- 代償分割は不動産を分割したり、売却したりしたくない場合に適している
- 代償分割については遺産分割協議書に記載しておくべきである
- 代償分割は原則として贈与税の対象ではないが、税務署に贈与と判断されないように注意すべき
【Cross Talk 】代償分割は相続を円滑に進めやすいの?
遺産をどのように分割するか悩んでいます。代償分割という方法について教えてください。
代償分割は特定の相続人が不動産などの遺産を現物で相続し、他の相続人に代償金などを支払う方法です。不動産を無理に分割する必要がないので、相続を円滑に進める手段として活用できます。
代償分割を活用すれば、相続を円滑に進められる可能性があるんですね。代償分割に課される税金についても教えてください!
相続を円滑に進めるための方法として、代償分割があります。 代償分割は遺産分割方法の一種であり、不動産などの現物を分割せずに相続できるので、相続をスムーズに進められる可能性があります。 そこで今回は、代償分割の仕組みや課される税金などについて解説いたします。
代償分割とは
- 代償分割は不動産を分割したり、売却したりしたくない場合に適している
- 代償分割をする場合は、代償分割について遺産分割協議書に記載しておくべき
代償分割のポイントを教えてください。
代償分割は不動産を分割したくない場合や、不動産を売却したくない場合の方法として適しています。代償分割をする場合は、後のトラブルを防止するために、遺産分割協議書に記載しておくのがおすすめです。
遺産分割の方法
遺産分割の方法として、代償分割の他には、現物分割・換価分割・共有分割などがあり、それぞれ以下のような特徴があります。・換価分割:遺産を売却し、売却代金を相続分にしたがって分配する方法。公平な分配をしやすいが、遺産自体は処分しなければならない。
・共有分割:遺産を相続人で共有する方法(民法249条)。遺産を分割する必要がないが処分するのが難しくなるうえに、将来的に権利関係が複雑化しやすい。
・代償分割:特定の相続人が遺産を相続し、他の相続人に対して代償金などを支払う方法。債務負担を命じられる相続人に債務の支払能力があることが必要である。
代償分割のメリット・デメリット
例えば、遺産として2,000万円の不動産と1,000万円の現金があり、相続人として長男と次男がいる事例において、長男が2,000万円の不動産を相続し、次男が1,000万円の現金を相続するとして、代償分割とそれ以外の遺産分割の場合を比較してみます(長男、次男のいずれも1,500万円相当の法定相続分を有します)。まず、現物分割の場合、不動産を分割しなければならず、不動産の分割が困難な場合や、分割をすると不動産としての価値が下がってしまう場合、現物分割は難しくなります。
次に、換価分割の場合、売却代金を平等に分割しやすいものの、不動産自体は売却しなければならないので、不動産を保有したい場合は方法として適していません。
一方で、代償分割の場合、不動産を分割する必要がないので、現物分割の上記デメリットを回避することが可能です。また、不動産を手放す必要がないので、換価分割の上記デメリットを回避することも可能です。 上記のように、不動産を分割したり、売却したりする必要がない代償分割は、現物分割や換価分割の問題点を解決する方法として適しているのです。代償分割をする際の遺産分割協議書の記載方法
代償分割をする場合は、遺産分割協議書において、代償分割の内容を記載しておくことをおすすめします。 遺産分割協議書に記載しなくても代償分割をすることはできますが、記載することで以下のようなメリットがあるからです。・代償金の受け取りなどについて、代償分割以外の方法(贈与など)であると税務署が認定することを防止できる
・代償金の額
・代償金の支払義務者及び支払う相手方
・支払われる金銭が代償金であること
・代償金の支払方法及び支払期限
・代償金の支払口座(別紙)
代償分割をするときの相続税などについて解説
- 代償分割をする場合の相続税課税価格の計算式は、支払った側と支払われた側で異なる
- 代償金は原則として贈与税の対象ではないが、代償分割について遺産分割協議書に記載しておくべき
代償分割をする場合の、相続税などの税金について教えてください。
代償分割をする場合の相続税課税価格は、支払った側と支払われた側で計算式が異なります。代償金は原則として贈与税の対象ではありませんが、贈与と判断されないように、代償分割について遺産分割協議書に記載しておくべきです。
代償分割をする場合の相続税課税価格
代償分割をする場合の相続税課税価格は、代償金を支払った方と、代償金を受け取った方で計算式が異なります。 代償金を支払った人の相続税課税価格は、以下の計算式によって表すことができます。例えば、相続人が長男、次男の二人の場合に、長男が4,000万円の不動産を相続し、次男が2,000万円の不動産を相続、代償金として長男が次男に1,000万円を支払った例で計算してみましょう。
代償金を支払った人である長男の相続税課税価格は、4,000万円 − 1,000万円 = 3,000万円です。 代償金を受け取った人である次男の相続税課税価格は、2,000万円 + 1,000万円 = 3,000万円になります。代償分割でお金を払う場合に贈与税はかからない
代償金を支払う場合、基本的に贈与税はかかりません。 代償金の支払いは贈与にあたらないので、贈与税の課税対象にならないからです。 ただし、代償分割について遺産分割協議書に記載しておかないと、代償金全額が贈与とみなされて、贈与税を課税される可能性があることに注意しましょう。そのため、代償分割をする場合は、必ず遺産分割協議書に「代償分割により代償金を支払う」旨記載することをおすすめします。代償資産を代償金以外で支払う場合には所得税が発生する場合もある。
代償分割の方法は代償金だけでなく、不動産など別の資産を譲渡する方法もあります。代償金ではなく不動産で代償分割をする場合、相続する不動産にかかる相続税とは別に、譲渡した不動産について所得税が発生する場合があることに注意しましょう。 例えば、代償分割として時価6,000万円・取得費4,000万円の不動産を譲渡した場合、差額である2,000万円について所得税の課税対象になります。まとめ
代償分割は、特定の相続人が不動産などの現物を分割せずに相続し、他の相続人に代償金などを支払う方法です。 代償分割をすると不動産などを分割する必要がないので、相続を円滑に進められる可能性があります。 代償分割は主として相続税の対象であり、原則として贈与税は発生しませんが、トラブルを防止するために遺産分割協議書に記載しておくべきです。 代償分割などを活用して相続をスムーズに進めたい場合は、相続問題の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
- 相続税対策は何から手をつけたらよいのかわからない
- 相続税について相談できる相手がいない
- 税務署に調査されないように申告をしたい
- 税務署から通知が届いて困っている
無料
この記事の監修者
最新の投稿
- 2023.10.22相続放棄・限定承認相続放棄の必要書類・提出方法~提出後の手続きをまとめて解説!
- 2023.10.22遺産分割協議遺産分割調停を弁護士に依頼する場合の費用について解説
- 2023.09.17遺留分侵害請求遺留分を計算する上で特別受益には10年の期間制限があることについて解説
- 2023.08.11相続全般連絡拒否など連絡が取れない相続人がいる場合の対応方法について弁護士が解説