産分割協議でトラブルになっている場合には弁護士に相談すべき
- 遺産分割協議でトラブルになっている場合には弁護士に相談すべき
- 法的なサポート以外にも遺産の調査や代理人として冷静な交渉をしてもらえるなどのメリットがある
遺産分割協議でトラブルになってしまっている場合にはやはり弁護士に相談したほうが良いでしょうか。
はい、法的なサポートはもちろんですが、当事者間で感情的に交渉を続けるよりも、弁護士が間にはいることで冷静に交渉ができ、トラブル解決がしやすいこともメリットです。
遺産分割協議でトラブルになっている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
その理由としては次のような理由があります。
遺産の調査によって遺産漏れをなくしトラブルを防ぐことができる
弁護士が遺産分割協議のお手伝いをする場合には、事実関係をしっかり調査します。
特に遺産の調査は念入りに行うので、あとから遺産が出てきてトラブルになるような可能性は低くなります。
取り消し・無効を主張する際には法的に難しい判断が伴うことがある
遺産分割のやり直しをするために、取り消しや無効を主張する際には法的に難しい判断が伴うことが少なくありません。
どうして取り消し・無効といえるのかを法的に説明し、相手を説得するのは法律の専門家でなければ至難の技です。
そのため弁護士に相談し、取り消し・無効の主張可能性があるかどうかなどを判断しながら手続きを行うことをおすすめします。
弁護士に依頼すれば冷静な交渉を期待することができる
弁護士に依頼することで冷静な交渉を期待できるかもしれません。
遺産分割についての争いは、お金の支払いを求める紛争などと異なり、感情的な争いになり鋭く対立してしまうことがあります。
頭では落とし所が分かっていても、感情的な対立を優先して、なかなか交渉がまとまらない、ということも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、当事者の間に弁護士が入るため、感情対立を和らげ、紛争解決がスムーズにいくことがあります。
まとめ
このページでは、遺産分割協議をやり直すことについてお伝えしました。 基本的に遺産分割協議のやり直しはできないのですが、例外的にできる場合もあります。
不動産登記や課税といった問題もあるので、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談しながら行うのが良いでしょう。
遺産分割協議に関しては「東京新宿法律事務所|遺産分割協議」で詳しい解説をしていますので、気になる方はご参照ください。
- 遺産相続でトラブルを起こしたくない
- 誰が、どの財産を、どれくらい相続するかわかっていない
- 遺産分割で損をしないように話し合いを進めたい
- 他の相続人と仲が悪いため話し合いをしたくない(できない)
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