- 不動産の共有名義の片方が死亡した場合、被相続人の持ち分割合のみ相続が開始
- 共有名義の不動産はトラブルが起こりやすく活用が難しいという実態があるため、相続は慎重に検討を
- 相続したくない場合には相続放棄・他の所有者に譲るという方法が
【Cross Talk 】共有名義の不動産、片方が死亡した際の相続とは?
母が亡くなり、母の兄である叔父と共有名義の不動産があることが分かりました。相続ではどうしたら良いでしょうか?
共有名義の不動産には所有者の持ち分割合が設定されています。お母様の持ち分割合についてのみ相続が始まることになります。
詳しく教えてください。
被相続人(亡くなった方)が共有名義の不動産を所有していた時、被相続人の持ち分割合のみ相続が開始します。夫婦・親子・相続人の間で共有名義になっている場合がありますが、共有名義の不動産は所有者全員の合意がないと売却・賃貸ができない、トラブルが起こりやすいというデメリットがあります。 遺産の中でも取り扱いが難しい、共有名義の不動産相続についてお伝えしていきます。
不動産が共有名義になっている場合
- 夫婦・親子・相続人の間で共有名義になっている場合がある
- 共有名義の不動産の相続には、不動産の所有者が増える、売却・賃貸といった活用が難しくなるなどのデメリットがある
共有名義の不動産は相続すべきでしょうか?
共有名義の不動産は、売却したり賃貸するのに他の共有名義人の同意が必要になります。相続しても自由に処分することができるわけではないので注意が必要です。
夫婦で土地や家を購入し、共有名義になっている場合です。 ローンを組むときに夫婦で連帯保証・連帯債務・ペアローンの場合にも共有名義となります。
夫婦のどちらかが亡くなり子どもがいる場合、相続人は配偶者と子どもです。 子どもが亡くなっている際には孫、いない場合には父母(亡くなっている時は祖父母)、父母・祖父母がいない場合は兄弟姉妹(亡くなっているときには甥・姪)が相続人となります。 配偶者は常に相続人となります。
・親子で共有名義になっている親子で不動産が共有名義になっている場合は、親が所有している土地に子どもが家を建てた、二世帯住宅で共有名義、親子リレーローンで住宅を購入した場合などが該当します。
親が亡くなり配偶者がいる場合には、親の配偶者と子どもが相続人となります。配偶者がいない際には子どもが相続人です。
・相続人で共有名義になっている相続で共有分割を行い、相続人の間で共有名義となっている場合です。 例えば親が亡くなり不動産を兄弟で共有名義にしている、両親と子どもがいる家庭で親のどちらかが亡くなり残された配偶者と子どもで共有名義にした事例などがあります。 亡くなった方の配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹などが相続人となる可能性があります。
共有名義部分の相続をさらに相続人の共有名義にすると、所有者が増えトラブルの元となる、活用が難しくなるといったデメリットが生じます。
共有名義人の片方(一人)が死亡した場合の相続
- 共有名義の片方が死亡した際には被相続人の持ち分割合のみ相続開始
- 共有持ち分を相続したくない場合には、所有者に譲る、相続放棄という方法がある
共有名義の不動産を相続したくないのですが…。
相続したくない場合には所有者に譲る、相続放棄という選択肢があります。
共有名義についてのみ相続が開始
AさんとBさんの共有名義(持ち分割が1/2ずつ)となっている不動産(評価額5000万)があるとします。Aさんが亡くなった場合、Aさん持ち分の1/2のみ相続開始となります。 残りの1/2は共有名義人のBさんが引き続き所有することになります。 手続きは法務局で所有権移転登記(相続登記)を行います。相続登記は司法書士に依頼することも可能です。共有不動産を相続する際の注意点
上述の通り、不動産の共有名義は所有者全員の同意がないと原則として売却・賃貸ができず、意見が合わない時はトラブルの元となってしまうことがあります。 また、相続をした場合には、共有持ち分に応じた固定資産税を負担したり、金額によっては、相続税を支払う必要が出てきます。共有名義の不動産を相続するメリット
共有名義の不動産を相続した場合、当然、共有持ち分を持つ相続人もその不動産を利用することができます。共有名義の不動産を利用しないのであれば、共有名義人が同意してくれれば、共有持ち分を第三者に売却したり、共有名義人に買い取ってもらうことができるかもしれません。
仮に、共同相続人が同意してくれない場合でも、共有物分割請求訴訟を提起すれば、共有物を分筆したうえで処分することや、分筆が難しいようであれば、訴訟手続きの中で競売することが可能です。 共有物分割請求訴訟を提訴する場合、専門的知識が必要な手続きになりますので、弁護士に依頼した方が良いでしょう。 遺産の中に共有名義の不動産がある場合には、前述の注意点とメリットを考慮したうえで、相続するかどうかを決めましょう。共有持分を相続したくない場合の対処方法
共有持ち分を相続したくない場合には、共有名義人が同意するのであれば、持ち分を共有名義人に買い取ってもらうまたは、贈与するという方法があります。 もし、共有名義人が同意してくれないのであれば、後に、共有持分の放棄をすることができます(民法255条)。 共有持分の放棄は、専門的な手続きになりますので、弁護士に相談した方が良いでしょう。 その他にめぼしい財産がないようでしたら、相続放棄をするのも良いかもしれません。 ただし、相続放棄は被相続人の残した遺産全てを放棄することになりますので、注意しましょう。 なお、共有名義人に共有持ち分を贈与、売買、共有持分の放棄をした場合、譲渡所得税等が課される可能性があります。共有名義人の一方が死亡した後の相続の流れ
- 共有名義人の一方が死亡した後の相続の流れ
- 不動産については相続登記を行う
不動産の共有名義人の一方が死亡した後にはどのような手続きを行う必要がありますか?
