住所・連絡先がわからない相続人が居る場合にどうやって探すのか?
ざっくりポイント
  • 相続人全員が揃わないと遺産分割ができない
  • 相続人の住所・連絡先がわからなくても見つける方法は、戸籍謄本を使うこと
  • 戸籍と一般的に呼ばれるものの種類
目次

【Cross Talk】相続人がいるかもしれないけど連絡先がわからない?分かる人だけで相続手続きを行ってよい?

父が亡くなり相続の手続きをしているのですが、母とは再婚であり、前妻との間の子どもへの相続人になると思います。 ところが、母も私も接点がなく、住所・連絡先はもちろん、存命しているかどうかもわかりません。この場合、私たちだけで相続手続きを行ってもよいのでしょうか。

相続人全員で遺産分割手続きを行わないと、遺産分割協議書をつくっても銀行預金の解約や登記名義の変更を行うことができません。 住所・連絡先がわからない相続人がいる場合は、その相続人の住所を照査する必要があります。

そうなのですね!具体的な方法を教えてください。

相続人が不明な場合には調査が必要。戸籍謄本・戸籍の附票を利用して調査をする。

相続において、被相続人が再婚をしているような場合や、過去の相続をさかのぼる必要がある際に、住所・連絡先を知らない共同相続人が居るような場合があります。 被相続人を看取っていないから、相続から外してよいというわけではなく、相続人である以上相続手続きに参加してもらわなければなりません。 相続人が存命かどうか、存命の場合には今どこに住んでいるのかなどの調査は、戸籍を収集して行います。

相続人調査とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続手続きを開始する際の相続人調査とはどのようなものか
  • 相続人調査は戸籍謄本等を取得して行う

そもそも、相続人調査ってどのように行うのですか。

被相続人の戸籍を基に調査を行います。

まず、相続人調査とはどのようなものか、なぜ必要なのか、その方法について確認しましょう。

相続人調査とは?

相続人調査とは、相続を進める際に誰が相続人なのかを確定するために行う調査です。 被相続人が亡くなった際、法律上相続人となる人は全員相続手続きの対象者となります。そのため相続人調査を行い、誰が相続人となるのかを確定させなければなりません。

相続人調査がなぜ必要なのか?

相続手続きにおいては、遺産分割協議書がなければ手続きが進まないものがたくさんあります。例えば、銀行預金を全額引き出す場合や不動産名義の相続登記を行う場合は、遺産分割協議書が必須です。 この遺産分割協議書には、相続人全員の署名・捺印が必要となります。全員の署名・捺印が揃っていない場合、銀行・法務局は受け付けてくれません。 全員の署名・捺印が揃っているかどうかを確認するために相続人調査が必要であり、添付書類として戸籍謄本を用意することで各相続人の存在を確認することができます。

相続人調査の期限

相続の手続きには期限が定められているものもありますが、相続人調査には法律上いつまでに行わなければならないという決まりはありません。 しかし、相続登記をしたうえで売却・賃貸をする、被相続人の銀行口座に入っていたお金を引き出すという作業には遺産分割協議書が必須です。 遺産分割をするには相続人調査をして相続人を確定しなければなりません。 そのため、相続が発生した場合、掃除九人調査は、なるべく早く行うべき手続きということになります。

住所地に相手が居住していない場合

戸籍の附票を取得するなどして、相手の住所地が判明したとしても、相手がその場所に実際に居住していない場合があります。 考えられる原因としては次のような場合です。
  • 住所はそのままにして施設に入所している
  • 病院に長期で入院をしている
  • 単身赴任をしている
  • 住民票の移転をせずに別の場所で暮らしている
この場合、次のような対応が考えられます。

住民票上の住所に家族が住んでいて本人と連絡が取れる

施設に入所している場合や長期で入院をしている場合、単身赴任をしているような場合には、住民票上の住所に場家族などが居住していることが考えられます。 この場合には家族に連絡を取り、被相続人が亡くなり、遺産分割が必要である旨を伝えて、家族に協力をお願するとよいでしょう。 施設に入っている場合や入院をしている場合で、本人の対応が難しいような場合には代理人を立ててもらうようにお願いすることになるでしょう。 認知症などで本人が意思表示できなくなっている場合には、成年後見人を立てて、遺産分割に参加してもらうことになります。

本人も家族も居住しておらず連絡がつかない

住民票の移転をせずに別の場所で暮らしているような場合、住所である場所に通知を送っても届かず、本人に連絡をする術がありません。 このような場合には、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を求めます 裁判所が、不在者財産管理人を選ぶ過程で現在の居場所が判明すれば、その居場所に対して通知を行うことになるでしょう。 これでも居場所が判明しない場合には、不在者財産管理人が選任されるので、その人と遺産分割協議を行います。 この手続きには時間がかかる上に、数十万円~100万円程度の費用もかかることがあるので注意が必要です。

