- 親が認知症になったときに発生する財産管理上のリスク
- 財産管理をするための成年後見制度
- 成年後見制度を利用するための手続き
【Cross Talk 】親が認知症になってしまい財産管理はどうすればいいでしょうか。
親が認知症になってしまいました。親は一人暮らしをしているのですが認知症になった以上、財産管理はどうするかなどを考えないといけません。きちんとしておかないとやはりトラブルになりますよね?
はい。認知症になったときに財産管理においてどんなリスクが発生するかを知っておいて、成年後見を利用しましょう。
ぜひ教えてください。
親が認知症になった場合、介護などをどうするかという問題とともに、財産管理をどうするかという問題が発生します。認知症になったときには財産管理上どのようなリスクが発生するかを確認して、財産管理を適切に行うための制度である成年後見制度について確認しましょう。
親が認知症になったときの財産管理上のリスク
- 親が認知症になったときの財産管理上のリスクの種類
- 親族が費用を立て替えることになる場合もある
親が認知症になったときの財産管理上のリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。
契約内容がよくわからずに申し込んだり、情緒をコントロールできずに不要なものを申し込んだりしてしまうことでしょうか。親族が費用を立て替えることがある場合も知っておきましょう。
親が認知症になった場合に、財産管理上どのようなリスクが発生するか確認しましょう。
欲求がコントロールできなくなり金銭管理ができなくなる
認知症になると欲求をうまくコントロールできなくなります。 例えば、お腹がすいたときには自分が食べられるだけの量を買い物すれば良いのですが、一人では食べきれないレベルの量の食料を買い込む、ということが発生します。 年金や預貯金をみるみる使い果たしてしまい、必要なお金の捻出ができなくなってしまうようなことがあります。悪徳業者や特殊詐欺の被害に遭う
悪徳業者や特殊詐欺の被害に遭いやすいです。 例えば自宅に一人でいるときに、自宅に上がりこんできた業者に、無理やり契約をさせられるものです。 着物や美術品・健康用品などが多いのですが、中には保険商品やリフォームのような高額な契約をさせるケースもあります。 また、いわゆるオレオレ詐欺のようなものに簡単に引っかかってしまうこともあります。盗んでいないにも関わらず盗んだと騒ぐことになる
認知症の症状として、被害妄想が挙げられます。 自分が置き忘れてどこにやったかわからなくなったときに、同居の親族やヘルパーなどが盗んだに違いないと騒いでトラブルになることがあります。家族の一人が勝手に管理をするとトラブルになる
認知症の症状があるから…と家族の一人が同居をして、キャッシュカードを預かったりして事実上管理をはじめることがあります。 しかし、後述する成年後見の手続きを経ずに、親族の一人が財産管理をすることができる法律上の制度はありません。 そのため、親族の一人が管理をしはじめると、これに同意をしていない他の親族が、勝手に管理をしていることに異議を唱えるなどして、トラブルになることがあります。家族が費用を立て替える必要がある
認知症がかなり進行すると、契約などの法律行為がどのような結果を生じるかきちんとした判断ができなくなることがあります。 法律行為がどのような結果を生じるかを判断することができる能力のことを意思能力といいますが、意思能力を欠いた契約は無効となるとされています(民法3条の2)。 そうなると、本人のために必要な契約などをするために、本人のお金を利用することができなくなるようなことがあり、家族が費用を立て替えなければならないようなことがあります。親が認知症になった場合には成年後見を利用する
- 親が認知症になった場合には成年後見制度を利用して契約などを行う
- 成年後見制度の手続きの流れ
なるほど……では親が認知症になったような場合に財産管理をするためにはどんな制度を利用することができるのでしょうか。
成年後見制度があります。
親が認知症になった場合に、財産管理をするためには成年後見を利用します。
成年後見とは
成年後見とは、認知症などが原因で判断能力が低下して「事理を弁識する能力を欠く常況にある」状態になった場合に、裁判所に申立てをして、本人の保護者として成年後見人を選任してもらい、療養看護・財産管理をしてもらう制度のことをいいます(民法7条以下) 裁判所で本人の保護のためにもっとも適切な人が成年後見人として選ばれ、財産管理のために代理権が与えられます。
また本人の行為は日常生活の必要な行為のみに限定し、それ以外の契約などを結んだ場合には取消ができることになっています。 「事理を弁識する能力を欠く常況にある」ほどではない場合には、保佐・補助という制度を利用することもあります。 なお成年後見には他にも、事前に後見人となる方を定めておいて、判断能力が低下したときにその方に後見人になってもらう任意後見制度というものがあります。 しかし、これは認知症になって判断能力を失う前に利用する必要がありますので、このページでは割愛します。
成年後見の手続き
成年後見を利用するためには、家庭裁判所に申立てをして行います。 申立ては「本人、配偶者、四親等内の親族」などとされていますが、申立てには申立書を作成して添付書類を集めて提出する必要があり、判断能力が衰えた本人がこれをすることは現実的には考えられないので、配偶者・四親等内の親族から行なわれます。
申立てには申立書を作成して添付書類を添付して行います。 申立書は家庭裁判所で手に入れることができるほか、裁判所のホームページでもダウンロードをすることが可能です。
書式ダウンロード(裁判所ホームページ)申立てをすると家庭裁判所が内容を確認し、必要に応じて親族などに書面などで確認を行います。 本人・申立人・後見人就任予定者が、家庭裁判所に呼ばれて事情を聞かれます。 本人の状態について確認が必要であると判断された場合には、医師による鑑定という手続きがとられます。 成年後見開始の要件がそろっていると判断されると、成年後見の審判が下され、成年後見制度が開始します。
まとめ
このページでは、認知症になったときの財産管理上のリスクにはどのようなものがあるかと、成年後見制度の概要についてお伝えしました。 認知症になるとその方に自分の財産を管理してもらうことが困難になります。 成年後見制度を利用して、しっかりとした財産管理をする必要があります。 成年後見制度を利用できるか、手続きを依頼したい場合には一度弁護士に相談することをおすすめします。
- 身近に頼れる人や家族がいないため、不安がある
- 家族や親族に負担をかけたくない
- 死後の手続きや葬儀などに具体的な要望がある
- 遺品整理の際に、身近な人には見られたくないものがある
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