最終的に相続登記をすることになるのですが、そこまでの流れを確認しましょう。
遺言書の有無の確認
まず、亡くなった人が遺言書を作成していなかったかどうかを確認しましょう。 遺言書が作成されていた場合には遺言書の内容に従って遺産を分配することになるので、遺言書の有無の確認は最初に行います。遺言の内容は遺言書に記載されているので、遺言書を探します。 銀行通帳のように被相続人が大切にしていた書類や、貸金庫の契約をしていた場合には貸金庫の中を探してみましょう。
公正証書遺言の場合には、原本は公証役場で保管しており、公証役場で調べることが可能です。 自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言を作成した場合には、原本は法務局で保管しており、法務局で調べることが可能です。 公正証書遺言書・自筆証書遺言書保管制度による自筆証書遺言書以外の遺言書がある場合には、家庭裁判所で検認を行う必要があります。相続人の調査
相続人の調査を行います。知られていない相続人がいないかを確認するためのもので、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍を収集して行います。この調査を怠ると、例えば離婚歴があって前婚の妻との間に子どもがいるにもかかわらず、その子どもを遺産分割協議に加えないで遺産分割を行うと、相続人全員で遺産分割をしておらず、遺産分割は無効となるなどの影響が生じます。
遺産の調査
どのような遺産があるか調査をします。 遺産分割をするにあたっては、どのような遺産があるのかわかっていることは重要です。もし後から遺産が出てきた場合、後から出てきた遺産についてあらためて遺産分割をすることも可能です。 しかし、後から出てきた遺産が、あまりにも価値が高い場合、その遺産があるのが最初からわかっていれば、遺産分割の結果が変わっていたといえるような場合には、遺産分割自体をやり直すことにもなります。
また、債務も相続をすることになり、借金があまりに多額であるよう場合には相続放棄・限定承認を検討することになります。 以上より、遺産分割の前に遺産の調査はしっかりしておくようにしましょう。遺産分割協議
相続人の調査・遺産の調査が終われば、遺産分割協議を行います。 協議で遺産分割の内容が決まったときには、遺産分割協議書を作成します。 協議で遺産分割の内容が決まらないときには、遺産分割調停・遺産分割審判によって遺産分割を行います。不動産の相続登記
不動産の共有持分について相続登記を行います。 相続登記については、従来法律上の義務はありませんでしたが、令和6年4月1日に施行される不動産登記法によって義務化され、正当な理由なく相続登記を怠った場合には10万円以下の過料が科せられるので注意しましょう。相続登記は法務局に登記申請書・添付書類を提出して行います。 上述した遺産分割に関する遺産分割協議書(調停調書・審判書)は添付書類となります。
相続税が発生する場合の計算方法
- 相続税の申告・納税が必要かどうか基礎控除額の計算をする
- 申告・納税が必要な場合に相続税の額の計算をする
相続する不動産の価値が高いので相続税が発生するかもしれないと思っています。
相続税が発生する場合の計算方法について確認しましょう。
基礎控除額を計算
相続税は基礎控除額を超える場合に申告・納税の必要があります。 そのため、まずは基礎控除額を計算します。 基礎控除額は次のように求めます。相続人が3人である場合には、「3,000万円+(600万円✕3=1,800万円)=4,800万円」が基礎控除額となります。
遺産の総額を計算
次に遺産の総額を計算します。 計算については、財産評価基本通達というものに準拠して価額を計算しますので注意しましょう。 みなし相続財産を加算したり、非課税財産・債務の控除などが必要なので、こちらも合わせて注意が必要です。 遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納税が必要です。法定相続分で分けた場合の相続税額の計算
相続税の計算をする場合、一旦法定相続分で分けた場合の相続税額の計算を行います。 相続税の額は、財産の価額に相続税率を掛けて、控除額を除して求めます。 相続税率・控除額は遺産の額に応じて8段階に分かれているので、法定相続分に応じて計算をしましょう。相続税合計額を実際の相続割合に応じて按分
3)のステップで計算した相続税額を、実際に遺産分割による相続割合によって按分計算して、各人が納税する相続税を計算します。不動産の共有名義人の片方が死亡した場合の相続の注意点
- 住宅ローンに加入している場合には団体信用保険(団信)の加入を確認
- トラブルになるポイントを確認して冷静に対応を協議する
不動産の共有名義人の片一方が亡くなって発生する相続にはどのような注意が必要ですか?
