養子縁組を相続や相続税に利用する方法や、注意すべき点を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養子縁組をすると孫や婿養子などに遺産を相続させることができる
  • 養子縁組によって、相続税の基礎控除額や生命保険金などの非課税枠を増やせる
  • 養子縁組を実子が承諾しなかったり申告で否認されたりするなどのトラブルに注意
目次

【Cross Talk 】養子縁組は相続・相続税の対策に役立つの?

私の遺産の相続について考える時期になりました。養子縁組をすると、相続や相続税の対策に役立つと聞いたのですが?

養子縁組をすると、孫や婿養子などに遺産を相続させたり、相続税の基礎控除額が増えたりなどの効果があります。ただし、養子縁組によるトラブルの発生に注意しなければなりません。

養子縁組は相続や相続税の対策になるものの、トラブルには注意ということですね。どのようなトラブルに注意すべきかを踏まえて教えてください。

養子縁組をすると相続や相続税対策に役立つが、養子縁組によるトラブルに注意

養子縁組をすると孫や婿養子に遺産を相続させたり、相続税の基礎控除額を増やしたりなどのメリットがあります。 しかし、養子縁組を実子が承諾せず揉めてしまったり、申告において否認されたりするなどのトラブルの可能性に注意しなければなりません。 そこで今回は、養子縁組を相続・相続税対策に利用する方法や、注意点などを解説いたします。

養子縁組を相続対策に利用する

知っておきたい相続問題のポイント
  • 養子縁組をすると、孫や婿養子などが遺産を相続できるようになる
  • 養子縁組によって実子と揉めたりなどのトラブルに注意

養子縁組をすると、相続においてどのような効果がありますか?

養子縁組をすると、そのままでは相続権のない孫や婿養子などが遺産を相続できるようになります。ただし、養子縁組を実子が承諾せず揉めるなどのトラブルに注意しましょう。

養子縁組とは?

養子縁組とは、血縁関係とは関係なく、法律上の親子の関係を結ぶことをいいます。
家父長制のもと、血縁関係が居ない場合に、家長としての地位を相続するために用いられてきたのが養子縁組ですが、現在では家族関係形成の様々な選択肢を実現する手段として利用されます。
養子縁組には次の2つの種類があります。

普通養子縁組

実親との親子関係が残る養子縁組を普通養子縁組といいます。
養子は実親・養親双方の相続の法定相続人(民法が規定する相続人)として相続をすることができます。

特別養子縁組

実親との親子関係が残らない養子縁組を特別養子縁組といいます。
原則として15歳までの子どもであることを要件としており、実親との関係を絶って新しい家庭で生活することを想定するものです。
子どもの福祉のために行う制度ですが、相続で養子とする場合のほとんどは前述の普通養子縁組が用いられます。

孫に相続をさせる

子どもがいる場合は法定相続人として子どもが優先されるので、孫に遺産を相続させることができません。
孫と養子縁組をすると、孫にも遺産を相続させることができます。

例えば、遺産が1,000万円あり、相続人が実子1人だけの場合は、法定相続分(民法が規定する相続分)においては実子1人が1,000万円を相続します。

養子縁組をした場合、養子は相続について実子と同じ権利を得るので、養子縁組によって孫に遺産を相続させることが可能です。 上記で孫を養子にした場合、法定相続分においては実子が500万円、孫が500万円を相続できるようになります。

いわゆる婿養子に相続をさせる

実子の配偶者は法定相続人ではないので、そのままでは実子の配偶者(いわゆる婿養子等)に遺産を相続させることはできません。
実子の配偶者と養子縁組をすれば、相続において実子と同じ権利を取得するので、実子の配偶者にも遺産を相続させることができます。

例えば、遺産が1,000万円で、法定相続人が実子である娘1人だけの場合、法定相続分では娘が1,000万円を相続します。

娘の夫と養子縁組をすると、法定相続分において娘が500万円、娘の夫が500万円を相続できるようになります。

連れ子にも相続をさせたい場合には養子縁組が必要

相続において養子縁組が用いられる事例として、連れ子にも相続をさせたい場合が挙げられます。
婚姻した相手に婚姻前から子どもがいる場合、その子どもは婚姻によって法律上当然に自分の子どもになるわけではありません。そのため何らの手続きもしなければ、法定相続人にはなりません。
このような連れ子を子どもとして法定相続人とするためには、養子縁組をすることが必要となります。

トラブルになる可能性があるので注意をする

養子縁組をすると特定の方に遺産を相続させることができますが、下記のようなトラブルが発生する可能性もあるので、注意しましょう。
・実子が養子縁組を承諾しない
・相続税申告で否認される
・養子が相続放棄をしてしまう

養子縁組をしたときには法定相続分はどう変わる?

