- 遺言書を作成した後に離婚・離縁をしても、遺言書自体は原則として有効
- 遺言書に抵触する処分とみなされた場合は、例外として無効になることがある
- 相手に財産が渡らないようにするには、遺言書を撤回する遺言書が重要
【Cross Talk 】遺言書を作成した後に離婚・離縁をした場合、どんなことに注意すべき?
妻に遺産を譲るという内容で遺言書を作成したのですが、その後に妻の浮気が原因で離婚をしました。妻に遺産を譲りたくないのですが、どんなことに注意すべきですか?
遺言書を作成した後に離婚や離縁をした場合、遺言書をそのままにしておくと元配偶者に遺産がいってしまう可能性があるので、遺言の撤回をすることが重要です。
遺言書を作成した後に離婚・離縁をした場合は、遺言書の効力に注意すべきなんですね。遺言の撤回について詳しく教えてください!
相手に遺産を譲るという内容の遺言書を作成したあとで、その相手と離婚・離縁をしてしまう場合があります。 相手に遺産を渡したくない場合、遺言書をそのままにしておくと相手に遺産が渡ってしまう場合があるので、注意が必要です。 そこで今回は、遺産をしたあとに離婚・離縁した場合の注意点について解説いたします。
遺言書を作成した後に離婚・離縁した場合
- 遺言書を作成した後に離婚・離縁をしても、遺言書自体は原則として有効である
- 遺言書に抵触する処分とみなされた場合は、例外として無効になることがある
遺言書を作成した後に離婚・離縁をした場合、遺言書の効果はどうなりますか?
遺言書を作成した後に離婚・離縁をしても、遺言書自体は原則として有効です。ただし、遺言書に抵触する処分とみなされた場合は、例外として無効になることがあります。
遺言書自体は有効
遺言書を作成した後に離婚・離縁をしたとしても、遺言書自体は原則として有効です。 離縁・離縁をしたからといって、そのことを理由に、遺言書が直ちに無効になるわけではありません。例えば、被相続人が「遺産のうち不動産を妻に与える、1,000万円を長男に与える、800万円を養子(妻の連れ子)に与える」という遺言書を作成したとしましょう。 上記の遺言書を作成した後に、被相続人が妻とは離婚し、養子とは養子縁組を解消して離縁したとします。
もし、離婚・離縁によって遺言書自体が無効になるとすると、離婚をしたことで妻は不動産を当然には相続できなくなり、離縁をしたことで養子は800万円を当然には相続できなくなります。 また、遺言書自体が無効になるとすると、離婚・離縁とは関係のない「1,000万円を長男に与える」という部分についても無効になってしまうと考えられます。
しかし、離婚・離縁をしたとしても、遺言書自体は無効になりません。よって、そもそも離婚・離縁とは関係のない「1,000万円を長男に与える」という部分は、問題なく有効といえます。 また、離縁・離縁をしたことで遺言書自体が当然には無効にならないことから、離婚した妻が不動産を取得し、離縁した養子が800万円を取得する可能性があるのです。
遺言書と抵触する処分とみなされ無効になる場合がある
例外として、遺言書を作成した後に離婚・離縁をして、それが遺言書に抵触する処分とみなされた場合は、その部分について遺言書が無効とされることがあります。 遺言書を作成した後に、遺言書と異なる処分(生前処分)が行われた場合は、その処分によって遺言書の内容と抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなされるからです(民法第1023条第2項)。例えば、遺言書を作成した後に離婚をし、その離婚が「遺言書とは異なる処分である」とみなされた場合は、離婚相手に対する遺言書は撤回したとみなされる可能性があります。 「1,000万を妻に相続させる」という遺言書を作成した後に被相続人が妻と離婚し、その後に被相続人が亡くなり、遺言書だけが残された場合で考えてみましょう。
もし、妻との離婚が遺言書とは異なる処分である、とみなされた場合、遺言書のうち「1,000万円を妻に相続させる」という部分については、遺言書が撤回されたとみなされます。 遺言書の撤回とみなされた場合、「1,000万円を妻に相続させる」という部分はなかったことになるので、元妻は遺言書によって1,000万円を取得することはできなくなるのです。
ただし、離婚・離縁が遺言書に抵触する処分とみなされるかどうかは、様々な事情に基づいて判断されます。 離婚・離縁をした場合でも、遺言書に抵触する処分であるとみなされない可能性もある点に注意しましょう。 例えば、「離婚をしたかどうかに関係なく、相手に遺産を渡したいというのが被相続人の意思である」と判断された場合、離婚をしても遺言書が無効にならずに、相手が遺産を取得できる可能性があります。離婚・離縁後に確実に相手に財産が渡らないようにする方法
- 相手に財産が渡らないようにするには、遺言書を撤回する遺言書が重要
- 一定の行為をした場合、遺言書を撤回したものとみなされる
妻とは離婚し、妻の連れ子とは養子縁組を解消して離縁しました。ところが、離婚・離縁をする前に、妻や連れ子に遺産を相続させる遺言書を作成しています。離婚・離縁をした後に、確実に相手に財産が渡らないようにするには、どうすればいいですか?
離婚・離縁をした後に、確実に相手に財産が渡らないようにするには、以前に作成した遺言を撤回することが重要です。
遺言の撤回をする遺言書が必要
相手に財産が渡らないようにするには、遺言の撤回をする遺言書を作成することが重要です。 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回することができます(民法第1022条)。よって、一度遺言書を作成したとしても、遺言者が生存している間はいつでも遺言を撤回することが可能です。 例えば、「妻に不動産を与える」という遺言書を作成した後に妻と離婚したとしても、遺言書の解釈によっては、元妻に不動産が渡ってしまう可能性があります。
そこで、元妻に財産が渡らないようにするには、遺言書を訂正したり新しく作成したりすることで、古い遺言を撤回することが重要です。 遺言を撤回しないまま被相続人が亡くなってしまうと、相手に財産が渡ってしまう可能性があるので、必要な場合は早めに撤回をしましょう。遺言書を撤回したものとみなされる場合
一定の行為をした場合、遺言書の撤回をしていなくても、遺言書を撤回したものとみなされる場合があります。 前の遺言書と後の遺言書が抵触する場合、後の遺言書によって、前の遺言書が撤回されたものとみなされるので注意しましょう。例えば、「自宅を妻に相続させる」という遺言書を作成した後に、「自宅を長男に相続させる」という遺言書を作成した場合、前の遺言を撤回したものとみなされます。 遺言書の内容と抵触する行為をした場合も、抵触する部分について、遺言を撤回したものとみなされます。
例えば、「自宅を妻に相続させる」という遺言書を作成したにも関わらず、自宅を第三者に売却した場合は、その部分の遺言書を撤回したものとみなされるのです。 被相続人が故意に遺言書記載の目的物を破棄した場合、その部分についての遺言を撤回したものとみなされます。
例えば、「妻に宝石Aを遺贈する」という遺言書を作成したにも関わらず、宝石Aを故意に捨ててしまった場合は、その部分の遺言を撤回したものとみなされるのです。 被相続人が故意に遺言書を破棄した場合、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされます。 例えば、被相続人が自筆証書遺言書を作成した後に遺言書を破り捨ててしまった場合、遺言を撤回したものとみなされます。まとめ
遺言書を作成した後に離婚・離縁をした場合、原則として遺言書自体は無効になりません。 ただし、遺言書に抵触する処分にあたるとみなされる場合は、例外として無効になることがあります。 離婚・離縁した相手に遺産を渡したくない場合は、遺言を撤回する遺言書を作成することが重要です。 遺言をきちんと撤回するには、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。
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