遺産分割における立替金の取り扱い方法を3パターン別に解説いたします。
ざっくりポイント
  • 立替金は被相続人が立て替えた生前被相続人に対して第三者が立て替えた相続人が立て替えたという3つのパターンがある
  • 被相続人が立て替えたお金は債権、被相続人が立て替えてもらったお金は負債となる
  • 相続人が立て替えた場合は遺産分割と同時に精算するケースが多い
目次

遺産分割で立替金はどのように処理されるのか

父が亡くなり、生前に親戚の負債を立て替えていたことが分かりました。どのように処理すれば良いのでしょうか?

被相続人(亡くなった方)が生前に親戚の負債を立て替えていた場合には、債権として相続することになります。なお、相続人が被相続人のために立て替えている場合には、負債として相続することになるので、注意が必要です。。

そういえば葬儀費用は私が立て替えました。他のパターンも含め、詳しく教えてください!

遺産分割でのパターン別の立替金の処理方法とは

遺産分割における立替金には、被相続人が立て替えていた、第三者が被相続人のために立て替えていた、相続人が葬儀費用などを立て替えたという3つのパターンが考えられます。 パターン別で遺産分割での処理方法が異なり相続税の計算にも影響があります。 今回は立替金のパターン別の取り扱いと相続税の計算について、相続人が立て替えた際の精算方法について解説していきます。

被相続人が立て替えていた立替金は債権として取り扱う

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人が立て替えたお金は債権として相続財産に含まれる
  • 相続税の計算時には「元本の価額と利息の価額の合計額」で評価する

被相続人が立て替えたお金はどうなりますか?

「債権」として相続財産に含まれます。時効がありますので注意しましょう。

立替金は債権として相続財産の対象になる

被相続人が本来誰かが支払うべきお金を立て替えた場合、債権として相続財産となります。 債権とは特定の人に金銭や特定の行為を請求できる権利です。立替金は、立て替えた方が立て替えを受けた方に対して、金銭を請求できる権利となります。 立替金の他には、売掛金・貸付金・手形金請求権などが相続の対象となる債権です。

相続における債権の取扱

債権を相続することで、相続人は金銭などを請求できる権利を引き継ぎます。 民法では、債権の時効について以下のように記されています。
民法166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
一定期間を過ぎると時効により権利を失ってしまいますので注意しましょう。

相続税がかかる場合の評価の方法

相続財産の合計額が、基礎控除額「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超えた際には原則相続税が課されます。

相続財産に立替金の貸金債権が含まれるとき、どのように評価すべきなのでしょうか? 相続税の評価では、立替金は「元本の価額と利息の価額の合計額」で評価されます。 元本の価額とは返済されるべき金額を指し、利息は相続税の課税時に既経過利息として支払いを受けるべき金額です。なお利息のうち未収の地代・家賃その他の賃貸料、貸付金の利息などは、収入すべき金額によって評価を行います。

なお、例えば、立て替えてもらった第三者(債務者)が破産をするなどして、立替金の一部または全部を回収することが不能または著しく困難である場合には、回収できない立替金は元本金額に算入しません。 相続税における債権の評価に関しては、専門的な知識が必要になりますので、税理士に相談したほうが良いでしょう。

第三者が被相続人のために生前立て替えていた立替金は負債として取り扱う

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人が立て替えてもらったお金は負債として相続の対象となる
  • 相続税の計算では、債務として「確実に認められるもの」は控除ができる

生前、被相続人がお金を立て替えてもらっていた時はどうなるのでしょうか?

債務として相続財産に含まれます。被相続人の遺産を相続する場合は、各相続人が法定相続分に従って、債務を返済することになります。

立て替えていてもらっていたものは債務として相続される

被相続人が誰かに立て替えてもらったお金は、借金・ローンなどと同様に債務として相続します。 債務額が大きい場合には、相続放棄をしたほうが良いかもしれませんが、その場合、被相続人の全ての相続財産を放棄しなければなりません。 被相続人に預貯金や有価証券などプラスの相続財産がある場合には、債務額と比較したうえで相続放棄をするかどうか慎重に検討しましょう。

相続における債務の処理

相続人が複数いる場合、基本的に債務は法定相続分により相続されます。
民法427条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者または各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、または義務を負う。
遺言書により指定相続がある際には、指定相続分に応じて債務も相続されることになります。

2009年3月24日の最高裁の判決 では、「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言書により相続分の全部が当該相続人に指定された場合、特段の事情のない限り、当該相続人に相続債務も全て相続させる旨の意思が表示されたものと解すべき」と述べられています。

相続税がかかる場合の計算

相続税を計算する際、遺産の総額から債務を控除できます。 控除できる債務は、被相続人が亡くなった時に債務として「確実に認められる」ものです。

「確実に認められる」債務かどうかの判断は難しいため、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

被相続人の死後に相続人の一人が支払った立替金の処理

立替金が発生するケース

被相続人が突然亡くなった場合、葬儀費用等の支払いのためにまとまった金銭が必要になります。、 2019年7月の民法改正により、遺産分割前でも被相続人の預貯金を払い戻し制度が設立されましたが、手続きの利用には戸籍謄本や印鑑証明書などの書類が必要となり、すぐにお金が用意できない場合があります。 このような場合に、相続人の一人が葬儀費用等を立て替えることがよくあります。 相続人が葬儀費用等を立て替えた場合、どのように処理すれば良いのでしょうか?

遺産分割協議と葬儀費用に争いがない場合

各相続人間で、だれがどの遺産を相続するか(遺産分割協議)について争いがなく、葬儀費用についても全員で平等に負担することに同意が得られているのであれば、遺産分割協議の中で葬儀費用等の立替金を精算するケースが多いです。

例えば相続人が2人(A氏・B氏)おり、3000万円の遺産を1/2で分ける際に相続人Aが300万円を葬儀費用として立て替えていたとします。 遺産分割の際には、本来であればAとBは1500万円ずつ分配しますが、Aの立替金があるため、Aは165000万円、Bは1350万円の遺産を受け取る事で立替金の精算ができます。

立替金を支払った時は後のトラブルを防ぐために、立て替えたことが分かるように領収書を必ず保管しておきましょう。

各相続人間で争いがある場合

例えば、遺産をどのように分けるかで揉めてしまい、葬儀費用の立替金の清算についても揉めてしまうことも少なくないです。 では、各相続人間で、葬儀費用等の立替金について争いがある場合には、どうなるのでしょうか。

そもそも、被相続人の死亡後、相続人が立て替えたお金(葬儀費用等)については、相続発生後である以上、当然に遺産に含まれるわけではございません。 葬儀費用を立て替えた場合、誰が負担すべきかについても、法律上明確ではありません。 相続人が共同で負担すべきという見解もあれば、実質的に喪主が負担すべきという見解もあります。

もめてしまいそうな場合には、弁護士等の専門家に相談しましょう。

まとめ

立替金には3つのパターンがあり、被相続人が立て替えたお金は債権、被相続人が第三者に立て替えてもらったお金は債務として取り扱います。 相続人の1人が一時的に立て替えた葬儀費用などは、争いがなければ遺産分割で生産することになります。 遺産分割における債権や債務の考え方や取り扱いは難しく、誰がどのくらい相続するかでトラブルに発展してしまうケースは少なくありません。また、相続税申告も個人で行うのは大変です。トラブルになりそうな場合には、早めに弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
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