子どものいない夫婦間で相続をする際に兄弟姉妹と共同相続人になって争い・トラブルになる場合と対策
ざっくりポイント
  • 兄弟姉妹が相続人になるような場合
  • 子どものいない夫婦の一方と兄弟姉妹が共同相続して争いになる場合
  • 兄弟姉妹が相続人になる場合の対策
目次

【Cross Talk】子どものいない夫婦は何か相続で注意をすることはありますか?

私は終活をしていて相続について調べています。私には妻がいますが子どもがおらず、両親は既に他界しています。兄弟姉妹が多くて4人いるのですが、事情があって疎遠です。相続での希望は、自分が亡くなった後に妻が不自由な思いをしないように、と思っています。何か注意しておくことはありますか?

そのまま何らかの対策もしないで、万が一ということがあった場合には、奥様と兄弟姉妹が共同相続をすることになります。兄弟姉妹が相続で強硬な主張をするようなことになると、ひどい場合ですと例えば、奥様が自宅を失うというような事態も発生します。きちんとした対策をしておくべきです。

聞いておいてよかったです。詳しく教えてください。

最悪の事態では自宅を失うような場合も?子どもがおらず兄弟姉妹が相続人になる場合に注意すること。

子どものいない夫婦の一方が亡くなった場合、その一方は配偶者として常に相続人になります。亡くなった方に兄弟姉妹がいた場合、たとえ疎遠であったり、交流がなかったりするような状態でも、法律上は相続人になります。


兄弟姉妹は、第一順位の子ども、第二順位の親と比べると、相続人やその家族との関係が希薄であることが多く、相続において被相続人の妻に遠慮をしないで強硬な主張をするような場合があります。その結果、例えば、配偶者が家を失うようなことにもなりかねない場合があります。

ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、夫婦の一方に全ての財産を相続させる旨の遺言書を作成しておくことが一番の対策となります。

配偶者がいても親や子どもがいない場合には兄弟姉妹も法定相続人になる

知っておきたい相続問題のポイント
  • 兄弟姉妹も法定相続人になることがある
  • 兄弟姉妹は子ども・親などがいない場合に法定相続人になる

兄弟姉妹はどのようなときに相続人になるのでしょうか。

兄弟姉妹が相続人になるのは、子ども(代襲相続人も含む)および親などの直系尊属がいない場合です。

兄弟姉妹が相続人になるような場合

まず、兄弟姉妹が相続人になるのがどのような場合かを確認しましょう。 誰が相続人となるかについては、相続に関する規定をしている民法によって決められます。

配偶者がいる場合には、配偶者は常に相続人となります。 あとは、被相続人の親族として誰がいるのかによって、第1順位・第2順位・第3順位というものがあります。

まず、子どもがいるときには、第1順位の相続として、子どもが相続人となります。 配偶者がいる場合には配偶者と共に相続人になります。 次に、子どもがいない(代襲相続をする方もいない)場合には、第2順位の相続として親・祖父母などの直系尊属が相続人になります。

さらに、親・祖父母もいない場合には第3順位の相続として、兄弟姉妹が相続人になります。

先順位の相続人が相続放棄をすることで兄弟姉妹が相続人になる場合も

子どもがいて第1順位の相続となる場合や、親がいて第2順位の相続となる場合でも、これらの法定相続人が相続放棄をすることで兄弟姉妹が相続人となることがあります。 相続放棄をすると、相続開始の時から相続人ではなかったことになるので、子どもが全員相続放棄をすれば、その全員が最初から相続人ではなかったことになります。 そのため、親が生存していれば親が第2順位の相続人として相続することになり、親が生存していない、または親も相続放棄をした場合には、兄弟姉妹が第3順位の相続人として相続することになります。

兄弟姉妹が相続人になる場合の法定相続分

兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分は次の通りです。

相続人が兄弟姉妹のみ

相続人が兄弟姉妹のみである場合には、兄弟姉妹の頭数に応じて相続します。 兄弟姉妹が3人いる場合には、相続分は1/3ずつです。

配偶者がいる

被相続人に配偶者がいる場合、法定相続分は配偶者が3/4・兄弟姉妹が1/4を頭数で割った数となります。 兄弟姉妹が3人いる場合には、配偶者が3/4・兄弟姉妹が1/12ずつが法定相続分となります。

兄弟姉妹が相続人になった際の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 兄弟姉妹が相続人になった場合、相続税は2割加算される
  • 兄弟姉妹の再代襲相続はない

兄弟姉妹が相続人になった場合、注意すべきことはありますか?

