- 任意後見制度とは、判断能力が衰えた場合に備えて、任意後見人を選んでおくこと
- 任意後見契約を締結するには、公証人が作成する公正証書が必要
- 任意後見人が職務を始めるのは、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されてから
【Cross Talk 】任意後見人はいつから仕事を始める必要があるの?
親から任意後見人になってくれないかと頼まれました。今は自分の仕事が忙しいので、きちんと職務を果たせるか心配です。任意後見人の職務はいつから始まるのでしょうか?
任意後見人の職務が始まるのは、本人の判断能力が衰えて裁判所に申立てをして、任意監督人という人が選任されてからです。
本人の判断能力が衰えて申立てをして、任意監督人が選ばれてからなんですね。任意監督人の役割など、任意後見制度の概要についても教えてください!
任意後見制度とは、本人の判断能力が衰えた場合に備えて任意後見人を選んでおき、財産管理や介護サービスの契約締結などを行ってもらう制度です。 任意後見人になることを同意して任意後見制度を締結した場合、いずれは任意後見人として職務を行うことになるでしょうが、いつから始まるのかは気になるところです。 そこで今回は、任意後見人の仕事がいつから始まるのかを解説していきます。
任意後見制度の概要
- 任意後見制度とは、判断能力が衰えた場合に備えて、財産管理や契約の締結などをする任意後見人を選べるしくみ
- 任意後見制度を利用するには、公正証書にして任意後見契約を締結する必要がある
任意後見人になってくれないかと頼まれました。任意後見制度とはどのようなものですか?
任意後見制度とは、本人の判断能力が衰えた場合に備えて、財産管理などを行ってくれる任意後見人を選んで、任意後見契約を締結するものです。任意後見契約は公正証書でしなければなりません。
任意後見制度とは
任意後見制度とは、将来的に自分の判断能力が衰えた場合に備えて、信頼できる人を任意後見人として選んで公正証書により契約を結んでおき、実際に判断能力が衰えた場合に、財産管理や契約の締結などを行ってもらう制度です。後見制度(後見人に財産管理や契約の締結などを行ってもらう制度)には、法定後見と任意後見があります。 法定後見は、本人の判断能力が十分ではない場合に周囲の人などが申立てを行い、裁判所が本人のために後見人を選ぶ制度です。 任意後見は、本人の判断能力がある程度ある場合に、将来的に判断能力が衰えた場合に備えて、本人が自分の意思で任意に後見人を選んでおく制度です。
任意後見制度を利用するには、制度を利用したい本人(委任者)が、財産管理などの手続きを行ってほしい人(任意後見人)を選んで、契約を締結する必要があります。 任意後見をするために委任者と任意後見人が締結する契約を、任意後見契約といいます。一般的な契約(売買契約など)は当事者が合意すれば成立しますが、任意後見契約は本人の利益に大きな影響があるので、公正証書でしなければなりません。
公正証書とは、公証役場に所属する公証人のみが作成できる書類です。公正証書は紛失や改ざんのおそれがなく、証拠としての価値も高いので、遺言書などの重要な書類を公正証書として作成する場合などに利用されます。 任意後見契約を締結するには、公証役場に行って必要な手続きをして(病気などで行けない場合は、公証人に病院や自宅などに出張してもらう方法もあります)、公証人に公正証書を作成してもらうことが必要です。
任意後見人選任の手続きの流れ
任意後見人は本人の判断能力が衰えた場合に、本人の遺産を管理したり、介護サービスなど本人のための契約を締結したりなどの職務を行います。 任意後見制度はその名称の通りに、制度を利用するかどうかは本人の任意です。任意後見人として誰を選任するかについても、基本的に本人が決めることができます。未成年者などの一部の例外を除いて、家族・親戚・友人のほか、弁護士や司法書士などの専門家を選任することも可能です。
任意後見人になることを同意してもらったら、本人と任意後見受任者(任意後見人になることを引き受けた人)が手続きをして、公正証書を作成してもらいます。
任意後見人はいつから仕事を始めるか
- 本人の判断能力が衰えた場合は、家庭裁判所に申立てをして任意後見監督人を選任してもらう
- 任意後見監督人が選任されると、任意後見人としての職務が開始される
任意後見契約を締結したのですが、任意後見人の職務はいつから始まるのでしょうか?
