- 遺留分侵害額請求とはどのようなものか
- 親の遺留分割合
- 遺留分侵害額請求権を行使する場合の注意点
【Cross Talk 】子が遺産を全部寄付する遺言を遺していたけど親である私たちは何も言えないのでしょうか。
先日子がなくなりました。子は生前猫の保護活動に力を入れており、遺言で活動団体に遺産を全部寄付すると記載していました。ただ、私たちも高齢で頼りにできる子に先立たれたため、少しでもお金を相続できればと思うのですが、難しいのでしょうか。
遺留分という権利がありますので、寄付した相手に請求してみましょう。私たちがサポートします。
生前贈与や遺贈で、相続人に最低限保障される遺留分が侵害された場合には、その相続人は遺留分侵害額請求を行使することができます。 相続人の中で兄弟姉妹以外であれば遺留分があるので親が相続をしたときも請求することが可能です。 親など直系尊属の遺留分は、子・配偶者に認められている分よりも少ないので注意が必要です。
親が相続人である場合の遺留分侵害額請求
- 遺留分とは?
- 親の遺留分を侵害するケース
遺留分とはどのようなものなのでしょうか。
相続において最低限主張できる権利のことをいいます。 子・配偶者が相続人の場合には相続分の1/2が遺留分となるのですが、親が相続人である場合には1/3と割合が変化するので、確認しておきましょう。
遺留分侵害額請求について確認しましょう。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人に認められた金銭請求のことをいいます(民法1046条)。被相続人が特定の人にすべて相続財産を相続させる内容の遺言を残した場合、あるいは生前贈与をした場合や遺贈をしたような場合、相続人が相続する権利をすべて失うケースがあります。相続人としては相続で発生する相続財産を受け取ることができなくなるため、場合によっては生活に困ってしまう可能性もあります。
そのため、相続人に最低限保障される遺留分というものを規定し(民法1042条)、遺留分を侵害した者(遺贈で受け取った人など)に対して、侵害された遺留分に相当する額の請求をすることができるとしています。相談者のケースのように生前贈与や遺贈により相続分がなくなってしまったような場合でも、一定程度の金銭の取り戻しができるということになっています。
親の遺留分とは?
では、親の遺留分としてどの程度の取り戻しができるのでしょうか。 例えば、被相続人が「遺産のすべてを配偶者に相続させる」という内容の遺言を残している場合を考えてみましょう。遺留分については、民法1042条に規定があります。その規定によれば、遺留分は、遺留分の算定のための財産額(=相続時に有していた財産額+贈与した財産額-相続時に有していた債務全額・民法1043条参照)に一定割合をかけた金額とされており、相続人が親などの直系尊属だけの場合は1/3、それ以外の場合は1/2をかけることとなります。
今回の場合は、配偶者と両親が相続人なので遺留分は、遺留分の算定のための財産の価額の1/2です。 次に、相続人が複数いる場合には、上記の遺留分の割合に法定相続分をかけるので、法定相続分について考えます。今回の場合、遺言がなければ配偶者の法定相続分は2/3、親の法定相続分は1/3となります。両親とも健在の場合には、1/3を2人で分割するので1/6が法定相続分になります。 請求できる遺留分の割合は、(遺留分の割合)×(法定相続分)で計算されます。今回の両親の場合は、遺留分の算定のための財産額の1/6(1/2×1/3)に相当する金額を遺留分として請求することになります。
なお、両親が健在の場合は、それぞれ1/12(1/2×1/6)ずつ請求することになります。(ただし、具体的な事情によって請求できる金額はそれぞれ異なります) この遺留分侵害額請求権については、遺留分の侵害を知った日から1年で時効にかかることになりますので、注意が必要です。なお、インターネットで検索をしていると「遺留分減殺請求」という用語が出てくるかもしれませんが、こちらは近時された遺留分に関する規定の改正前のものです。
親の遺留分を侵害するケース1:配偶者に全部相続させる