相続税の2割加算と兄弟姉妹の再代襲相続はないことを知っておきましょう。

兄弟姉妹が相続人になった場合の注意点には次のようなものがあります。

相続税の2割加算

被相続人の一親等の血族および配偶者以外の相続人については、納める相続税についてその2割に相当する金額が加算される仕組みがあります。そして、兄弟姉妹は、被相続人から見て、2親等の血族であるため、2割加算の対象になります。

兄弟姉妹の代襲相続は1代のみ

相続人が既に亡くなっているような場合には、その子どもに相続分が引き継がれる代襲相続という仕組みがあります。 そして、代襲相続で相続をするはずだった方も亡くなっているような場合にはその孫が再代襲相続という形で相続人になります。 この代襲相続について、兄弟姉妹の子どもである甥・姪は代襲相続が可能ですが、その子どもへの再代襲相続はできないとされています(民法889条2項、887条2項)。

戸籍の収集が大変なことがある

兄弟姉妹が相続人となる場合の注意点として、戸籍収集が大変であることを知っておきましょう。 相続手続きにあたって、相続人の地位を確認するために、血縁関係を公的に証明する戸籍謄本の収集を行います。 子どもが相続人である場合には、被相続人の戸籍の中に入っていることもあれば、結婚して戸籍が独立していることもありますが、いずれの場合でも、その子どもの現在の戸籍を取得すれば事足ります。 これが兄弟姉妹であることを確認する場合には、被相続人の親の戸籍まで辿って、兄弟姉妹の現在の戸籍まで収集する必要があり、戸籍の収集が大変であることがあります。

子どものいない夫婦に起きた悲劇!兄弟姉妹が相続人になって自宅を売却するような場合も?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 子どものいない夫婦の一方と兄弟姉妹が相続人になる場合
  • どうして配偶者が家を失うようなことに?

子どものいない夫婦の一方が兄弟姉妹と共同相続をしたら、家を失う場合があるというのは本当ですか?

遺産の大部分が不動産で、兄弟姉妹が強硬に自分の相続分を主張するような場合で発生します。実例を見てみましょう。

子どものいない夫婦の一方が他方を相続した際に、兄弟姉妹と争って家を失う、という場合は適切な対策をしないと起きうる話です。 どうしてそのようなことが起きるのか事例をもとに見てみましょう。

配偶者と兄弟姉妹は争いになりやすい

配偶者と兄弟姉妹との相続のケースでは比較的争いが起きやすいといえます。

配偶者と子どもが相続する場合には、親と子どもという関係で、相続後も力を合わせて生活をしていく関係にあります。 配偶者と親が相続する場合にも、従前の生活から関係性があるケースが多く、争いが起きずに相続の処理ができることも多いといえます。

しかし、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続する場合にはその兄弟姉妹が被相続人や配偶者と疎遠になっているような場合も少なくありません。 そうなると「もらえるものはもらっておこう」という話になりやすく、最終的には訴訟などの争いになりかねないのです。もちろん、兄弟姉妹が「もともと疎遠だったから何もいらない」と考え、争いにならないケースもあります。

最悪の場合では自宅を失うことも

例えば、被相続人の自宅が3,500万円、預貯金が500万円という相続財産で、妻・兄弟姉妹4人で相続をするとします。 この場合妻は3,000万円で兄弟姉妹はそれぞれ250万円を相続することになります。 兄弟姉妹が夫婦の持っていた不動産を欲しがるということは現実に起こる可能性は低いので、兄弟姉妹としては現金の取得を希望するのが一般的です。
しかし、現金は500万円しかないので、相続人である4人の兄弟姉妹全員が満額250万円を希望してくると、その合計は1000万円となり、遺産の500万円では足りないということになりかねません。この場合、最終的に配偶者において合計1000万円を準備できなければ、最悪の場合、自宅を売却せざるを得なくなることも考えられます。このように、遺産の大部分が不動産であり、兄弟姉妹が現金を渡すように強硬な主張をするような可能性がある場合には、何らかの対策を検討しておくべきということになります。

