- 相続財産管理人とは
- 相続財産管理人が選任される場合
- 相続放棄をした人が遺産を保有していた場合、相続財産管理人に遺産を引き渡す義務がある
【Cross Talk 】相続放棄をした人は遺産を相続財産管理人に渡す必要があります
先日父が亡くなり、母・私が相続をしました。父には多額の借金があり母・私ともに相続放棄をしました。父は一人っ子で兄弟もおらず、親もすでに他界し、相続人は他にいません。父名義の車を持っている状態なのですが、この車はどうしたら良いのでしょうか。
この場合、相続財産管理人が選任されます。それまで自動車は保管しておき、相続財産管理人が選任されたらその人に引き渡す義務があります。
そうなんですね!詳しく教えてもらっていいですか?
被相続人に多額の借金があるような場合、相続人は相続放棄をすることができます。相続人が被相続人と同居していたような場合、相続放棄をしたはいいものの被相続人の遺産を持ったままということも考えられます。 相続放棄をした人が遺産を受け継ぐことは当然できません。この場合、他に相続人がいる場合にはその相続人が、相続人が一人もいなくなった場合には相続財産管理人が選任されて、その相続財産管理人が遺産を引き継ぎます。相続放棄をした人が遺産をもっている場合には相続人になった人もしくは相続財産管理人に保有している遺産を引き渡す義務があります。
どのような場合に相続財産管理人が選任されるか
- 相続財産管理人とは
- 相続財産管理人が選任されるケース
相続財産管理人とはどのような人なのでしょうか。
相続人が不在になったときに相続財産を管理して精算して最終的には国庫に帰属させるための手続きをする人で、裁判所で選任されます。
相続財産管理人とはどのような人で、どのような場合に選任されるのでしょうか。
相続財産管理人とは
相続財産管理人とは、相続人がいない場合に、利害関係人からの請求によって、家庭裁判所で選任され、相続財産を管理して最終的には国庫に帰属させる役割を担っている人です。 相続人がいない場合、相続財産は国庫に帰属することになっています(民法959条)。 その過程で、本当に相続人がいないのか捜索をしたり、被相続人に対する債権者に弁済をしたりする必要があります。 相続財産管理人は、このような手続きをふむために、家庭裁判所から選任されます。相続放棄によって相続人が不在となった場合にも相続財産管理人は選任される
相続人が不在というと、例えば子どもがいないまま亡くなり、両親・祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹など法律の規定に従って相続人となる人が元から一人もいない場合が典型的な例です。 しかし、相続人がいる場合でも、相続放棄をすると最初からその人は相続人ではなかったとみなされます(民法939条)。 その結果、相続人が不存在となることがあります。 なお、子どもが全員相続放棄した場合に、両親・祖父母などの直系尊属が相続人になり、これらの人がすでにいない・相続放棄したような場合には兄弟姉妹が相続人となります。 兄弟姉妹がいない・兄弟姉妹も全員相続放棄をした場合には相続人が不存在ということになります。相続放棄をしたのに遺産を保有している人の義務
- 相続放棄をしたにもかかわらず遺産を保有している人に課される義務
- 相続放棄をしたにもかかわらず相続させられるケースがある
では、私のように相続放棄をしたけども、遺産が手元にあるような場合にはどうしなければならないのでしょうか。
相続人や相続財産管理人が管理できるようになるまで保管する義務があります。処分をするようなことがあると相続をするとみなされることになって借金を相続することになるので注意が必要です。
相続放棄をしたにもかかわらず遺産を保有している場合にはどのような法律関係になるのでしょうか。
相続放棄をした人が遺産を保有しているケース
まず相続放棄をした人が遺産を保有しているというケースはどのようなものでしょうか。 典型的なのが、被相続人と同居しているようなケースで、ある賃貸物件に被相続人と一緒に相続人が暮らしているような場合に、相続人の遺産が自宅の中にまだあったり、車をそのまま預かっているような場合がこれに該当します。 後述するように相続放棄をした場合に遺産を保有していると判断できるケースでは、相続人・相続財産管理人に引き渡すまで管理する義務があります。 判断に迷う場合には弁護士に相談するようにしましょう。相続放棄をした人が遺産を保有している場合の義務
相続放棄をした人が遺産を保有している場合には、相続人がいる場合にはその相続人に、相続人が不在の場合には相続財産管理人が選任されて管理ができるようになるまで、管理をする義務があります(民法940条)。この管理義務は「自己の財産におけるのと同一の注意」で管理する義務があるとされています。 そのため、取引当事者が負う「善管注意義務」よりも低い程度でいいです。 自宅においておけるものであれば置いて保管をしてもいいですし、保管していると価値が下がるような場合には早期に売却して、その金銭を保管しておくことも検討することになります。 保管に費用がかかるような場合にも売却することを検討することになります。
義務に違反した場合には単純承認となることも
このような義務があるにも関わらず、例えば売却してお金に換えてしまうと、単純承認をしたものと取り扱われることがあるので注意しましょう。 民法921条3号は、相続放棄をした場合でも費消をしたような場合には単純承認をしたものとみなすとしています。 つまり、自分の手元にあるものをお金に変えてしまって使うようなことがあると、単純承認したものとみなされます。
単純承認したものとみなされると、せっかく相続放棄をした場合でも相続を承認したものとしてとりあつかわれます。 「みなす」ことになっている結果、たとえ単純承認をするつもりがなかったことを証明しても、単純承認をしたものと取り扱うことになります。 つまり借金なども相続することになります。 せっかくした相続放棄の効力が否定されないよう、保有している財産の処分に困ったときは弁護士に相談をすべきでしょう。
まとめ
このページでは、相続放棄をした人が遺産を保有している場合に、相続人や相続財産管理人に遺産を引き渡す義務があることについてお伝えしました。 管理ができる人が管理をすることができるようになるまでは保管しておく義務があるのですが、ケースによっては保管が難しい・費用がかかるということもあります。 管理しきれないような場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。
- 亡くなった親に借金があるかもしれない
- 親と疎遠のため、財産を相続する気がない
- 相続税が払えないため家などの不動産を相続したくない
- 自営業を引き継ぎたいが借金がある
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