親の遺留分を侵害するケースの一つとしては、被相続人がすでに結婚をしていて、遺言で配偶者に全部相続をさせると記載されているケースです。親が相続人になるのは、配偶者に子がいない場合になりますので、遺された配偶者のことを思って遺言に記載しているケースも少なくありません。特に、自筆証書遺言や秘密証書遺言のような、専門家による助言を受けずに行った遺言の場合、親の遺留分について考えずに配偶者に全部相続させるとすることがあります。
そのような配偶者に全部相続させるとの遺言が作成されている場合、法定相続人である両親は、遺言通りであれば全く遺産を相続できないことになるので、遺留分が侵害されている可能性があります。親の遺留分を侵害するケース2:遺言で第三者に寄付してしまう
被相続人に配偶者がいないような場合、その人は「結婚もしていないし子もいないので、遺産を寄付してしまおう」と考えて遺贈をしてしまうようなことがあります。 ケース1と同じく、遺言をするにあたって専門家のチェックを経ずに行ったことで、遺留分を侵害している可能性もあります。親が相続人である場合の遺留分侵害額請求
- 遺留分侵害額請求のやり方
- 弁護士に依頼をするメリット
遺留分という権利についてわかりました。では遺留分侵害額請求をするにはどのようにすればいいのでしょうか。
遺留分侵害額請求の方法について確認してみましょう。
遺留分侵害額請求を起こすにはどのようにすればよいのでしょうか。
遺留分侵害額請求権の行使方法
遺留分侵害額請求権の行使方法を確認しましょう。 遺留分侵害額請求権の請求の具体的方法については法律などでは一切規定をしていません。実務上は配達証明付き内容証明郵便で行われることが多いです。 これは、上述したように遺留分侵害額請求権は1年という非常に短い時効期間が設定されているため、この期間内にきちんと請求をした証拠を残す必要があるからです。
配達証明付き内容証明郵便を利用することによって、書面によって遺留分侵害額請求権を行使したということと、その書面が1年の時効期間内に到達したということが証明されます(郵便法46条・47条)。 内容証明で相手に請求をしても相手が支払いに応じない場合には、裁判を起こして強制執行をして回収をすることになります。弁護士に遺留分侵害額請求を依頼するメリット
この遺留分侵害額請求ですが、弁護士に依頼をして請求をすることにメリットがあります。 1つは法律問題の解決のために専門的な知識を借りることができることです。遺留分の計算には複雑な部分もあるので、正確な計算をしようとすると法的な知識が必要になります。遺産に不動産が含まれる場合などは、その評価がいくら位になるか、も問題となりえます。弁護士に依頼して、遺留分侵害額の算定、請求対応をしてもらえば、遺留分の計算や評価で争いになった場合の対応を全てしてもらうことができ、自分の負担を大きく軽減できます。もう1つは、家族間で遺留分侵害額請求を行う際に、弁護士が仲介することで緩衝材になることです。遺留分の交渉をする際、本人同士で交渉すると、そもそも親族間での話し合いということで感情的になってしまうこと、言葉の端々にトゲがあることによって互いにカッとしてしまうことや、金銭請求として応じなければいけないのは頭ではわかっていても応じたくないというような事態も発生しえます。 弁護士に依頼をすることで請求をするにあたっても、相手の提案を受けるにあたってもワンクッションを置くことができます。結果、事態をスムーズに解決に導くことが可能となります。
まとめ
このページでは、親が相続人の場合の遺留分侵害額請求についてお伝えしてきました。 遺留分侵害額請求は、権利の内容としては遺留分を計算しその分の支払いを受けるというシンプルなものなのですが、家族間など複雑な場合ですと交渉が難しくなることもあります。弁護士に依頼をしてスムーズに請求をするのが早期解決の鍵といえるでしょう。
- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
- 遺留分の割合や計算方法が分からない
- 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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