- 「遺産分割」がどのようなことをするのかを知る
- 遺産分割の基本的な流れがどうなっているか
- 遺産分割のやり方にはどのようなものがあるか
【Cross Talk】遺産分割って具体的には何をするの?
先日父が亡くなり、母と兄と私で父の遺産を相続することになりました。手続きをするにあたって遺産分割協議書を作る必要があると知りました。遺産分割って具体的には何をするのでしょうか。
どのように遺産を分割するかを話し合うことです。協議の結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
被相続人が亡くなった場合、遺言書がなければ、原則、法定相続分に従った相続をすることになります。 しかし、相続に関する規定は遺産に対する割合のみを記載しており、どの遺産を誰が相続するかは法律で規定されておりません。 そのため、どの遺産を誰に帰属するかを決める必要があります。これが遺産分割です。
このページでは言葉の意味と遺産分割の方法などの基本的な事項についてお伝えいたします。
遺産分割とは?
- 遺産分割の意味
- 遺産分割と相続の関係
遺産分割とはどのようなものですか?
遺産を具体的にどのように分けるのかを決めることです。
まず、遺産分割とはどのようなものかを確認しましょう。
遺産分割の意味
遺産分割というのは、どの遺産を具体的に誰に分けるかを決めることをいいます。 相続時に遺言書がない場合、民法第900条以下に定められた割合で遺産を相続するとされていますが、相続人が数人いるときは、遺産は相続人全員の共有とされており(民法第898条)、どの遺産が誰の取得になるかを定めているものではありません。
そのため、被相続人が家を所有していた場合、自動的に妻のものになる、長男のものになるというものではなく、家は相続人で相続割合に応じて共有になります。これを「妻のものにする・長男のものにする」という場合に遺産分割をします。
遺産分割手続きの流れ
- 遺産分割はいつまでにやるべきという決まりはない
遺産分割に期限などはありますか?また、どのように遺産分割を進めていくのかについても教えてください。
遺産分割は、いつまでにしなければならないという決まりはありません。また、遺産分割の流れについても確認しましょう。
よろしくお願いします!
遺産分割は次のような流れで行ないます。
遺言書有無の確認
まず、遺産全てについて遺言書が作成されているのであれば、遺産は遺言書の通りに分割されます。 そのため、まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。 遺言書の内容を確認して、全ての遺産について言及されているのであれば、その内容に従います。
もし遺言書に全ての遺産についての言及がない場合には、遺言書に記載されていない遺産についての遺産分割を行ないます。 見つかった遺言書が、公正証書遺言書・自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言書以外の場合には検認の手続きを行ないます。
遺産分割協議後に遺言書が出てきた場合
遺産分割協議後に遺言書が出てきた場合にはどのような対応が必要なのでしょうか。 まず遺言書が法律の定める要件を全て満たしている場合には、遺言が遺産分割協議よりも優先されます。 そのため、基本的には遺産分割協議前に戻して、遺言書に記載された状態で遺産を分割しなければなりません。しかし、遺産分割協議をした当事者が合意をすれば、遺産分割協議の内容で分割をしてもかまいません。 ただし、遺言に次の内容がある場合には、相続人の合意だけで遺産分割はできないので注意が必要です。
・遺言執行者が居る場合:遺言執行者の合意も必要・受遺者が居る場合:受遺者の合意も必要
・遺言で認知をしている場合:認知をした子も相続人として遺産分割をする
・遺言で推定相続人の廃除をした場合:家庭裁判所に推定相続人の廃除の申立てを行って廃除された相続人を除いて遺産分割をする
相続人の確認・確定
相続人の確認・確定の作業を行ないます。 具体的には被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて、相続人を調査します。 再婚した場合には、現在の戸籍には載っていなくても、過去の婚姻をしていた時期の戸籍謄本に子どもの記載があることもあります。
子どもである以上は相続人となりますので、遺産分割の手続きで除外することはできないので注意をしましょう。
相続財産の調査
遺産の調査を行ないます。 遺産の確認のみならず、借金・債務などの負債の確認も確実に行ないましょう。 判明している遺産については、権利に関する情報も取り寄せておくと良いでしょう。
例えば、
相続人全員で話し合う
相続人全員で遺産をどのように分割するか話し合います。 法定相続分を目安にした遺産分割が行われることが少なくないと思いますが、相続人の間で合意ができるのであれば、法定相続分とは異なる割合で遺産分割をすることも問題ありません。したがって、相続人の間で合意できるのであれば、被相続人の妻が遺産の全てを取得して、子どもたちの取得はなし、ということもできます。
遺産分割協議書の作成
遺産分割の話し合いが終わったら、遺産分割の内容を書面にして、遺産分割協議書を作成します。 遺産分割協議書を作成する際は、後の手続きを考え、印鑑登録をしている実印で押印することが一般的でしょう。 もし、遺産分割が話し合いで決まらない場合には、後述する調停・審判によって行われます。
遺産分割の手続きの種類
- 遺産分割に関する協議・調停・審判について知っておく
遺産分割をするには話し合いなどの種類があるようですが、手続きの内容をもう少し詳しく教えてもらえますか?