本人の判断能力が衰えたら、家庭裁判所に申立てをして任意後見監督人を選んでもらいます。任意後見監督人が選ばれて確定すると、任意後見人としての職務が開始されます。
任意後見監督人が選任されたら始める
任意後見契約は、本人の判断能力が衰えた場合に備えて締結されるものです。そのため、任意後見人がいつから仕事をはじめるのかについても、本人の判断能力が衰えたときが基準になります。 具体的には、本人の判断能力が衰えた場合に、任意後見受任者や本人の親族などが、管轄の家庭裁判所に対して申立てをします。申立ての内容は、本人の判断能力が衰えて任意後見を開始する必要があるので、任意後見監督人を選任してほしいというものです。 任意後見監督人とは、任意後見人がきちんと職務を行っているかを監督する人で、通常は弁護士や司法書士などの法律の専門家が担当します。
誰を任意後見人として選ぶかは基本的に本人の自由なので、場合によっては任意後見人がきちんと職務を果たせない可能性があります。 任意後見人が職務を果たせない場合、任意後見をした意味がなくなってしまうので、本人の利益を保護するために、任意後見監督人が選ばれるのです。
そして、その任意後見監督人が選任されてから、任意後見人は職務を開始します。任意後見監督人の選任をどのタイミングで行うかは契約の内容によります。通常は、ご本人に判断能力があるうちに契約をし、判断能力が衰えてから任意後見監督人の選任申し立てをします(将来型)。しかし、ご本人の判断能力が衰え始めている段階(被補助人や被保佐人に当たる状態)で契約を締結し、同時に選任の申し立てを行う場合(即効型)や、判断能力がある時点から、任意後見人となる人に財産管理を任せ、本人の判断能力が衰えた段階で任意後見監督人の選任を申し立てる場合(移行型)もあります。 いずれにせよ、任意後見人の職務開始は、任意後見監督人が選任されてから、となります。
任意後見人は簡単に仕事をやめられない
家庭裁判所が任意後見監督人を選任して確定すると、任意後見受任者は任意後見人となり、任意後見契約に定められた職務を開始します。 任意後見監督人が選任された後は、本人が任意後見人を解任したくなったり、任意後見人が職務をやめたくなったりした場合も、簡単に解除することはできません。 任意後見人が、契約をいつでも解除し、辞任できるとすると、本人の利益を著しく害してしまう可能性があるからです。任意後見監督人が選任された後に任意後見契約を解除したい場合は、正当な事由(例:任意後見人が仕事の都合で遠方に転居しなければならなくなり後見業務ができなくなった、任意後見人が病気になってしまい後見業務ができなくなった等)があり、かつ家庭裁判所の許可を受けた場合にのみ、解除することができます。
なお、任意後見監督人が選任される前については、公証人の認証を受けた書面を作成すれば、原則としていつでも任意後見契約を解除することが可能です。
まとめ
任意後見人の仕事が始まるのは、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したらです。 任意後見契約を締結した委任者の判断能力が衰えた場合に、任意後見受任者などが申立てをして、家庭裁判所が任意後見監督人を選びます。 任意後見監督人の選任が確定すると、任意後見受任者は任意後見人となり、契約の内容に基づいて職務を遂行します。 気になる方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
- 判断力があるうちに後見人を選んでおきたい
- 物忘れが増えてきて、諸々の手続きに不安がある
- 認知症になってしまった後の財産管理に不安がある
- 病気などにより契約などを一人で決めることが不安である
無料
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