団信の加入の有無の調査や、トラブルになるポイントを確認して冷静に対応することを心がけましょう。
住宅ローン・団信の加入を確認
親子・夫婦で住宅ローンを組んで、まだその支払が残っている場合には、団体信用保険(団信:だんしん)に加入していないか確認しましょう。団体信用保険とは、住宅ローンの加入者に保険事故があった場合に、残りの債務についての補償を行う保険のことをいいます。 亡くなった人が住宅ローンの債務者で、団信に加入している場合には、残った債務の支払いが不要となるので、団信の加入を有無は必ず確認します。 団信に入っているかは、住宅ローンを取り扱っている銀行などの金融機関に問い合わせて確認をします。
トラブルになるポイントを確認する
共有不動産に関するトラブルについては、いくつかトラブルになるポイントがあります。 不動産の管理費用を誰が捻出するか、共有名義人のうち一人だけが使っているような場合の他の相続人の不公平感、共有持分を処分してしまい不動産に見知らぬ共有者が関わることになる、などが典型的なものです。相続人が共有持分についてどのようなことを考えていて、それによってどのようなトラブルが発生するかは、事前に予測が可能であり、これに応じてどのような行動が必要かも整理が可能です。
共有不動産での相続の承継ですので、共有している人が親族であるため、単なる所有権についての争いというより、親族間で感情的に争ってしまうことにもなりかねません。 事前にトラブルになるポイントを把握し、整理をして冷静に交渉することを心がけましょう。共有名義の相続によるトラブルを回避する方法
- 共有名義の相続によるトラブルを回避する方法
- 生前贈与・遺言書の作成・家族信託の利用など
共有名義の不動産を相続することによるトラブルを回避する方法にはどのようなものがありますか?
生前贈与・遺言書の作成・家族信託の利用などがあります。
生前贈与
共有名義の不動産の相続によるトラブルを回避する方法として、不動産の共有持分を生前贈与してしまうことが挙げられます。例えば、夫婦共有名義になっている不動産について、子どもが相続すると争いになってしまう可能性がある場合に、夫婦の一方から他方に贈与してしまうことが考えられます。 なお、生前贈与をする場合、共有持分の価額が110万円を超える場合には、贈与税がかかることがあるので注意が必要ですが、婚姻期間が20年あるような場合には、2,000万円までが控除される制度を利用することも可能です。
遺言書の作成
共有名義の不動産の相続によるトラブルを防ぐ方法の一つが遺言書を作成しておくことです。 誰が相続するのかで争いになる場合に、共有持ち分を相続する人を遺言書で指定しておけば、争いを防ぐことが可能です。 遺言書においては、共有持分があるものについては通常の不動産の記載の最後に共有持分を記載します。①土地
所在:東京都新宿区○○町1丁目
地番:〇番地
地目:宅地
地積:○○㎡
共有部分:2分の1
②建物
所在:東京都新宿区○○町1丁目
家屋番号:○○○番
種類:居宅
構造:木造2階建て
床面積:1階○○㎡、2階○○㎡
共有部分:2分の1
家族信託の利用
家族信託とは、契約で財産を家族に預けて、運用をしてもらう信託契約のことをいいます。 相続財産について信託契約を結ぶことで、相続ではできない柔軟な運用をすることができる反面、どのような信託契約を結ぶか、誰が管理するかをじっくり考える必要があります。 専門家に相談して行うようにしましょう。共有持分の売却
共有持分を売却することを検討しましょう。 複雑な相続で共有持分を取得することになった場合に、共有関係から抜けるために共有持分を売却してしまうことも検討すべきです。 通常は共有持分の売却のみは難しいのですが、共有持分の買い取りを得意としている不動産会社もあるので、相談してみると良いでしょう。まとめ
このページでは不動産の共有名義が死亡した場合の相続についてお伝えしました。 共有名義の不動産相続は相続人が増える、活用が難しくなるというデメリットがありますので慎重に検討しましょう。相続登記の手続きも戸籍謄本といった書類収集や申請の難易度が高い傾向にあります。 お困りの際には相続に強い弁護士に相談しながら相続の検討や手続きを行うことをおすすめいたします。
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