遺産分割には協議・調停・審判があります。それぞれの概要を見てみましょう。
遺産分割の手続きについて、概要を見てみましょう。
遺産分割協議
遺産分割は基本的には話し合いで行い、この話し合いのことを遺産分割協議と呼んでいます。 協議について決まりはありません。相続人の間で協議の方法、遺産の分け方について自由に決めることができます。対面して集まらなければならないなどの決まりがあるわけではありません。 したがって、電話・メール、昨今ではSNSなどを利用してコミュニケーションをとったうえで、当事者全員が納得すれば問題ありません。協議の結果については遺産分割協議書という形で作成して、署名捺印を行います。
遺産分割調停
遺産分割協議での話し合いは、当事者である相続人の間で行われるだけですので、当事者間で合意ができない場合もあります。 このような場合には、裁判所を利用します。裁判所の手続きの中で話し合いをする、これが遺産分割調停です。
調停というのは、裁判官と専門知識を持った2名の調停委員から構成される調停委員会が相続人の間に入ります。当事者の主張を聞き、調停委員が解決案を提示して紛争解決をしようとするものです。当事者が調停委員会から提示された解決案に納得し合意する場合は、調停成立となり、その調書が遺産分割協議書と同じように利用されることになります。調停委員会からの提案に必ず同意しなければならないというわけではありません。調停案に不服があり、当事者が合意に至らない場合は、調停は不成立となり、審判に移ります。
遺産分割審判
遺産分割調停において当事者が合意できなかった場合、審判という手続きに移ります。 審判手続きも裁判所における手続きです。 当事者の主張・証拠に基づいて裁判所が妥当とする判断を下します。
遺産分割の方法
- 遺産分割の方法を知る
遺産分割の方法を教えてください。
対象となるものが分けることができるものか・そうでないのかで考えましょう。
遺産分割は次のような方法によって行われます。
現物分割
現物分割とは、対象となる遺産をそのままの形で分割する方法をいいます。 例としては、不動産は母に、自動車は長男に、などという形でそれぞれの遺産を分けずに行ないます。 非常にわかりやすい分割方法なのですが、不動産のような一つだけ価値が大きいものがある場合は、当事者が相続する価値が不均衡になりやすく、不平等であるとして争いになることがあります。
換価分割
換価分割とは、対象となる遺産を売却してお金にして分割する方法をいいます。 上述した通り、不動産があるような場合だと、不動産を相続した人が遺産の大部分を相続していることになり、相続人の間で不平等が生じます。 そのため、不動産を売却してしまって分割しやすい現金にしてしまえば、法定相続分の通り平等な相続をすることができます。 しかし、売却をしなければならないものについては手元に残すことができない、というデメリットがあります。
代償分割
代償分割とは、遺産を現物で取得する相続人が、他の相続人に金銭を支払うことで相続人の間の取得分を調整する分割方法をいいます。
例えば、子ども2人が相続人である場合で、遺産総額は、不動産と預貯金を合わせて1,200万円で、長男Aが1,000万円の不動産を、長女Bが200万円の預貯金を相続したとしましょう。 法定相続分の通りに分ける場合、長女Bは預貯金200万円の取得となっているので、長男Aが長女Bに対して400万円を支払って解決し、長男Aと長女Bの取得分が、それぞれ600万円となるよう調整します。 対象となる遺産を手元に遺しつつ、平等に相続できる便利な方法ですが、金銭を支払うことができる場合でなければ利用できません。
共有分割
共有分割とは、不動産のような価値が大きな遺産を共有する分割方法をいいます。 不動産を共有にすれば、相続人で平等に所有権を取得することが可能です。 しかし、権利関係が複雑になり、全員の同意がなければ売却できなくなったり、相続人の一人が遺産を使うと他の相続人との関係で不公平になる、などの問題も生じます。
遺産分割でよくあるトラブルと解決方法
- 遺産分割でよくあるトラブルとそのトラブルを解決する方法
遺産分割ではどのようなトラブルが問題になりますか?
