遺産分割で一部分割を利用する場合と注意点を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 一部の遺産について相続人で意見が別れている遺産の調査が終わらない場合などでは一部分割を利用することがある
  • 未分割の遺産が不動産の場合2024年からの相続登記義務化に注意する
  • 未分割の遺産相続税の計算に気を付ける
目次

【Cross Talk 】一部分割はどのような場面で利用されるのか

遺産分割で一部分割を利用するのはどのような場合でしょうか?

不動産の取り扱いが決まっていない、特定の遺産のみ意見が別れている場合などでは一部分割を行うことがあります。

遺産分割で一部分割が利用される場合、注意点とは?

遺産を全て調査できていない、一部の遺産について意見が別れている事例などでは遺産分割で相続人全員が合意のうえで一部分割を行うことがあります。 一部分割は民法でも請求が認められていますが、未分割の遺産の取り扱いや相続税の問題が生じますので注意点を把握する必要があります。今回は遺産分割にあたって一部分割を利用する場合、注意点を解説していきます。

遺産分割にあたって一部分割を利用する場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産は一部分割ができる
  • 遺産の調査が終わらない、協議で意見がまとまらない不動産がある場合などで一部分割を利用することがある

遺産を一部だけ分割することができると聞いたのですが…

遺産の調査が終わらない、特定の遺産のみ相続人の意見が別れている場合では利用されることがあります。

遺産の調査が終わらない

基本的に遺産は遺言書または遺産分割協議によって分割されますが、全て分割することが難しい場合には一部分割を行うことが可能です。 例えば遺産の中に複数の不動産があり全てを把握できていない、種類が多く調査に時間がかかるといった場合では一部分割を先に行うことがあります。

一部の遺産についてだけ争いが生じている

貴金属や骨とう品、収集品など個人の嗜好によって価値判断が別れるもの、含み損がある株式・投資信託などの有価証券などは相続人の間で意見が合わない事例が多い傾向にあります。

有価証券については、資産運用をしたことのない相続人にとっては相続した後どう取り扱って良いのか分からないことから別の財産を希望することもあります。

一部の遺産について相続人の間で意見が合わないときには「とりあえず一部分割を行う」という方法があります。

遺産分割協議で結論が出ない不動産がある

不動産は遺産の中でも取り扱いが難しいと言われています。 特にローンが残っている不動産、築年数が古く価値が低いもの、農地、共有名義の不動産などは相続人の間で意見が別れる事例は少なくありません。 遺産分割協議で結論が出ないときには不動産を除いて一部分割を行うことが可能です。

一部分割をする場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 民法では相続人の間で意見が別れる、協議が出来ない際に一部分割が認められている
  • 一部分割を行う際には相続人の間のトラブルや相続税に注意が必要

一部分割を行った場合、相続税はどうしたら良いでしょうか?

未分割の遺産に関しては、民法の規定による相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして計算を行います。

一部分割は法律で認められている

民法907条の2には遺産分割について以下の規定があります。
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない
後半に記されているように一部分割により相続人の利益を害する場合を除いて、一部分割は法律で認められています。 ただ、後述のように相続税や残りの分割の際に先に行った一部分割をどう取り扱うかという問題が生じるため慎重に検討しましょう。

相続登記は2024年から義務化されている予定なので取得後3年以内に登記が必要となる※1

2024年4月から、相続登記が義務化となり取得(又は取得を知った日)から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられます。正当な理由がなく申請されていない場合には10万円以下の過料の対象となりますので注意が必要です。

なお未分割の相続不動産は、相続人全員が法定相続分の割合で不動産を共有で取得した状態となります。※1

トラブルが起こる可能性がある

一部分割は遺産分割協議で結論の出なかった遺産や争いの元となっていた遺産を後で分割する場合もありますので残った遺産を分割する際にトラブルが起こることがあります。 また一部分割を行うことで後に遺産分割を行う際に一部分割をどう反映させるか、意見が別れてしまう事例もあります。

また、一部分割で遺産の2割を分割し後で8割を分割するといった場合では残りの遺産分割の協議で難航してしまうおそれがあります。

協議が長引いてしまった場合、相続税の申告(相続開始の翌日から10ヶ月以内)に間に合わないという問題も想定されます。

未分割の遺産は相続税の計算に注意

相続税法55条※2では、未分割の遺産は「民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする」と記されています。

よって未分割の遺産は実際の相続割合と異なっていても法定相続分で相続税を計算し、基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合には申告・納付の義務が生じます。

ただ、残りの遺産を分割後に相続税の課税価格が異なることが分かったときには、「分割により取得した財産の課税価格」を基礎として更正の手続き※3ができます。 更正の手続きとは、既に行った申告について税額が過大である際に減額の更正を求める手続きです。

まとめ

一部分割は一部の遺産が相続人の間で意見がまとまらない、遺産の調査が終わらず遺産分割協議ができないなどの事例で利用することができます。一部分割は、未分割の遺産の取り扱いについて相続人の間で意見が別れる、相続税の更正手続きを行わなければいけなくなってしまうなどの点に注意が必要です。遺産分割協議や相続について悩みやトラブルがある方は、相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
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