相続における二重資格者って何?ケースと取り扱いについて解説
ざっくりポイント
  • 相続における二重資格者とは
  • 相続において二重資格者が生じるケース
  • 相続において二重資格者が生じた場合の処理
目次

【Cross Talk 】養子の相続分はどうなるのか?

私の相続についてご相談させてください。私には子どもが2人おり、子どものうち1人には孫がいます。相続税対策で孫を養子にしていたのですが、その親にあたる子どもが亡くなってしまいました。こういう場合代襲相続というのが発生するという記事を見たのですが、孫は養子にもなっています。どういう取り扱いになるのでしょうか。

お孫さんが代襲相続者としての地位で相続するのと、養子としての地位で相続することになります。このような人のことを二重資格者と呼んでいます。相続分をどう計算するか・相続人を何人で計算するか確認しましょう。

是非、お願いします。

相続における二重資格者とは?ケースと相続が発生したときの処理について確認

相続人となる人については法律で規定されています。特定のケースで、相続人となる根拠が複数該当することがあります。このような人のことを二重資格者といいます。二重資格者が発生するケースと、その場合の相続分の処理・相続人の人数の数え方などについて確認しましょう。

相続における二重資格者とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続において二重資格者となるケース
  • 二重資格者とはならないケース

相続における二重資格者とはどのような意味でしょうか?

法律の規定によって相続をする資格が重複している場合です。といってもケースは極めて限られているので、ケースで確認すれば良いでしょう。

相続人が誰になるかは法律によって定められています(民法886条以下の規定)。 この規定に従うと、二重に相続人となることがある場合があります。 このような人のことを二重資格者と呼びます。 ケースは非常に限られているので、具体的なケースについて確認しましょう。

二重資格者が生じるケースとは?

二重資格者が生じるケースは、祖父母が孫を普通養子縁組によって養子にしている状況で、その親が死亡した場合です。 孫を養子とするのが不自然に思う方もいらっしゃるかもしれまんが、孫に遺産を残したい場合や、相続税対策として法定相続人の数を増やすために行われることがあります。 養子にしているので子どもとしての相続権があります(民法887条1項)。

一方で、親が亡くなっていることによって、孫が代襲相続をすることになります(民法887条2項)。 具体的なケースで見てみましょう。

(昭和26年9月18日民事甲1881号民事局長回答のケース)
・祖父母A・B
・子どもC・D
・孫(Dの子ども)E

Aが亡くなると、Bが配偶者として1/2を、子どもとしてC・D・Eが1/6ずつを相続します。
この際にすでにDが亡くなっているなどして相続人ではない場合にはDの分の代襲相続が発生します。
普通養子縁組にしている場合には、実方の父母との関係も消滅しないので、EはDの子どものままです。
これによって、EはAの子どもとして相続人になるほか、Dの子どもとして代襲相続人にもなり、二重資格者となります。

二重資格とはならないケース

二重資格者が生じるのでは?と思われるケースもあるのですが、次のようなケースでは二重資格は否定されています。

【1】兄弟姉妹を養子にしている場合
とくに何も対策をしなければ兄弟姉妹が相続人になるケースで、兄弟姉妹を養子にするケースがあります。 よくある例としては、兄弟姉妹の長男と末っ子があまりにも年が離れていて、事実上親子のような間柄であったような場合や、兄弟姉妹の一人が障害者で兄弟の誰かが面倒を見ており、自分が亡くなったときのことを考えて養子にするようなケースです。
このような場合、兄弟姉妹としての地位と、養子としての地位が併存するようにも見えます。 しかし、養子も子どもであり、子どもがいる場合には子どもが相続人となるのであって、兄弟姉妹は相続人になりません。 そのため、養子とされた兄弟姉妹は子どもとしてのみ相続をして、兄弟姉妹としては相続しませんので、二重資格者とはなりません。 なお、この場合に、養子としての相続人の相続放棄をしたとしても、これによって兄弟姉妹としての相続人の地位が存在することになります。 完全に相続放棄をしたい場合には、養子としての分も、兄弟姉妹としての分も相続放棄をすることも必要であるといえます。

【2】「二重資格者が生じるケースとは?」と死亡の順番が逆の場合
先ほどの「二重資格者が生じるケースとは?」では、子どもDがAより先に亡くなっているために、二重資格を生じていました。 では、Aが亡くなってから、Dが亡くなった場合はどうなるのでしょうか。 この場合、Aが亡くなった段階で、C・D・Eがそれぞれ子どもとして相続をして、Dが亡くなるとDの子どもとしてEが相続をすることになるだけで、特に二重資格者が発生するわけではありません。

【3】養親の実子と養子が夫婦になっている場合(民事局長回答昭和23年8月9日民事甲2371号)
養親Aに実子Bがいて、養子Cがいる場合で、BとCが夫婦となっているケースがあります。 この場合に、BとCは夫婦ですので配偶者としての地位がありつつも、AとCが養子縁組をしていることによって、兄弟姉妹という地位もある状態になります。 この状態で、B・C間に子どもがおらず、養親も亡くなっている場合に、B・Cの一方が亡くなった場合に、兄弟姉妹として相続人になる地位と、配偶者として相続人となる地位がある状態になり、二重資格者となるようにも思えます。 しかし、こちらについては、実務上は配偶者として相続をするのみで、二重資格者として扱わないことになります。 相続においてはどちらでも単独で相続するので、二重資格者として取り扱う意味もないようにも思えますが、相続税との関係で相続人が何人いるか問題になる事例で問題となったものです。

二重資格が生じた場合の処理について

知っておきたい相続問題のポイント
  • 二重資格者となった場合相続人は2人と計算し相続分は合算する
  • 二重資格者が相続放棄をする場合

二重資格者が発生する仕組みはわかったのですが、その場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。

相続人は2人と取り扱い、相続分は合算します。詳しくみてみましょう。

二重資格者がいる場合の法律上の取り扱いについてはどうなるのかを確認しましょう。

二重資格者がいる場合の相続人の計算

まず、相続人は何人いると考えるべきかについては、この場合には2人相続人がいると考えるべきことになります。 相続をする資格が2つあるというのが理由で、この結果は相続税の基礎控除などの計算に影響します。

二重資格者がいる場合の相続分の計算

二重資格者がいる場合には、相続分は2つの相続資格について合算をします。 上記の例でいうと、子どもである分の1/6と、代襲相続分の1/6を合算します。

二重資格者の相続放棄

二重資格者が相続放棄をする場合には、基本的には両方の相続人の資格について放棄をすることになります。 何らかの事情で一方のみの相続放棄をする場合には、その旨を裁判所に明確に伝えて行うことになります。

まとめ

このページでは、相続における二重資格者が生じるケースと、生じた場合の処理についてお伝えしました。 このページでお伝えしたように、二重資格者といっても生じるケースは極めて限られているので、そのケースを確認しておき、そのケースにあたると相続人は2人、相続分は合算するという形で把握しておきましょう。

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