遺産分割でよく問題となるトラブルと、その解決方法について確認しましょう。
遺産分割を巡ってトラブルになることがあるのですが、どうやって解決すれば良いのでしょうか。 よくあるトラブルとその解決方法について確認しましょう。
遺産分割に応じない相続人がいる
遺産分割の協議を行なっても応じない相続人が居てトラブルになることがあります。 相続人が遺産分割の内容に納得できないことで、遺産分割に応じてもらえずに交渉すらできなくなるということがあります。 遺産の名義変更や使用・売却などができないほか、相続税の申告で控除が利用できなくなります。 遺産分割に応じない相続人がいる場合には、裁判所で行われる調停・審判を利用して、遺産分割を行います。特別受益・寄与分の額に合意ができない
具体的な相続分を決めるにあたって、特別受益・寄与分の額に合意ができないという場合があります。 特別受益とは、一部の相続人のみが受け取っていた利益のことであり、これがあると相続できる財産が減ることになります。 一方で、寄与分とは被相続人に対する特別な寄与のことで、これがあると相続できる財産が増えることになります。 特別受益・寄与分についてはいくらと算定するかの額に合意ができず、トラブルとなることがあります。 そのため、生前の対策としては特別受益・寄与分があることを見越して遺言をしておくのが良いでしょう。 また実際に争いになってしまって遺産分割ができない場合には、調停・審判を利用することになります。遺産分割の方法について合意ができない
遺産分割の方法について合意ができない場合があります。 遺産分割の方法には、共有分割・現物分割・換価分割・代償分割といった方法があります。 不動産を単独所有にするために現物分割すると、法定相続分とは大きく異なる分割になるためトラブルとなることがあります。 また、誰も利用しない不動産があり共有分割とすることで、管理・維持・固定資産税の支払いなどを巡るトラブルとなることがあります。 不動産の現状と希望に応じた分割方法で交渉をし、合意ができない場合には早めに調停・審判をするようにしましょう。代償分割の代償金の準備ができない
分割方法として代償分割を選びたくても、代償金の準備がすぐにできない場合もあります。 例えば、土地を相続する代わりに、他の相続人に代償金の支払いをすると、土地をする人が十分な現金・預金を持っておらず、現金を相続しない場合には、代償金の準備ができません。 このような場合には、代償金の分割支払いを認めるなどして、柔軟に対応するのが良いでしょう。遺産の額について合意ができない
土地・不動産のように、いくらと評価するかわかりづらいものがある場合、分割する遺産の額について合意ができず、トラブルとなることがあります。 不動産の場合には不動産会社によって査定が異なる場合があるので、相続税や固定資産税の評価のために用いられる計算式を用いるなどして、客観的基準をもとに当事者で話し合い、調停や審判の申立てをするようにしましょう。遺産分割でよくあるQ&A
- 遺産分割でよくあるQ&A
遺産分割でよく質問されることにはどのようなものがありますか?
いくつか確認してみましょう。
遺産分割についてよくあるQ&Aとしては次のようなものがあげられます。
遺産分割の専門家にはどのような人がいるのか
遺産分割や相続については、次のような専門家がおり、それぞれの職域で活躍しています。- 弁護士:相続人の代理人として交渉する・調停・裁判・遺言書の作成・相続放棄など
- 司法書士:相続登記や相続放棄を行う
- 行政書士:遺言書・遺産分割協議書の作成や相続手続きの代行
- 税理士:相続税や贈与税の申告・納税、節税のコンサルティング
- 保険会社:節税に役にたつ保険商品のコンサルティング
- 不動産会社:節税のための土地活用や相続した不動産についてのコンサルティング
連絡がつかない相続人がいる
相続人の中に連絡がつかない相続人がいる場合があります。 よくある例としては、前婚の配偶者との間に子がいるが連絡がつかない、兄弟姉妹が相続人だがまったく連絡先がわからない、といった場合です。 連絡がつかない相続人がいる場合でも、相続人である以上は遺産分割に加わってもらう必要があります。 まず、戸籍を取寄せて本籍地が分かると、戸籍の附票を手に入れることができます。 戸籍の附票に現在の住所が記載されているので、現在の住所に手紙を送り、相続手続きに加わってもらうように依頼しましょう。なお、現在の住所地に居住していない場合には、民法25条所定の不在者となるので、不在者の財産管理人の選任を依頼します。 そして、選任された財産管理人と遺産分割協議を行います。
遺言には絶対従わなければならないのか
遺言には絶対に従わなければならないのでしょうか。 まず、遺言といっても、その様式が不備であり遺言として無効である場合には従う必要はありません。 例えば、自筆証書遺言で日付がないような場合には、遺言自体が無効となります。 また、遺言が有効であっても、相続人全員の合意によって遺言に反する遺産分割をする場合には遺言に従う必要はありません。ただし、遺言執行者・受遺者がいる場合には、これらの合意も必要となります。 以上のような例外的な場合でない限りは、遺言には絶対従う必要があります。 遺留分の侵害をする遺言がある場合も、遺言としては有効で、遺留分を侵害された人は、受遺者・受贈者に対して遺留分侵害額請求をすることになります。
まとめ
このページでは、遺産分割とはどのようなものかをお伝えしました。 遺産分割とはどのようなものか、遺産分割の方法などについて概要を知っていただき、相続で発生する疑問については弁護士に相談して、円満に解決をするようにしましょう。
- 遺産相続でトラブルを起こしたくない
- 誰が、どの財産を、どれくらい相続するかわかっていない
- 遺産分割で損をしないように話し合いを進めたい
- 他の相続人と仲が悪いため話し合いをしたくない(できない)
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