どれくらいの戸籍を取得する必要があるか

戸籍謄本の取得はどの程度必要なのでしょうか。 戸籍には家族・身分関係が記載されており、戸籍謄本の取得は被相続人と相続人が法定相続人となる関係にあることを証明するために取得します。 法定相続人であることを証明するには、以下の2点を証明する必要があります。
  • 法定相続人となる身分関係があること
  • ほかに相続人となる人がいないこと
例えば、第二順位の相続人である直系尊属が相続する場合には、親・祖父母であることを証明するとともに、第一順位の相続人である子ども(代襲相続をする孫なども含む)が居ないことを証明する必要があります。 そのため、被相続人に関しては、原則として出生から亡くなるまでの戸籍謄本を収集する必要があります。 取得すべき戸籍は次の通りです。
  • 親が筆頭者となっている戸籍
  • 結婚後の現在の戸籍
  • 戸籍法の改正(昭和23年・平成6年)前の改正原戸籍
少なくとも4~5通程度の戸籍謄本等が必要となります。 子どもが相続人である場合には、子ども全員が未婚であれば、その戸籍謄本に全員がおさめられているのですが、子どもが結婚して新しい戸籍を作っている場合には、子どもの現在の戸籍謄本が必要となります。 最も多くの戸籍が必要となる場合としては、第三順位の法定相続人である兄弟姉妹が亡くなっており代襲相続が発生している場合です。 この場合被相続人について4~5通程度、子どもが全員亡くなっている場合には子どもの人数分の戸籍謄本、親(年齢によっては祖父母)の戸籍謄本、兄弟姉妹の戸籍謄本を取得したうえで(人数分)、甥・姪の数だけ戸籍謄本も取得する必要があります。 そのため、20通を超えるような場合もあり、それだけで数ヶ月もかかることもあるので注意しましょう。

相続人が複雑な場合には相続関係図を作成することも検討

相続人が複雑である場合には、相続関係図の作成も検討しましょう。 相続関係図とは、相続関係を説明する図です。 相続人が複雑である場合、遺産分割の話し合いなどで混乱を生じるおそれがあります。 そのため、誰が相続人であるか相続関係が一目で分かるように、相続関係図を作成しておくと良いでしょう。 相続関係が一目で視覚的に理解できるとともに、所定の手続きを経て法務局で認証を受ける、法定相続情報一覧図を作成すれば、相続手続きに利用することも可能です。

戸籍には様々な種類がある

知っておきたい相続問題のポイント
  • 実務上「戸籍謄本」と言われる書類には様々な種類がある
  • 相続人調査のために必要なものは、戸籍全部事項証明書・改正原戸籍謄本・戸籍の附票を利用する

戸籍謄本について調べていたのですが、いろんな書類がありますね。

そうですね。馴染みがないとなかなかわかりづらいかもしれません。どのようなものがあり、相続人調査に必要な戸籍は何なのかお伝えします。

戸籍あるいは戸籍謄本と一言で言っても、戸籍に関する書類には様々なものがあります。 どのようなものがあるのかみてみましょう。

戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

戸籍謄本とは、戸籍に記載されている事項を全て載せた書類です。 コンピューター化された文書の場合には「戸籍全部事項証明書」と呼ばれています。この書類は相続人調査の際に必要となります。

戸籍抄本(戸籍一部事項証明書)

戸籍抄本とは、戸籍に記載されている一部の事項を載せた書類です。 コンピューター化されたものは「戸籍一部事項証明書」と呼ばれています。

改製原戸籍謄本

戸籍は戸籍法という法律に基づいて作られています。 戸籍法の省令が改正される際、新しく戸籍を作り直すことがあります。 この時、もともとあった戸籍が改製原戸籍謄本です。 一般的な相続で目にする改製原戸籍謄本は、昭和32年の法務省令改正によるものと、平成6年の法務省令改正によるものです。 例えば、昭和20年代生まれの方の相続を行う場合には、昭和32年・平成6年それぞれの改製原戸籍謄本が必要になります。

除籍謄本

除籍謄本とは、戸籍に在籍している人がいなくなった状態が記載された書類です。 基本的に戸籍には複数の人がいるのですが、その戸籍に在籍している人が全員いなくなってい場合も存在します。結婚、離婚、死亡、戸籍を別のところに移す転籍を行った場合などです。

このような場合には、除籍謄本が必要になります。 例えば、被相続人がかつて大阪に住んでおり、その後東京に移転し結婚して戸籍を移した場合、大阪での除籍謄本が必要になるといえます。

戸籍の附票

戸籍の附票とは、住民票の移動の履歴を見られる書類です。 戸籍を収集していくことで、相続人調査ができ、知らない相続人を発見することができます。 しかし、戸籍に記載されている住所と実際に居住している場所が同一であるとは限りません。 戸籍の附票を取得することで現在住民票がある場所を特定することができます。

相続人調査の依頼

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人調査は専門家に依頼したほうがスムーズ
  • 相続人調査のためには、戸籍全部事項証明書・改正原戸籍謄本・戸籍の附票を利用する

相続人調査を弁護士に依頼することはできますか?

できます。面識のない相続人がいるような場合には、当事者間で連絡を取り合うともめることもあるので、弁護士に依頼した方がよいこともあります。

相続人調査の依頼先

相続人調査は、専門家に依頼することができます。 相続に関する相談・依頼は、行政書士・司法書士でも受けることが可能ですが、権限が限られている場合もあるため、権限の制約がない弁護士へ相談するのがよいでしょう。 住所・連絡先を知らなかったり、しばらく疎遠になっていたりする相続人に突然連絡をすると、理由次第では紛争に発展することもあるため、弁護士に依頼し、仲介人になってもらうことが得策であると考えられます。

相続人調査を依頼する場合の相場

相続人調査を弁護士に依頼する場合、費用の相場は、5~10円程度です。 相続人調査に加えて、相続人との遺産分割協議も行ってもらう場合は、遺産分割協議に関する費用が別途かかることを理解しておきましょう。

まとめ

このページでは、相続人調査についてお伝えしてきました。 住所・連絡先がわからない相続人であっても、相続の手続きに加わってもらう必要があります。各相続人の所在を明らかにするために、調査の方法をおさらいしておきましょう。

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この記事の監修者

弁護士 今成 文紀東京弁護士会 / 一般社団法人日本マンション学会 会員
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