- 行方不明というだけでは遺産分割協議から除くことはできない
- 行方不明のパターンと対処法を知る
- 相続人の中に行方不明者がいるような場合には遺言を残しておく
【Cross Talk】行方不明者がいる場合の遺産分割協議は?
先日父が亡くなり、母と子2人で相続をします。相続といっても私の弟は父と喧嘩をして出て行ったきりで、現在家族の誰とも連絡がとれなくなっています。 母も現在施設で暮らしており空き家になるので売却をしてしまおうと思うのですが、弟抜きで遺産分割協議してしまっていいですよね?
弟さんも相続人なので、売却の前提である相続登記をするのに、遺産分割協議書に弟さんの名前がなければ登記ができないです。対処方法をお伝えします。
相続が発生したときに遺産分割協議が必要ですが、相続人の中に行方不明者がいる場合もあります。
このような場合でも、行方不明というだけで遺産分割協議から除くことはできません。とはいえ、どこに居るのかわからないような場合に連絡がつくまで遺産分割協議ができないと、被相続人の口座を解約できない・不動産の売却ができない、といった事態になります。そのため民法において行方不明者がいる場合の手続が定められています。その手続について知っておきましょう。
行方不明者を抜きに遺産分割協議を行うことはできない
- 遺産分割協議をするためには相続人全員が参加しなければならない
- 行方不明者を抜きに遺産分割協議を行うことはできない
行方不明者がいるような場合にでも遺産分割協議は全員でしなければならないのですか?
相続人である以上は全員でしなければなりません。
まず、そもそも遺産分割協議は全員でしなければならないのでしょうか。 例えば、被相続人が死亡した場合、被相続人の銀行口座が凍結されます。 口座の中に入っているお金を引き出すにあたっては、遺産分割協議書・相続人に関する戸籍謄本・相続人全員の印鑑証明書が必要になります。 もし相続人の一部だけで協議をしてこのような書類を作成しても、相続人全員の印鑑証明書を取得することはできないので、凍結されている銀行口座を解約することはできないことになります。
ただし、現在では民法改正により、預金の仮払い制度ができたため、各法定相続人は、金融機関より自身の法定相続分の3分の1 又は150万円のいずれか低い方の金額を上限として引き出すことができます。 相続登記をする場合でも、同じように遺産分割協議書と相続人全員の戸籍と印鑑証明が必要とされています。 このページの相談者様のように、相続人の一部に行方不明者がいるとしても、それだけで手続から省いてよいという法律はなく、後述する手続が必要になります。
行方知れずといってもいくつかのパターンがある
- 行方不明のパターンとその対応策を知る
それでは行方不明者が居る場合の対処なのですが、どのようにすればよいのでしょうか。
「行方不明」といってもどの相続人の側でどの程度探したのか、行方不明者が実際どのような状態になっているのか、によって対応方法が違います。
行方不明者が居る場合にはどのような対処が必要なのでしょうか。 「行方不明」のケースをいくつかにわけて、その対応策を見てみましょう。
生きているのはわかっているがまだ所在不明者の現在の住所を探していない場合
まず、電話・メール・SNSを利用して連絡を取っており、生きているのはわかっていても、どこに住んでいるのかが分からないというような場合を考えてみましょう。 日本においてはマイナンバーの発行を受けられないと、仕事をするのも困難であり、現在では住民票を移さずに居住をするのは困難であるといえます。当事者たちの間で行方不明とはなっていても、たまに父母の状態や冠婚葬祭の連絡はしているなど生きていることがわかっている場合には、住所登録がどこにあるかを確認します。 住所登録の確認のためには戸籍の附票を取得することで、現在の住所登録がどこにあるかを確認することができます。 戸籍の附票の取り扱いは、戸籍が存在する市区町村役場の市民課において取得することができます。
手数料については市区町村によって異なりますので、ホームページ等で確認します。 当然ですが親族とはいえ個人情報になりますので、取得にあたっては合理的な必要性が認められる場合でなければなりません。 相続手続に必要であることは合理的に理由になるのですが、そのためには被相続人の死亡などを示す書類(住民票・戸籍)などが必要になりますので、窓口に必要な書類を問い合わせて取得をし、行方不明者の住所を探しましょう。
生きているのはわかっているが探しても見つからない場合
たまに連絡があって生きているのはわかっていて、それでも戸籍の附票を確認して最後の住所地に問い合わせをしても見つからないような場合もあります。 いわゆる水商売で働くような場合や、マイナンバーが無くても働けるような場所であれば、住民票を移動しないでも生きていくことは可能です。このような場合に連絡をとっても遺産分割協議ができないような場合には、不在者の財産管理人を選任してもらい、その人と遺産分割協議を行います。 民法第25条は、従来の住所又は居所を去った者を「不在者」と定義して、不在者がいる場合に必要に応じて家庭裁判所に請求をして財産管理人を設置することを定めています。
財産管理人が本人に代わって協議に参加することで行うことで、遺産分割協議ができることになっており、これによって手続を進めることが可能になります。
生きているかどうかもわからない場合
最後に、連絡もきちんと取れなくて生きているかどうかもわからない場合があります。 この場合にも上記の不在者として取り扱うことも可能ですが、そもそも不在者である場合には相続人として取り扱わなければなりません。もし亡くなっているような場合には相続人や相続分が変わってくることも考えられます。 このような場合には「失踪宣告」「認定死亡」という制度によって死亡したものとみなすことができる制度を知っておきましょう。 まず、失踪宣告とは次のような制度です。
雇民法30条・31条は
- 不在者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)
- 戦地に臨んだ・沈没した船舶に居たなどの危難に遭遇した場合には危難に遭遇した後1年間生死が不明である場合(特別失踪)
以上のような場合に、利害関係人からの請求によって家庭裁判所が失踪宣告をすると、その人を死亡したものとして扱うと規定しています。
本件の相談者様のように特別な事情が無い場合は前者によって取り扱いますが、たとえば航空機事故があったような場合に乗客名簿に氏名があっても死亡を確認できなかったような場合には後者による失踪宣告を利用することが可能です。 死亡したものと扱うだけであって、本人が別の場所で生きていれば、その人の権利などの制限をするものではなく、後に生きていることが判明すれば失踪宣告の取消をすることも可能です。
次に、「認定死亡」の制度を知っておきましょう。 戸籍法89条に規定されている制度で、事故や災害によって死亡した可能性が高いが遺体を見つけられないなどで死亡を確認できない場合に取調を行った警察・消防などによって死亡の報告がされた場合に戸籍上で死亡と取り扱うものです。 死亡を認定するのは警察・消防などの判断によって行われます。
まとめ
このページでは相続人が行方不明の場合の手続についてお伝えしました。 相続人が行方不明の場合でも遺産分割協議は全員でやらなければならず、行方不明者を除外して行っても銀行口座の凍結解除や、相続登記をすることができません。 行方不明者がいる場合には戸籍の附票を取得して探す、不在者の財産管理人を選任する、失踪宣告を行うなどの手続が必要になります。 もし相続人に行方不明者がいる場合には、遺言をつくっておくと、こういった手続を踏まずにすみますので、弁護士に相談するなどして事前に対策を練っておくことも考えておきましょう。
- 遺産相続でトラブルを起こしたくない
- 誰が、どの財産を、どれくらい相続するかわかっていない
- 遺産分割で損をしないように話し合いを進めたい
- 他の相続人と仲が悪いため話し合いをしたくない(できない)
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