養子縁組をしたときのトラブルとしては、上述したように、実子が養子縁組に反対することが挙げられます。
養子縁組をした子どもは、実子と同じく法律上も子どもと扱われることになります。
子どもが複数いる場合、遺産は、配偶者がいるときは1/2÷子どもの人数、配偶者が居ない場合には単に子の頭数で分け合うことになります。

例えば配偶者と子ども2人がいる場合、その法定相続分は養子縁組がなければ配偶者が1/2で子はそれぞれ1/4ずつになるのですが、養子を迎えることによって子どもの相続分は1/6となります。

また、例えば子どもがおらず親や兄弟姉妹が相続人となる場合、子を養子に迎えると親や兄弟姉妹は相続人にはならなくなります。

養子縁組を相続税対策に利用する

知っておきたい相続問題のポイント
  • 養子縁組によって、相続税の基礎控除額や生命保険金などの非課税枠を増やせる
  • 相続税の申告において養子縁組を否認されないように注意

養子縁組は相続税の対策になると聞きました。どのような効果があるのですか?

養子縁組をすると相続税の基礎控除額を増やしたり、生命保険金や死亡退職金の非課税枠を増やしたりできます。ただし、税申告の際に養子縁組を否認されないように注意しましょう。

相続税の控除が増える

養子縁組をすると、相続税の基礎控除額を増やすことができます。 相続税の対象となる遺産の総額が基礎控除額以下の場合は、相続税は課税されません。相続税の課税対象となるのは、基礎控除額を超える部分のみです。

例えば、相続税の対象となる遺産の総額が2,000万円であり、基礎控除額が3,600万円の場合は、遺産の総額が基礎控除額以下なので、相続税は課税されません。

相続税の基礎控除額は、以下の式で計算できます。
・3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数

上記の「法定相続人の人数」には、被相続人の実子だけでなく、被相続人と養子縁組をした養子も含まれます。 つまり、養子縁組をすると相続税の基礎控除額の計算における法定相続人の人数が増えるので、相続税の節税効果が期待できるということです。

例えば、被相続人に配偶者はおらず実子1人と養子1人がいる場合、法定相続人の人数は全部で2人なので、相続税の基礎控除額は4,200万円になります。 実子1人の場合、基礎控除額は3600万円なので、養子縁組によって基礎控除額を600万円増やせる結果となります。

相続税における養子として認められる上限に注意

ただし、節税のためだけの養子縁組を防止するために、相続税の基礎控除額の法定相続人としてカウントできる養子の人数は、以下の制限が設けられています。
・被相続人に実子がいる場合、養子の人数は1人まで
・被相続人に実子がいない場合、養子の人数は2人まで

例えば、法定相続人が実子1人と養子2人の場合、法定相続人としてカウントできる養子の人数は1人だけなので、基礎控除額は3人分の4,800万円ではなく、2人分の4,200万円です。

非課税枠が増える

養子縁組をすると、被相続人の生命保険金や死亡退職金の非課税枠を増やすことが可能です。 被相続人の死亡によって取得した生命保険金や、被相続人の死亡による死亡退職金は、相続税の課税対象になる場合があります。 上記の生命保険金や死亡退職金には非課税限度額が設定されており、総額が非課税限度額を超える部分だけが課税対象です。 生命保険金と死亡退職金の非課税限度額は以下の通りです。
・500万円 × 法定相続人の人数

法定相続人の人数には養子も含まれるので、養子縁組をすると非課税限度額が増えます。 ただし、法定相続人としてカウントできる養子の人数は、相続税の基礎控除額と同様の制限があります。実子がいる場合は養子の人数は1人まで、実子がいない場合は養子の人数は2人までです。

相続税申告が否認されないように注意する

節税のために養子縁組を検討する場合は、相続税の申告で否認されないように注意しなければなりません。
相続税の控除においては、養子縁組をすると控除される金額が増えます。しかし、節税のための形だけの養子縁組であると判断された場合などは、相続税の申告の際に否認されてしまう可能性があるのです。

相続税の申告の実務において、養子を法定相続人の数に含めることで、相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合は、その原因となる養子を数に含めることはできない、とされています。 もし上記に該当すると判断された場合は、その養子は、控除のための法定相続人の人数にはカウントされません。

例えば、被相続人が亡くなって法定相続人として実子1人と養子1人がいる場合、法定相続人の人数は2人なので、相続税の基礎控除額は本来4,200万円です。 しかし、相続税の申告において養子の数に含めることはできないと判断された場合、法定相続人の数は1人だけとなり、基礎控除額は3,600万円しか認められなくなってしまいます。

相続税の2割加算があることにも注意

遺産を受け取る人が、被相続人の1親等の血族および配偶者以外である場合には、相続税額が2割加算される制度があります。
養子縁組をする場合、法律上は1親等の法定血族となるため、基本的にはこの加算はありません。
しかし、孫養子に関しては、子どもの相続税を免れることになるという不均衡から、2割加算の対象とされているので注意しましょう。

まとめ

このページでは、内縁の妻が遺産を取得するための方法についてお伝えしました。 何もしなければ、特別縁故者に該当する場合にしか遺産を手に入れることができません。 できる限り遺言書をしておくことが望ましいので、不安なことがあれば弁護士にご相談ください。

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この記事の監修者

弁護士 西村 夏奈第一東京弁護士会
依頼者・関係者の皆様との対話を大切にし、日々研鑽を重ね、経験から得た知恵も活かして、最善の結果に向け奔走いたします。

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