他にもこんな場合で争いになることが

兄弟姉妹が相続人となることで他にも次のような争いが発生することがあります。

不動産以外の遺産が少なく分けづらい

不動産以外の遺産が少なく分けづらいときに、どのように分割するかで争いとなることがあります。 例えば遺産が5、000万円分あるとして、そのうち不動産の価値が4、000万円である場合に、兄弟姉妹3人で分けようと思っても、不動産を相続する人が遺産の割合で4/5を占めることになり、不公平となってしまいます。 そして、不動産を共有とすると将来のトラブルにつながることも多く、不動産を取得する人が代償金の支払いを行うことができない場合には代償分割もできないことから、このような場合ではお金に換えてそのお金を分割する換価分割という方法をとることもあります。そうすると、不動産を売らざるを得ず、不動産の維持ができなくなってしまうような場合もありあます。

寄与分の主張をする場合

相続人のうち、被相続人の事業を手伝っていたような場合や、被相続人の介護をしていたような場合に問題となるのが寄与分です。 被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人がいる場合、寄与した分は遺産から控除されて寄与をした相続人に対して与えられることになっています(民法904条の2)。 被相続人の事業を手伝っていた分をいくらと評価するか、被相続人の介護をしていた分をいくらと評価するか、その額を巡って争いになることがよくあります。

特別受益の主張をする場合

相続人のうち、生前贈与や遺贈を受けていたような場合に問題となるのが特別受益です。 遺贈や生前贈与を受けていた場合、その分については相続財産に加算し、受遺者・受贈者の相続分から差し引くことになっています(民法903条)。 この場合、遺贈や生前贈与とは別に相続もできると期待していた相続人が、このような処理をすることを不満に思い、争いとなる場合があります。

兄弟姉妹が相続人になりそうな場合の相続対策

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書を作成しておくことが有効である
  • 兄弟姉妹には遺留分がないので遺言書で配偶者に全て相続させれば兄弟姉妹は何も主張できない

妻が自宅を失う可能性があることがわかって相談しておいてよかったと思います。私ができる対策はあるのでしょうか。

兄弟姉妹は遺留分がないので、遺言書で奥様に全部相続させるようにしておけば、兄弟姉妹は何も奥様に請求できなくなります。

兄弟姉妹から相続分を請求されることへの対策について検討しておきましょう。

遺言書を残しておく

相続に関する民法の規定があっても、遺言書で相続分の指定をしたときには、相続の規定に優先して遺言書の内容が実現されます。 遺言書の内容として、妻が全部相続をする旨や、妻が困らないような遺産分割方法を記載しておけば、上記のような相続争いを防ぐことができます。

兄弟姉妹には遺留分はない

「相続分を奪うような遺言書を作成すると遺留分を侵害するのでは?」と考える方もいるのではないでしょうか。妻に全く相続をさせずに愛人に遺贈をする遺言書を作成した場合には、妻の遺留分を侵害するため、妻は愛人に遺留分侵害額請求権を主張することができます。 しかし、兄弟姉妹については民法で遺留分はないと規定されていますので、相続分を0としても、妻に対して何かを請求できる権利がないのです。遺言書を作成しておけば、相続争いは起こりにくくなるのです。

まとめ

このページでは、兄弟姉妹が相続人である場合に発生しうる争いについて確認したうえでその対処法についてお伝えしてきました。 相続人相互の関係が薄くなりやすい配偶者と兄弟姉妹との相続の場面では、例えば不動産が遺産のほとんどを占めており、万が一争ってしまうようなことがあれば、最悪の場合、配偶者は家を売却せざるを得ないような事態に陥る可能性があります。 遺言書で兄弟の相続分を0にしておけば、兄弟姉妹から配偶者に対しては遺留分の請求はできないことを知っておきましょう。 そして、そのような遺言書の作成をご希望の場合には、一度弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

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