- 成年後見制度の概要
- 死後事務委任契約の概要
- 成年後見制度と死後事務委任契約は適用される場面が違うので両方活用することもできる
【Cross Talk 】成年後見制度と死後事務委任契約はどちらがいいですか?
私も高齢で自分の終活について考えています。いろんな制度がある中で、成年後見制度と死後事務委任契約があるのですが、どちらのほうが良いのかをご相談したいです。
どちらも終活の中でよく紹介される制度ですね。ただこれらはどちらか一方という関係にあるものではないので、両方とも利用することもできます。
そうなんですね!詳しく教えてもらえますか?
終活をしていると、様々な制度が紹介されることがあります。成年後見制度・死後事務委任契約もそのような制度として紹介されます。ではこの制度の関係はどのようなものなのでしょうか。 成年後見制度は認知症・高齢などによって判断能力が衰えた場合に、本人保護のためにいわゆる保護者のような人をつける制度です。一方で死後事務委任契約は、死後に発生する事務処理を委託するもので、本人が亡くなった後に効力を発揮します。成年後見は生前のことを取り扱うのに対して、死後事務委任契約は死後のことを取り扱うものであるため、どちらか一方というものではなく、両方上手く使うことで生前~死後の家族の負担をへらすことができます。
成年後見制度とは
- 判断能力が衰えたときに本人の保護が目的で保護者のような人をつけるのが成年後見
- 成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度がある
まず、成年後見制度とはどのようなものですか?
判断能力が衰えたときに本人の保護を目的として保護者をつける制度です。法定後見制度と任意後見制度について知っておきましょう。
成年後見制度とはどのようなものか確認しましょう。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、ある人の判断能力が衰えたときに、本人の保護をするために、成年後見人といういわゆる保護者のような人をつけて、本人の財産管理・療養看護を支える制度をいいます。 日常生活を営むためには、食料品の購入や、住宅を借りる、雇用契約を結ぶなど、契約を中心とした意思表示が欠かせません。契約をするには、契約をしたことの意味が把握できる能力(意思能力)が必要で、このような能力のない人がした契約は無効となります(民法3条の2)。 認知症・加齢・精神疾患などによって、日常生活を送るための判断能力が衰えることがあり、このような場合に本人を保護するために、保護者をつけて本人の財産管理・療養看護のサポートをしようというのが成年後見制度です。 この成年後見制度には法定後見制度・任意後見制度があります。
法定後見制度とは
法定後見制度とは、すでに判断能力が衰えた人のために、親族などの申立権者が家庭裁判所に申立てをして、成年後見人を選んでもらう形の成年後見制度です。 判断能力の衰え方によって、後見・保佐・補助といったものがあり、必要に応じて後見人(成年後見人)・保佐人・補助人が本人のサポートを行います。任意後見制度とは
法定後見制度は本人の判断能力が衰えてしまった後に申立てをするので、誰が成年後見人になるかを、サポートされる本人が選ぶことができません。 そこで、あらかじめ成年後見人となる人を選んでおいて、自分の判断能力が亡くなった際に成年後見人になってもらうことができるのが任意後見制度です。 任意後見制度は、事前に任意後見契約を公正証書で作成しておく必要があるので注意が必要です。死後事務委任契約とは
- 死後事務委任契約とは
- 死後事務委任契約の手続き
死後事務委任契約とはどのようなものでしょうか?
死後に発生する手続きについての代行を依頼しておく契約のことをいいます。トラブルになることを避けるために契約書を公正証書で作成しておくのが望ましいです。
死後事務委任契約とはどのようなものでしょうか。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、死後に発生する手続きについて、生前に委託しておく契約のことをいいます。 人が亡くなると相続の他に、死亡届の提出といった役所への届け出など、多数の手続きを必要とします。 これらには期限が定められているものもある一方で、書類を作成して添付書類を集める必要があるため、非常に面倒です。 死後事務委任契約は、面倒な死亡後の手続きについて、生前に特定の人に頼んでおく契約です。死後事務委任契約の手続きの方法
死後事務委任契約は、亡くなった後の自分に関する事務処理を依頼したい本人が、依頼を考えている相手と契約を結ぶ方法で行われます。 契約なのでその方式については自由なのですが、本当にそのような契約があったのか・その契約は本当に本人の意思に基づいてされたものなのか、などについてトラブルになるケースもよくあります。 公正証書であれば、公証人という公的な身分を有する人が、本人の意思をしっかり確認した上で作成したと考えられるのが一般的ですので、公正証書によって契約書を作成することが推奨されます。成年後見制度と死後事務委任契約の関係
- 成年後見制度と死後事務委任契約は利用するシチュエーションが異なる
- 終活として両方利用することも検討すべき
成年後見制度と死後事務委任契約は、どちらにするかではなく使われるシチュエーションが違うのですね。
そのとおりです。自分の判断能力がなくなったときのことを任意後見で決めておき、亡くなった後の処理を死後事務委任契約で決めておく、というように両方を利用することも検討して良いでしょう。
成年後見と死後事務委任契約の関係性
成年後見制度と死後事務委任契約はどのような関係にあるのでしょうか。 終活の制度として、両方の制度を目にします。成年後見制度は、生存中に判断能力が不十分となったときのための制度です。 一方で、死後事務委任契約は自分が亡くなった後のことを依頼するための契約です。 つまり、この2つは利用するシチュエーションが違います。 そのため、成年後見制度と死後事務委任契約のどちらが良いのか、という関係にはありません。 もし、終活において、老後から自分が亡くなった後のことまでを考えている状況なのであれば、老後に判断能力が亡くなった場合のために任意後見契約を結んでおき、死後の事務処理について別途死後事務委任契約を結んでおくことも可能です。
同様に、終活として利用される、遺言書や家族信託など、他の制度もあわせて検討することも必要で、どのような対策が良いかは弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
このページでは、成年後見制度と死後事務委任契約の関係についてお伝えしました。 判断能力が無くなったときに利用される成年後見制度と、死後の事務処理を委託しておく死後事務委任契約は、どちらが良いか?という関係にあるわけではなく、両者は別々のシチュエーションにおいて、それぞれの課題を解決するために使われます。 家族に必要上の負担はかけたくないことを第一に考える場合には、両方の制度、さらには遺言書や家族信託などの制度の利用を検討すべきです。 どのような制度をどう利用するかは、本人の希望と財産・親族の構成などにもよるので、詳しく知りたい方は弁護士に相談することをおすすめします。
- 判断力があるうちに後見人を選んでおきたい
- 物忘れが増えてきて、諸々の手続きに不安がある
- 認知症になってしまった後の財産管理に不安がある
- 病気などにより契約などを一人で決めることが不安である
無料
この記事の監修者
最新の投稿
- 2023.08.11相続全般自殺で損害が生じた場合は相続人が損害賠償義務を負う?自殺の際の相続手続きについても解説
- 2023.08.11相続全般個人事業主が亡くなった場合の相続手続きはどうなるの?
- 2023.07.18相続全般息子の配偶者にも遺産をあげたい場合の対応方法を弁護士が解説
- 2023.07.18相続全般被相続人が外国人だったら違いはあるの?相続人が外国人だったら?